第3話 旅の始まりと魔法道具
「
「
「お前、そんなことも知らねェのか! 魔法道具の一種だよッッ!」
ここにも魔法道具があるの!?
困惑している内に、その何かの音は遠ざかった。
「アイツ!
「これが魔法道具·····。」
「この世界にはね、魔法道具はもはや誰でも持っているような代物なの。まあ、ごく一般的な魔法道具の1つだね。
わたしの国では王族しか持つことを許されなかった魔法道具がそんなに沢山·····。
「ったく。量産できるようにしちまいやがったあの国王のせいだぜ。」
「あの国王?」
「お前、ホントに何にも知らないのな。ラントグレ国のユスティース王だよ。」
ラントグレ国のユスティース王。わたしの父に違いないわ。
でも、どういうこと?ラントグレ国には魔法道具はそんなにないはずよ。
「ラントグレ国ってこの世界にあるの?」
「あんなデカい国、知らない方がオカシーだろ。でも、この世界にはねェ。安心しな。」
「それはおいおいでいいから。はい、毒消し。」
「おお、悪ぃな。エット。」
「ありがとう。」
それが本当だとすると、お父様はこっちに来れる。
反逆者と見なされたわたしを許すわけが無い。
世界で1番恐ろしいことなのに、何故か実感が湧かない。
「とにかく! 街を目指そうか。」
「街ィ?俺はごめんだぜ。」
「エスポワールくんは強いから来てもらわなきゃダメなの。いいでしょ?」
「しっかたねぇなあ。」
「街があるの?」
「聞くばっかだな。」
「悪かったわね。」
「もう、エスポワールくんは短気なんだから·····。あのね、人間の街があるんだよお。目的地の道中にある街。」
「人間かァ! そりゃいい! 魔導士はいけ好かないからな!」
「はいはい。ねえ、目的地ってどこなの?」
「極北にある大国のプリエだよお。」
「そこで何するの?」
「よぉく聞け、半人半魔! プリエの王を倒す!!」
「どうして?」
「少しはテメーの頭で考えらんねェのか。家族の仇をとる為だ。」
「家族の?」
「ああ。俺があの時、しっかり国にいれば、親父もおふくろも死なずに済んだんだ。」
おふくろ。って聞いた時にお母様の事を思い出した。
お母様は反逆罪で死刑になるのを覚悟でわたしを逃がしてくれたんだ。
お母様の仇。それはお父様を殺すこと。
でも、そんなことをお母様は望まない。
「聞いてんのか? 半人半魔。」
「聞いているわ。」
「じゃあいいけど。俺はプリエのふんぞり返った王を殺すために旅をしてる。何か文句あっか!?」
「そんなこと一言も言ってないわよ!」
本当に短気だわ。
「ミルエットちゃんはどうしてコイツなんかと旅をしているの?」
「エスポワールくんは私が必要って言ってくれたから。でも欲を言うとこの世界から魔法道具を奪ってしまいたい。魔法道具のせいで沢山の人が死んでるんだから。」
そう言って顔を曇らせたミルエットちゃんを見て、勝手に責められたような気になった。
わたしの父が魔法道具を量産しなければ死ななかった人も沢山いる。
そう考えると、なんとも言えない辛い気持ちになった。
「エタンセルちゃんは? これからどうしたい?」
「まだ決まってないわ。それまで、ついて行ってもいい?」
1人は心細いから。みんなと一緒の方がずっと良い。
「うんうん! それじゃあ、これからも一緒にだねえ!」
旅の目的·····今は死なないことだけど。
いつかはそれ以外を見つけたい。
わたしの旅は始まった。
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