1-11

「な…………」


 翔が絶句し固まる。


 ――えええっ! 店長なに言ってんですか?


 店主の不可解な言葉を聞いて、メイドの望美も同時に驚く。


 ――だってマホくんだったら、今もそこに……。


「にゃあご」


 いつの間にやら、カウンター席には黒猫マホの姿があった。

 黒猫の蒼い目がギロリと光る。余計な口をはさむな。まるで、そう言わんばかりに。


 とっさに悟った望美は、口に出掛かった言葉を飲み込んだ。


 ――そっか。まさかマホく……マーくんの正体は「死神の黒猫に憑依された自分なんです」だなんて言えないだろうから。だから死んじゃった事にしたのね。


 真幌が藍染着流しの袖から、一枚の写真を取り出す。


「マーくんとは、この子の事ですよね」


 写真を受け取ると翔は、まじまじと見つめた。


「ええ、そうです。この子です。でも、これは……一体……なぜ?」


 翔が困惑の表情を浮かべる。


 ――レッドの広瀬さん、なんで驚いているんだろう。店長の子供の頃の、色褪せた古ーい写真でも見せられたのかしら。


「店長さん。これは一体、どういうことなんですか?」


 横から望美は写真を覗き込んだ。


「ええっ!」


 望美が驚愕する。


「てってってっ、店長。これは一体⁉」


 そこに写っていた少年は、真幌に憑依したいつものマホとはまったくの別人だった。

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