1-12

 そこに写っていた少年は、マホとはまったくの別人だった。


 ――どうして、この子が⁉


「どうして、この子が⁉」


 望美の心の声と、翔の驚きの声とが同調シンクロする。


 ――どうして、この子がマホくんなの⁉ まったくの別人なのに。


「どうして、この子がこんな姿に⁉」


 写真の中の少年は、青いパジャマ姿をして白いベッドで横たわっていた。

 おそらく小児病棟の一室だろう。頬はげっそりと痩せこけ、顔色は真っ青。つぶらな瞳で可愛かった目元も虚ろだ。意識が朦朧としているように見える。


 そんな少年の枕もとには、小さな赤いヒーローのフィギュアが添い寝をしていた。


「ついこないだまで、あんなに生意気で元気だったのに。どうして⁉」

「この子の名前は、山下まさよし君。彼は先日、永らくの闘病生活の末に市内の総合病院のベッドの上で息を引き取りました。享年十一歳でした」


「山下……まさよし…………って、ああっ!」


 その名を聞いて何か気が付いたのか、翔が驚愕の声を上げる。


「そうか、ここは岡山県倉敷市。だから山下まさよし……くんって。まさか、まさか俺にいつもファンレターをくれていた⁉」


 真幌がこくりと頷く。


「ええ。彼こそが、あなたの傍に現れたマーくんです」

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