機織歌.1
しかし同時にラズはある違和感を感じていた。集まって来た男たちは一向に減る様子がないのである。
陽が登れば例の神殿跡地にまで村の男衆の案内で向かっているようだが、夕方には皆が無傷で帰って来ていた。
死人が出ないのはいいことだが、人喰いの化物なんてのが住み着いている場所に向かって、どうしてこうも無事でいられるのかラズは疑問で仕方がなかった。
けれどこの疑問は口にしてはならないものであることも何となく分かっていたから、彼女はいつものように朝焼けで目覚めて飯を炊き、そして普段より多めに機織を動かし続けた。考えてはいけないことが頭に浮かんできそうになったときは、幼い頃、母や祖母の機織を眺めていた時、無意識のうちにか彼女たちが鼻歌で口ずさんでいたメロディを真似してみた。
「ラズ、どこでそれを知ったんだい?」
ラズの鼻歌を聞きつけた祖母が、いつの間にか後ろに立っていて尋ねてきた。相変わらずこの人は存在感が薄い。本当に空気のような人だと思いながら
「私が小さい時にお母さんやお祖母ちゃんの機織を見てたでしょう?その時、2人とも歌ってたのよ。2人とも自分でも気付いてないんじゃないかってくらい自然にね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます