第67話 学校一の美少女との今後の方針

「まあ、田中が柊さんのことをどれだけ信頼しているかは分かった」


 一通り笑い終えると、まだ楽しそうに声を弾ませながらこっちを見てきた。笑い過ぎたせいか目尻には涙さえ少し残っていた。


「まあな」


「それで、これからはどうするんだい?斎藤さんとの関係をどう進めていくか、柊さんに相談して決めてるんだろ?」


「いいや?実はまだ決まってない」


 あれから何度かどうするか悩んだが、どうしてもいい方法が思い浮かばなかった。やはり初めての好きな人であるし、こういう男女の仲を深める方法は疎く、ピンと来るものが考えつかなかったのだ。


 結局、何も出来ず、ただ2人で過ごすこれまでと同じ日々が過ぎてしまった。今のままでいても多分仲良くはなれるだろうが、さらに何かきっかけが欲しいところだ。


 柊さんに相談してもいいのだが、最近は特に話を聞いてもらうことが多かったので少しだけ気が引ける。ふと、そこで目の前の一ノ瀬が目に止まった。


「……なあ、一ノ瀬ってモテるよな?」


「ん?まあ、人並み以上にはモテると思うよ」


「一ノ瀬はどうやって女の子と仲良くなってるんだ?」


 一ノ瀬がモテるのは有名だし、そこまでモテるなら何かしら良いアイディアがもらえるかもしれないと思ったのだ。一ノ瀬の助言が必ず俺と斎藤の関係にプラスに働くわけではないが、俺より女子と仲良くなる方法に詳しいのは確実なので、少なくとも参考にはなる。


「連絡先交換してメッセージとかでやり取りして、会って何度も話してって感じだけど……ああ、そういうこと」


 一ノ瀬は話しながら何か納得したように頷く。やはり一ノ瀬の推測能力は凄いらしい。にやりと笑って見事に俺の思惑を言い当ててきた。


「斎藤さんとどう関係を進めていくか悩んでいるんでしょ?だったら一ついい方法があるよ」


「お、おお。心当たりがあるのか。なんだ?」


「デートだよ。やっぱり仲良くなったら2人で出かけないと」


「デート……か。うん、いいな。それなら柊さんにもアドバイスもらえそうだし」


 確かに良い方法だ。これまでに出かけたのは初詣の時くらいだし、それ以外だと帰り道に寄り道した時だけだ。斎藤もあまり友人と出かけたことがないと言っていたので、楽しんでくれると思う。

 それに1日デートなら色々なことが出来るので仲良くなりやすいはず。一気に距離を詰めるチャンスだ。


 これまでなら斎藤とデートなんて少し気が引けていたが、ここまで仲良くなれれば断られることはない……はず。柊さんからのアドバイスも色々貰えそうだし、まさに望んでいたきっかけだ。


「柊さん?何かあるのかい?」


 俺の言葉に何か興味を惹かれたようで目を輝かせて尋ねてくる。


「ああ、次何か行動を起こす時は予め教えてほしいって言われたんだよ。もしかしたら斎藤を不快にさせることをしちゃうかもしれないからって。もしそうなりそうになっても、柊さんなら女の子だから斎藤の気持ちで判断して修正できるし、良い案だろ」


「あー、そういうことね」


 目を細めて楽しそうにクスッと笑う。


「ほんとにいい案だ。教えてくれてありがとな」


「いや、全然。力になれたなら良かったよ。絶対柊さんに相談するんだよ?」


 なぜか念を押してくる一ノ瀬を不思議に思いながらも頷く。


「? ああ。そりゃあ1番の相談相手だし、するよ」


「次は相談したときの柊さんの様子を教えてね」


「まあ、いいけど」


 どうしてそんなに柊さんの様子を気にするのかは分からないが、まあ別に隠すことでもないし気にしないでおこう。今後の方針も決まり、デートプランをどうするかじっくりと考えることにした。

 

 

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