第11話 両親は俺たちにお話があるそうです

昨晩のこともあってか、俺はいつもより長い時間眠っていた。疲れていたのだ。


それに今日は土曜日。いつもならこの時間は学校に行くために嫌々制服に着替え、朝食を食べて家を出ている。


しかし、今日はそれをする必要も無い。


いつもより快適な睡眠ライフを送ろうと思っていた。


しかし、そうはいかなかった。


「ゆうくん!おきてー!」


「えぇ…なんで…」


陽葵が起こしに来てしまったのだ。


平日なら起こしに来てくれるのはありがたいが、週末にこれは勘弁してほしい。


「いくら今日が休みだからって遅く起きるのはだめ!」


陽葵は本当に規則正しい生活を送っている。そういうところも含め、俺は陽葵が好きだ。


しかし、今日はそうはいかない。


「うぅ…あと10分だけぇ…お願いします…」


俺は寝ぼけ眼で陽葵にお願いをした。


「も〜、じゃああと10分だけだよ!」


陽葵が優しい彼女で良かったです。


しかし、時間が経つのは早いもので、特に眠っている時は10分が数分、いや数秒にも感じる。


10分後、陽葵がまた起こしに来た。


「ゆうくん!もう10分経ったよ!おきて!」


何故か普段は週末に俺を起こしに来ない陽葵が今日は執拗に起こしに来る。


気になった俺は、陽葵に聞いてみた。


「なぁ、なんで今日は土曜日なのにそんなに起こしに来るんだ?」


「実はね、ゆうくんのお父さんとお母さんが私たちに話があるらしいの」


「……え?話?」


それなら致し方ない。俺は部屋着のまま陽葵と一緒に、両親の待つリビングへと向かった。


しかし、いきなり話があるとは言っていたが、何だろうか。


最近は家族と過ごす時間よりも陽葵と二人で過ごす時間の方が長くなっている。


もしかしたらそれが理由で、陽葵との同居生活を解消されるかもしれない。


それとも予定よりも早く陽葵の両親が帰ってきたのか。


どちらにしても、今日で陽葵との同居生活が終わってしまうかもしれない。


俺は少し気持ちを引き締めて、陽葵と二人で両親の前の椅子に座った。


両親の顔を見る。


心做しか、いつもより両親の顔が真剣に見える。


空気が重く感じる。


無言のまま数分経ったあと、ついに父さんが重い口を開いた。


「二人とも朝から急に呼び出して悪かったな」


「いや、大丈夫。ところで、話って言うのは…」


「ああ、その事なんだが…」


父さんが口を開く。


「今日でお前たちの生活は終わりだ」


その言葉を聞き、俺は絶望した。やはり、最近陽葵との時間を優先しすぎたせいでこんな事に…


隣の陽葵も、泣きそうになっている。


すると、母さんが口を開く。


「ちょっとお父さん、説明が足りないですよ?」


「ん?あ、そうだった!」


「え?どういう事ですか?」


泣きそうになっている陽葵が質問する。


「二人には新しい家を用意した、まあ、アパートだけどな」


「最近二人とも仲がいいから、そろそろ二人きりで住まわせた方が良いかな〜って、あ、安心して陽葵ちゃん!もう陽葵ちゃんの両親には承諾済みだから!」


「なんだ、同居生活を解消させられるかと思ったよ」


「そんなことする訳無いだろ〜!」


父さんはニヤニヤとした笑顔を浮かべながら俺らを見てきた。さっきまでの重苦しい時間を返して欲しい。


「というか、肝心の本人の了承を得てないと思うんですけど?」


俺は少し怒り口調で父さんに聞いた。


「まあ、サプライズ…ってやつ?」


「はぁ…勘弁してくれよ…」


だから何でうちの家族は事前承諾という事をしないの!?


「まあ、こういうのもいいだろ〜?」


そう言いながら両親はいつも以上にニヤニヤしている。正直殴りたい。


肝心の陽葵はというと…


「本当ですか!?ありがとうございます!」


え!?めっちゃ喜んでる!?


「やったねゆうくん!これからはずっと一緒にいられるね♡」


「ああ、そうだな」


笑顔で言う陽葵を見て、なんだかこれからの二人きりの同居生活が楽しみになった。







予告です。


次回、次次回は晴人の親友、川島拓真が主人公のアナザーストーリーを書かせていただきます。


あ、しっかりと新ヒロインとラブコメするのでご安心を。


少しややこしくなりますが、ご了承下さい。



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