第7話 幼馴染はキスが好きになったらしい

俺の彼女の陽葵と初めてキスやハグをした十数時間後、俺はベッドで寝ていた。


目を開けると、少し開いたカーテンから日の光が差し込んでくる。もう朝らしい。


「うぅ…」


もう少し寝ていたい気分を抑え、起きようとした時、ふと、横から温もりを感じた。


ん?なんだ?と思い布団をめくる、すると


「!??」


そこにはすやすやと寝息をたてて眠る陽葵がいた。


思わず声を出しそうになったが、幸せそうに眠る陽葵をまだ起こす訳にはいかない。


はっ、と思い俺は思わず布団の中の自分の体を確認する。


しっかりと部屋着を着ていた。


その夜、何も無かった事を安心する反面、少し後悔する自分がいた。


しばらく、陽葵の寝顔を見てしまう。


長く艶のある髪、白く柔らかそうな肌、まるでお人形さんのように整った顔。


気が付くと、陽葵の目が覚めるその時まで寝顔を見てしまっていた。


陽葵と目が合う。


「んー…え!?ゆうくん!?」


「おはよう、陽葵」


「あ、あの後一緒に寝ちゃったんだっけ…」


あの後、イチャイチャがエスカレートし、結局二人で同じベッドで寝てしまった。


「ねぇ、ゆうくん」


「ん?」


「私の寝顔……見た?」


「見たよ、めっちゃ可愛かった」


「も〜!恥ずかしいよ〜」


陽葵は俺に寝顔を見られたくなかったらしい。寝顔も全然可愛かったから気にしなくてもいいのに。


「じゃあ、私の寝顔を見たお仕置き!」


陽葵がそう言った途端、陽葵の唇が俺の唇に触れた。


「!?」


「あと、おはようのキスもしなくちゃ♡」


そう言って一度離れた唇がすぐに触れ合う。


「陽葵……もしかして、キス好きになった?」


「うん、好きになっちゃったかも♡」


そう言い残し、陽葵は俺の部屋を出ていった。朝ご飯を母さんと一緒に作るのだろう。


一人ベッドの上に取り残された俺は、しばらく放心状態だった。


「あいつ…可愛すぎないか…?」





学校の休み時間、今日は陽葵ではなく、親友の拓真と一緒に屋上で弁当を食べていた。


陽葵と話し合い、拓真なら何やかんや言って信頼出来る友達として、俺たちの関係を話すことにした。


「なあ拓真」


「ん?なんだ?」


「俺、陽葵と付き合うことになった」


「ぶはっ!?」


拓真は食べていた弁当を吹き出す。


俺はそんなことお構い無しにカミングアウトする。


「あ、後一緒に暮らすことになった」


「ブハッ!!?」


ついに口から弁当だけでなく血も吹き出した。


「おいおい、大丈夫か?」


「お前のせいだよ!え!?陽葵ちゃんと付き合う!?陽葵ちゃんと同居!?」


「そうそう」


「いや、何普通に言っちゃってんの!?お前、学年一の美少女だぞ!?ラブコメ主人公すぎるだろ!」


「いやぁ、そうなんだよね」


「こいつぅ……」


拓真は羨ましそうに俺を睨んでいた。


まあ、確かに俺も逆の立場だったら俺も拓真を睨んでいるだろう。


「くそーー!俺も可愛くてあんなにいい身体した幼馴染が欲しかったー!」


拓真は悔しそうに頭を抱え倒れ込んでいた。

しかしすぐに起き上がり、質問をしてきた。


「てかさ、お前、陽葵ちゃんに振られたんじゃないの?」


「え?何で知ってんの?」


「まあ…風の噂ってやつ?」


そう言いながら拓真は何かを隠すような素振りをみせる。なんか怪しいが、今は気にしないでおこう。


「ああ、なんか俺の事好きだったらしい」


「ん?え??どゆこと?」


「えぇと…」


俺は陽葵から告白された事を拓真に説明した。


「何それ!?そんな事ある!!?」


「それがあるんだなぁ」


「お前……ふざけんなぁ!!」


今日はやけに拓真がうるさい一日だった。

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