第36話 学校一の美少女の仕返し
「あ、あの……」
「!?」
困ったような戸惑いと羞恥が混じったような少し上擦った声で声をかけられる。
その声に慌てて撫でていた手を離すと、彼女はゆっくり頭を起こした。
「お、起きていたのか!?」
動揺のあまりつい声が大きくなってしまう。
まさか起きているとは思っていなかった。向かい合って見た時は確かにぐっすり寝ているようだったし、安らかに寝息を立てていた。
恐らく撫でていた時間はほんの数秒程度だろうが、その間に起きたのだろうか?
「えっと……はい」
身体をこちらに向け、羞恥で頰を薔薇色に染めながら見つめてくる。
やはりとても恥ずかしいらしく、少しだけ俯き伏し目がちに見てくるので図らずも上目遣いとなり、それがまた可愛らしい。
あまりの可愛さに心臓がどきりと鳴る。
「一体いつから……」
「この膝掛けの毛布をかけてくれた時に目が覚めて、そ、その……撫でてもらったときには完全に起きてました」
まさか、最初から完全に目覚めていたとは。
それはつまり俺が変な声を漏らしながら撫でているところも全部知っていることになる。
身悶えするほどの羞恥心に頰が熱くなるのを感じるが、それよりも先に言わなければならないことがある。
「えっと……その……勝手に撫でてごめん」
「い、いえ……。撫でられたのは別に嫌ではなかったので……」
「は?」
まさかの返答に思わず変な声で聞き返してしまう。
勝手に撫でたことを責められることはあっても、まさか許されるとは思っていなかった。
前にも手に触れたが、やはり触れる程度のことは許してくれているらしい。
その事実にまたうるさく心臓が鳴る。
「だ、だから別に嫌ではなかったと言ったんです」
恥ずかしいことを言っている自覚はあるらしく、2度言わせられたことに頬をさらに朱に染める。
そのままこちらを見つめ続けることに耐えきれなかったらしく、視線を控えめに下げた。
「お、おう、そうか。でも勝手に撫でたことには変わりないしな……」
彼女が許してくれるならありがたいが、何もしないで許されるのは自分の罪悪感的に気になる。
ちらっと引っかかるものを感じてと言い淀むと、彼女は交換条件としてあることを要求してきた。
「じゃ、じゃあ、あなたの頭も撫でさせて下さい。それでちゃらにします」
「いいけど……そんなのでいいのか?」
「私が良いと言ったらいいんです」
「そうか」
頬を赤くしながらも、真剣そうに見つめてくるので承諾する。
男の頭を撫でる程度で許してくれるなら、それはそれで別に構わない。
むしろこんな美少女に撫でられるのはこっちのご褒美にしかなっていない気がするが、彼女がそれで良いと言うならこちらが気にする必要はないだろう。
「じゃあ、触りますね……」
「あ、ああ」
緊張して上擦った声とともに彼女の細く白い手がゆっくりと近づいてくる。
柔らかい指先が頭に触れたかと思えば、さわさわと優しく撫でられ始めた。
彼女の体温が触れている手のひらからほんのりと伝わってくる。
優しく大切なものを扱うように撫でられ、妙にくすぐったい。
さらには撫でるということは必然的に身体が近くなるので、そのせいで普段以上に匂う彼女の甘い香りに頰が熱くなる。
羞恥心に駆られ耐えきれず、つい急かすように尋ねてしまった。
「な、なあ、まだ撫でるのか?」
「も、もう少しだけ……」
「……はいよ」
ちらりと様子を伺うと、彼女はほんのりと口元を緩め柔らかい穏やかな表情を浮かべている。へにゃりと目を細め幸せそうに撫でているのを見ると、止める気は無くなってしまう。
結局、彼女が満足するまで大人しく撫でられ続けた。
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