異世界チーター・アオイ
直行
第1話
デッド・イット・ライフ、私は死にました。
死んだ理由は何だったけ。そっか、あれは確か溺れた子供を助けようとしたんだ。
ゼミの飲み会か何かの帰り、アイ・アム・結構酔っていた。鼻歌交じりでフンフフンフと機嫌よく川沿いを歩いていたんけど、ふと小さな子供が浮いているのが目に入った。
必死に呼びかけても応答は無いし、頭は水に浸かったまま浮いている。とっくに死んでいるんじゃないかって思ったけど、それならそれで一大事。
土左衛門だとしても、このままだと亡骸が魚に食いつくされるし。っていうか、気絶しているだけかもしれないし。
とりあえず上着を脱いで、携帯電話と財布を放って、思いっきり川に飛び込んだ。
季節は夏だし。魚も泳いでいるようだから、何とかなるとか思った自分が馬鹿だった。こちとら生まれてこのかた、一度も泳いだことが無いのを完全に失念していた。
それでも足掻きながら、何とか子供の元へとたどり着いたから、声を掛けて安否を確認した。
手を伸ばして触れた瞬間、理解した。安否なんてものは端っから、そんなもん無くて。浮いていたのは、人形だった。
そして失意のどん底に沈みながら、我が人生は終わりを告げたのだった。
目が覚めると視界一面に、澄み渡るような青空が広がっていた。確かに死んだはずだから、天国じゃないかと思ったけど、自分が落ちるのは間違いなく地獄だから。絶対に違うと思った。
空気は綺麗で温かい日差し、感動的なシチュエーション。惑いじゃないかと、疑うイミテーション。どういう状況なのか、探すクリエーション。どうしようもなくて、とりあえずアクション。
立ち上がり、思い切り伸びをする。地平線が見えるってことは、念願の北海道かもしれない。
日本で唯一、地平線が見えるのは蝦夷だと高校生の時に授業で習った気がする。
どこまでも広がる草原の先には、優雅に飛ぶ鳥の姿が見える。やはり北海道はでっかいどう。何もかもがスケールが違いすぎて、同じ日ノ本の国とは思えんばい。
って、おかしくないか。
何故、この距離でハッキリと飛んでいると分かるんだ。
距離を考えろ、遠近法仕事しろ。
これじゃ、まるでこっちに向かって地平線から飛んできている鳥が、馬鹿でかい生き物みたいじゃないか。
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