第2話 外の世界

「じゃ·····死ね。」

防御魔法ディフェア!!」

なんとか助かった。

でもあと一瞬遅かったら·····

「おお、やるなあ。俺も少しは楽しめるか。でもこれで終いだな。水爆刀オーテローラン!!」

「水·····?」

斬りかかった勢いの割に小さな水の雫が腕に落ちた。

「うっ!?」

わたしが丁度覗き込んだ時、水は大きな爆発を起こした。

「耐えた、か。あれェ? お前、半人半魔じゃねえか。その緑髪、そうだろ?」

「そうよ、だから何なの!? 雷撃レインウィー!!」

「おっと。」

わたしの中では1番の魔法も軽くかわされた。

嘘でしょ·····なんて強さなの!?

「次はこっちな! 水源流オーテテーヌロブ!! これはなァ、切られたところから水が溢れてくるぜ!!」

ギリギリかわした、けど、体力が·····

「死ねェェェッ!!!」

光魔法グアンル!!!」


「うっ·····目が·····。あ、あのヤロォ·····。」


光魔法で目くらましに成功したわ!

走ってできるだけ遠くまで·····!

「ねえ、君。」

ギクリとした。

振り返っていたのは真っ黒な髪の女の子。

黒ってことは多分人間。

無視して通り過ぎることにした。

さっきのような目にはもう合いたくない。

「ねえってば。聞こえてるの?」

女の子がわたしの手を掴んだ。

しょ·····初対面よね?

「な、なんですか?」

「やっとこっち向いてくれたね。」

「何か用事ですか?」

「そんなんじゃないよお。ただ、血まみれだからさ。心配になっちゃって。」

「あっ·····。」

足元を見ただけでそれは分かった。

必死に走りすぎて気がついていないだけだった。

「良ければ治療させてくれない?」

その女の子があまりにも感じが良かったのと、この世界で初めてまともに話せたっていうのがあって、その誘いをありがたく受けた。

「まずは自己紹介しよっか。私はミルエット。これでも魔導士なんだよお。」

「よろしくね、ミルエットさん。わたしはエタンセルよ。」

「さん付けしなくていいよお。あ、少し染みるからね。」

「いてっ。」

水が染みた。

ミルエットちゃんは治療が上手い。

痛いと言っても、国にいた時の治療ほどでは無いから。

「これで完了!」

「ありがとう。とっても助かったわ!」

包帯こそ多いものの、足も腕も綺麗になっていた。

「どういたしまして! あの、聞きたいんだけど、黒髪で茶色の瞳の男の子、見てない?」

あの男の子がわたしの頭をよぎったけど、人違いよね。

ミルエットちゃんの探してる人がそんな人なわけないわ。

人間は黒と茶色の髪と目しかないんだから、沢山いるわよ。

そう言い聞かせて恐怖を拭おうとした。

でも、もしもミルエットちゃんもそうだったら?

汗が包帯に染み込んでいくのを感じた。

「見てたらと思ったんだけど·····。ねえ、一緒に探してくれないかなあ?」

「ええ、もちろん。」

治療のこともあったとは言え、二つ返事で了承してしまったのを後悔した。

「ありがとう、助かるよお。」

わたしたちはさっき来た道を歩いた。

道中、ミルエットちゃんが探している子について教えてくれた。

「その子の名前はエスポワールって言うんだけどね、ちょっと短気なんだよね。でもとっても強くて、人間の剣士なんだよお。」

「へえ、そうなの。」

聞けば聞くほどあの子に近づいていく。

「ミルエットちゃん。もしかしてその子って、水の剣を持ってたりする?」

「へえ! よく分かったねえ。そうだよ。その子の剣は水宝剣オーテゾーロセイって言って、水神から譲り受けた剣なんだよお。」

自らの質問は自らの不安を煽った。

わたしの頭にはこれしかなかった。

逃げる。

次は殺される。

でも·····ミルエットちゃんが手を握ってて·····。

そうこうしているうちにあの子と会ってしまった。

「あれェ?エット。何で半人半魔なんて連れてんだァ?」

どうか·····その子がエスポワールじゃありませんように!

「エスポワールくん!」

わたしの願いは音を立てて崩れた。

殺されるっ!

「エスポワールくん。殺しちゃダメだからね。」

ミルエットちゃんの言葉でエスポワールはわたしへ向けた剣を鞘に収めた。

「つまんねえの。」

助かった·····。

「ごめんね、エタンセルちゃん。」

「ミルエットちゃんが謝ることじゃないわ!」

「それ、俺に謝れって言ってるようなもんだぞ。」

やっぱり恐いな。

「おいおい、そんな目で見るなよォ。悪かったって。」

思ってないでしょ。

そんなこと言えるわけないけど。

「エタンセルちゃん、私たちと一緒に来てよお。」

「ミルエットちゃんたちと?」

「おお!そりゃいいなァ!」

行った方がいいのかしら。

また危ない目に合うかもしれないからなあ。

「うん、行くわ。よろしくね!」

「うん!」

こうして本格的に旅が始まった。


「っと。そこで何かいるのは分かってるぜェ!」

エスポワールが剣を構えた。

「エスポワールくん! 下がって!!」

その声はもう遅くて、何かが投げ込まれた。

毒石ドゥロックだよお!」

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