人喰いの噂.3
父の言いつけ通りに機織をいつもより多く動かして良かったのだと思う。人喰いの噂は、やはりあっという間に都へ登り、懸賞金までかかっているのだというビラが村にまで貼られるようになった。
もっともラズは字が読めないので、父から聞いた話なのだけど。広場の掲示板におどろおどろしい四つ脚の化物の絵が描かれた見慣れない紙が増えていたので、それがきっと父の言っていたものなのだとラズは思った。
その禍々しい噂と裏腹に、村はひたすらに賑わい、そして潤っていた。ラズの作った麻布でさえ、妹と祖母の手で麻袋に姿を変えると飛ぶように売れていった。
夕食の食卓を彩る食材の種類も増えた。
人の往来が激しくなったから、今まで別の場所と行き来していた隊商でさえ、都と村を繋ぎ、人と物と金を往復させていたから。
学のないラズでも、これだけ活気を見せる市場や広場、大急ぎで作られた布張りの宿泊棟。そして大勢の男たちの姿に、村が変わっていることは分かった。夜な夜な宴会を始める声は、村の中心部からやや離れた場所にあるラズの家までも夜通し聴こえてきた。
妹は最初、慣れなくて眠れない夜を過ごしていたようで、ラズが後ろから抱きしめるように頭を覆って耳を塞いでやらないと寝られなかったが、今では遠い喧騒を子守唄にすることができるくらいになった。それだけ賑やかさは村に馴染んでいたのである。
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