第7話 怒り3
そうだ、と私は思いついた。言葉遣いで勝とう、と。
親が厳しかったわけじゃないけれど、私は正しい敬語を使うことを大切にしていた。年上であっても先輩だからとか、関係性で使い分けるのではなく、自分より上の人には等しく正しい敬語を話すようにしていた。正しく使うために、インターネットで調べて、二重尊敬語にならないようにだとか、ら抜き言葉を使わないようにだとか、とても気を付けていたのだった。
陸上部のみんなは、お互いに話すことが出来るアプリで、グループを作ってそこに所属していた。休む場合は、そこにメッセージを送信して知らせることになっていた。他の人が休んだ時に送られてきたメッセージを見ると、今日は休みます、と書いてあった。体調が悪く休もうとしていた私は、他の人のようには書かずに、体調が悪いので今日はお休み致します、と送信したのだった。
何もおかしいところはない、ただ、他の人より丁寧なだけ。だから何もおかしいところはない。
だが、その直後、Bから送られてきたメッセージを見て、私は怒りを覚えた。
『お休みいたしますって笑 丁寧すぎて爆笑なんだけど!!爆笑』
意味が分からなかった。どこにそんな爆笑する要素があるのだろうか。丁寧すぎて、と書かれているが上の人に話すのであれば丁寧すぎることなんてない。
『いや、面白くないでしょ』と私は冷たく返信したのだが、『いや、面白いよ!!!笑』とさらに圧をかけてBはメッセージを送ってきた。
そこからなんて返信すればいいのか分からなかった。納得する? それともまだ反発する? いや、それはしんどい。そう考えて、結局私は、それくらいしか取り柄がないから、と話を終わらすように言ったのだった。それで、終わると思っていたのに、『それでも丁寧すぎじゃん!!笑笑』とBは言ってきたので、私は、うん、そうだね、とい納得せざるを得なかったのであった。
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