寄り添う傘

 慌ただしい毎日の中 気付けば冬も間近

 外に出ようとしたら 無音の雨のお出迎え

 冷たい空気に そっと息を吐く


 傘立てには 傘が一つきり

 ぽつんと抜かれるのを待っている

 あの人は先に行ったのだと

 唐突に実感しながら 持ち手に触れた


 さあ 出かけよう


 雨に煙る町を 靴を鳴らし歩く

 一度は落ちた雫が 跳ね返って空気に溶けていく


 水たまりには 不思議そうな顔が映る

 それが更に不思議で 歩きながら眺め続けていると

 ふっと傘が映り込んだ


 いつも我が家の傘立てで寄り添い合う

 とっても見慣れた傘だった

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