第46話 学校一の美少女は完璧じゃない
ピンポーン。
元旦の初詣が終わった次の日、いつものように彼女の家を訪れた。昨日のことを思い出し、微妙に緊張しながら呼び鈴を鳴らす。
なんとなく落ち着かず、そわそわするので体を動かして待つが出てくれない。
いるはずなのだが応答してくれないことに首を傾げて、もう一度呼び鈴を押す。
ドタンッと大きな音が扉の奥から聞こえたと思えば、人の足音がしてスピーカーから声が聞こえてきた。
「は、はい」
「ええっと、田中だけど大丈夫か?」
「す、すみません。さ、3分くらい待ってもらっていいですか?」
焦っているようで声が上擦り、何回も噛んでいるのが伝わってくる。
どうやら部屋の中で何かが起きているらしい。
少し心配だが待つだけで問題ないなら別にそこまで気にする必要もないだろう。
「ああ、いいよ」
「すみません、なるべく早く済ませますので」
「あいよ」
そこまで言うとガチャッとスピーカーが切れて静かになる。
中では慌ただしく動いているような気配が伝わってくるが、本当に一体何をしているのだろうか。
部屋の中で何が起きているか少し気になりつつも暇だったのでスマホをいじる。
少し待てばガチャッと音がして扉が開いた。
「待たせてすみません!」
出てきたと思えばペコリと頭を下げてくる。
人を待たせてしまったことが申し訳ないらしく、眉をへにゃりと下げてしょんぼりとしている。
そんな表情を見せられるとなんだかこっちが悪い気がしてしまう。
誰しも何か不測の事態が起こることはあるのだし、別に気にしていないので、フォローしておいた。
「いいよ、別に……」
そこまで言って彼女の様子からなぜ遅れたのか理由を悟った。
「ああ、ずっと寝てたのか」
髪は縛ってあるが毛先がぴよんと跳ねているし、前髪もいつもよりほんの少しだけ乱れていた。
おそらく俺が呼び鈴を鳴らすまでぐっすり寝ていたのだろう。
彼女が寝坊なんて珍しいがそんな時もあるかもしれない。
なんとなく気づいたことをそのまま言うと、彼女は頬をぼわぁっと一気に薔薇色に染めて目をそっと俺から逸らす。
そのまま耳まで真っ赤にして目を伏せて固まってしまった。
「そ、そうですけど……?」
「ええっと……なんかすまん」
彼女からすると羞恥のツボだったらしい。ここまで恥ずかしそうにされると、なんと言ってフォローすればいいか分からずつい謝ってしまう。
「……もういいですから、早く入ってください」
ツンと冷たくそう言い放ってスタスタと中に入ってしまった。
最初は完璧なイメージがあったが、やはり彼女も人間で抜けているところもあるらしい。気付けばさっきまでの緊張はどこかへ行っていた。
寝癖をつけたままの彼女の背中に薄く苦笑を零して後に続いた。
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