4-11
樹から望美への、突撃告白大作戦。その仕掛け人であり真の
「えええっ⁉ どうして店長が」
何故、真幌が彼の恋の
「なんか全然、意味分らんし」
望美は猛烈に腹立たしい気持ちになった。
『冥土の土産にひとつだけ、あなたの望みを叶えます。その願いとして、自分は何を望むべきか。地元のお茶やお菓子でおもてなしを受けながら、俺は店長さんに色々と身の上話や相談に乗って貰っていました』
色々な意味で動揺する望美。食い入るように、手紙を見つめる。
「店長。また、あたしにだけ内緒で……しかも、恋の仕掛け人ってどういうことよ」
真幌に対して不信感と憤りを覚えながら、望美は読み進めた。
望美はもう生身なので以前のように生霊は見えない。だから生霊の樹が店に出入りしていたことには、全く気が付かなかったのだ。
一方の樹は、店での望美の存在には以前から気が付いていた。
華音に言っていた「昼間の店頭で遠目にガン見」というのは嘘で、昼営業の閉店の準備をするメイドの望美を、早めに店に着いた生霊の自分が見掛けたというのが本当の所らしい。
樹は思った。なんという偶然だろう。初恋の子が昼間に、この冥土の土産屋で働いていたなんて。忘れかけていた初恋の想い。それが再び胸の奥から沸き起こる。
これは、もしかしたら運命なのかも知れない。
彼女は運命の人なのかも知れないと、樹は強く感じた。
藤宮樹、男二十三歳。
死ぬ前に、どうにか彼女とお近づきになりたい。
しかし、いきなり昼間の店に生身の姿で現れて「やあ偶然だね、久しぶり」などと気軽に声を掛け、さりげなくLINE交換へと持って行ける程、樹は女性慣れしていない。
本当の彼は、今でも気弱で冴えない男のままだった。
無口でおどおどしてて、いかにも地味な陰キャくん。それが自分だと樹は思う。
小五で転校して以来。家庭の暗い事情が後ろめたくて、あまり友達ができなかった。
その頃に両親が離婚して、父方の実家の祖父母に預けられていたのだ。
おまけに東京の大学でも、田舎者の自分は馴染めなくてボッチだった。
付き合った女性はおろか、親友と呼べる人だっていない。
そんな陰キャな自分だから、女性との経験だって未だにゼロだ。
だから――。
『だから俺は冥土の土産の願いとして、こう望みました』
「こう……って?」
『【契約書 私の魂と引き換えに、初恋の人である逢沢望美さんと、死ぬ前に一度でいいからエッチさせてください】と』
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