第2話
悪い予感っていうのは良く当たる。
って言われているのは、良いときは大体覚えていないからだ。
人間っていうのは未来の為に、危機回避のことだけは忘れないようにしている生き物なのかもしれない。
思った通り、空に現れたのはクソ大きな生き物だった。体長にして五、六メートルくらいかもしれないけど、信号機の高さの生き物が目の前に現れてマトモに分析なんて出来る訳がない。
蛇だかトカゲのような面、裂けた口と鋭い牙。鱗に覆われた大きな翼には、鉤爪をあしらった小さな手がついている。これは間違いなく、ドラゴンって奴だ。
勿論、こっちは脱兎の如く逃げ出した。相手は飛んでいるんだから、下をくぐり抜ければ良かったかもなんだけど。そんな余裕は毛ほども無かった。
それとも、動いてしまったのは逆に失敗だったのかもしれない。
ドラゴンは真っ先にこっちを視認して、空を滑るように追ってきた。当たり前だが、こっちには対空手段なんてものは無い。
だから、向こうが遠距離攻撃を持っていたらやばい。火を噴いたり、氷を吐いたり、反吐が出たりとか。下手したら口笛を吹かれても、ダメージを受けるんじゃないかと思った。
ここは異世界だってのは、おおよそ検討はついていた。
雪も無いし、全然寒くないから北海道だなんて思ってなかったし。蛇やクマやマリモが居ても、竜なんて絶対居ないのは明らかだし。
でもゴキブリ居ないんなら、竜くらい生息してもおかしくないのか。
あ、でもサッポロは居るんだっけ。じゃあ、ここは少なくとも、サリポロペじゃないなぁぁ。
サッポロ、イチバン。
自分で思ったより、速く走れているのに気が付いた。もしかしたら、よくある転生もので能力が付与されたっていうアレなのかもしれない。
これなら逃げ切れるかも。なんて思ったのも束の間、気づけば頭上に日陰が出来ていた。
見上げると、先ほどのドラゴンが目と鼻の先まで近づいてきていた。こういう時って、謎の能力が働いて、助かるって展開や筋書きじゃないのかな。
「グアァアアア!」
野太い大声に再び顔を上げると、ドラゴンは火に包まれていた。
これは最終奥義、フェニックスうんたらとかいう技かもしれない。不死鳥の如く火に包まれて、攻撃をかますって奴なんじゃないか。
言っておくが、こっちは丸腰で、かつ能力なんて何を持っているか分からないんだぞ。
いきなりリーサルウェポンとか、意味分からん。
なんて思っていると、背後で大きな音と共に軽い地震が辺りを響かせた。地鳴りっていうのかもしれない、驚いた衝撃で盛大に転んでしまった。
いつまでも伏せているわけにはいかないから、起き上がって後ろの様子を見る。炎に包まれたドラゴンは、いつの間にか地の上に横たわっており。バーベキューみたいに旨そうな香りを漂わせ、ピクリとも動かなくなってしまった。これがサッポロイチバンなのか。
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