後悔

サバンナは乾いた風に吹かれて、以前と全く変わらない。ただ一つ、あの元気な笑い声が聞こえないこと以外は。

カラカルは甲斐甲斐しく、サーバルのもとに食べ物を運んだ。けれどサーバルの口は、身体は食べ物を受け付けなかった。

サーバルはみるみる衰弱し、やがて水すら飲めなくなった。唇はカサカサとひび割れ、肌も青白い。命が尽きるのも、もう間もないと思われた。

『駄目…駄目ですこんなの!サーバルちゃんは、サーバルちゃんは元気で!一人でなんでもできて!僕なんていなくたって、生きてきたし、生きていかなきゃ!』

「君がそれを言うのかね」

火の鳥は、そこにいた。サーバルの姿は消え、世界は再び光に包まれた。

「自分は命を投げ出しておいて、君がそれを言うのかね」

『でも、あの時は』

「そうするしかなかった、か。君はそれで満足だったでしょう。けどね、それは酷い独りよがり。君が望むなら、他にもやり方はあったでしょう。けれど、君は安易に命を投げ出してしまった。そして、周りに大きな喪失を生んだのよ」

『はい…今なら、それがわかります』

僕は、うつむいたまま視線を上げられなかった。上も下もわからないけど。

「時は巻き戻せない。けれど、ささやかな奇跡を君にあげるわ。サンドスターの、世界にとってはほんのささやかな、奇跡を」

『奇跡?』

「さあ、思い出して。君がもらった、大切なものを」

『僕がもらった…大切な、名前!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る