誕生日プレゼント

 僕と彼女は似ている。優しいところが。

 ジリリリ。目覚まし時計の音で目が覚める。

「朝か…。」

 重たい足取りで洗面所に向かい、顔を洗う。リビングに戻ると、小さな友人が迎えてくれた。

「にゃー。」

 勢いで預かってしまった猫だ。名前は"トラ"。猫なのにトラか!と、この前彼女に言われたのを思い出す。体に虎のような模様があるのが理由だ。猫の名前の由来なんてみんなそんなものだろう。と、一連の流れで僕の脳内で回想が流れる。

 トラにご飯をあげ、時計を見る。

「あ、やべ。もうこんな時間か。」

 僕は急いで朝ごはんを食べ、大学に向かった。


「よー。しゅんきち。」

 大学での今日の授業をすべて終えた僕のところへ、友人の聖司がやって来た。

「相変わらず、その呼び方はなんだよ。せーじ。」

 と、僕は聖司に言った。

 "駿"それが僕の名前だ。彼は僕を"しゅん"と呼ぶのは嫌らしく、"しゅんきち"と呼んでいる。どこかのゲームでのキャラクターを思い出させるような名前だ。もしかすると、僕はたぬきに似ているのかもしれない。そんなことはあるはずない。

 僕とせーじは、午前の講義が終わると毎日のように昼食を食べに行っていた。今日も変わらずだった。


 ラーメンを食べ終えて、僕たちはそれぞれ家へと帰った。家へ入ろうとすると、

「あ!」

 と、聞き馴染みのある声が聞こえた。

「しずくさん!こんにちは!」

 "雫"それが彼女の名前だ。公園で出会った彼女の。

「大学終わったんだ。お疲れ様。」

 と、相変わらず素敵すぎる笑みを浮かべて言った。

「しずくさんはこれから大学へ行くの?」

 彼女も大学生だった。別の大学の、大学生。

「ううん、今からお買い物に行くんだよ。よかったら一緒に行く?」


 ショッピングモールについた。僕と彼女はそれぞれの買い物をしてから、フードコートで休憩することにした。

「何買ったのー?」

 と、彼女は歩き疲れてヘトヘトになった表情で言った。こういう姿にも惚れてしまう僕は、一体。

「大学で使うノートと、トラのご飯。それと…。」

 僕は言うのをもったいぶって溜めた。すると彼女はそれにすっかり翻弄されて、

「なになに!早く教えて!」

 と、元気を取り戻したかのように言った。

「昨日、しずくさん誕生日だったでしょ。だから、これ。しずくさんに買ってきたんだ。」

 僕は彼女にプレゼントとして買った、ハンカチを渡した。

「え、えぇぇ!いいの?!やったー!ありがと!」

 彼女は満面の笑みを浮かべて、僕に言った。僕はその時、過去の自分を盛大に褒めた。

 すると、彼女は少し不気味な、何かを隠しているような笑みを浮かべた。

「ど、どうしたの…?」

 僕は、恐る恐る聞いてみた。

「実はね…。」

 僕は少し緊張しながら、彼女の目をじっと見つめた。

「実は……じゃーん!これ!しゅんくんにあげる!しゅんくん、一昨日誕生日だったでしょ!」

 僕は一瞬戸惑った。誕生日…あ、そうか。僕、一昨日誕生日だったのか。と、脳内で整理してから、

「そうだった!ありがとう!」

 と、言った。

「それにしても、お互い同じタイミングでプレゼントを渡すなんて。私達、似てるね。」

 と、彼女は言った。

「確かに、似てるね。」

 と、僕も言い、笑いあった。


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僕と彼女は似ている 人鳥パンダ @kazukaru

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