第41話 学校一の美少女はアドバイスをする

「うっ、寒いな……」


 外に出ると部屋の暖かさは一気になくなり、ピリピリと肌に寒さが突き刺さる。あまりの寒暖差に思わす自分で自分を抱くようにして身震いする。


「そんな格好だからですよ。マフラーとかないのですか?」


 俺の様子をちらっと見ると、やや呆れたように息を吐いた。

 相変わらずツンとした冷めた声だ。初対面ならこれだけでも萎縮しそうだが、聞き慣れると心配してくれているのが分かる。


「残念ながら持ってない」


 元々彼女の家と自分の家を行き来するつもりしかなかったのだ。

 多少寒かったがそれほど時間はかからないし、わざわざマフラーをタンスから出すのが面倒だったので特に何も持ってきていなかった。


「仕方ないですね」


 俺の返事にそう言い残してまた家の中へと戻っていってしまった。

 一体どうしたんだ、と不思議に思いながら待っているとマフラーを持って出てきた。

 手に持つマフラーは黒を基調として赤のラインが入ったものだった。


「これ、使ってください」


「悪い、ありがとな」


 また、彼女の世話焼きが発動したらしく、ありがたく使わせてもらう。受け取り首に巻くと、少しだけ寒さが遠のいた。

 ふんわりとした柔らかい布の感触が心地いい。彼女の甘い匂いと同じ匂いがして少しだけ胸が暖かくなった。


「うん、似合ってます」


 俺のマフラーを巻いた格好を見ると、満足したように少しだけ表情を緩め頷いた。

 そこから少し言いにくそうに視線を逸らすと、声を上擦らせて尋ねてきた。


「そ、その……ちゃんとした格好はしないのですか?髪型ちゃんとセットしてコンタクトにしたら……少しはかっこよくなると思いますよ?」


 ほんのりと頰を色づかせて不思議そうに首を傾げて見つめてくる。

 彼女は俺がかっこよくなると信じて疑っていないらしい。

 確かに、多少なりとも今よりはまともな姿にはなるだろう。今の自分と同一人物と気付かれない程度には。


 だが、その場合バイト先のあの格好になってしまうので万が一がある。

 彼女と並ぶのでそれなりにきちんとした格好をしたかったが、そう考えると安易に頷くことはできなかった。


「いいんだよ、俺は。とっとと行こうぜ」


「……」


 上手い言い訳が思いつかず適当に誤魔化すと、少しだけ不満げに頰を膨らませ睨んでくる。

 そこまでして見てみたかったのか、と彼女の反応に肩を窄めてに薄く苦笑を零した。

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