サバンナ

風に運ばれる草の匂い。背の高い草が地面を覆い、所々に灌木が見える。

僕は、それを見下ろしていた。

視線を移すと、あたりに息づく生き物の気配。木の上には、ネコ科の…なんといったか。女の子が寝ている。その耳が、ぴくりと動いた。

ぴょん、軽く枝を蹴っただけなのに、相当な距離を跳んで地面に着地する。僕はその身体能力に見惚れてしまう。

「うみゃみゃみゃみゃー!」

せっかく音もなく着地したのに、大きな声で鳴きながら走っていく。

「シマウマ、みーつけた!狩りごっこしよっ」

「きゃっ!」

声をかけられた、白黒模様の女の子が、目覚ましい速度で走り出す。

「負っけないよーっ」

ネコ科の女の子があとを追う。一度は追いつきそうになったが、どうやら疲れてしまったようで、白黒模様の子に置き去りにされてしまった。

「やっぱりシマウマは速ーい」

「何してるのよ、サーバル」

「あっ、カラカル!」

カラカルと呼ばれた子は草むらで待ち伏せしていたらしく、突然シマウマの前に現れてタッチ。

「あんたはいつも考えもなしに突っ込むから、狩りごっこが下手なのよ」

「捕まっちゃったぁ」

「ね、狩りごっこしたら喉乾いちゃった。カバのとこにお水飲みに行こう?」

「いいわね。あんたも来る?」

「行きます!」

シマウマも一緒に歩き出した。

サバンナはとても平和で、だけここに僕はいない。僕はなんだか、とても寂しくなった。

夜が来て、朝が来て、平和な毎日が過ぎた。サーバルは、友達と時々遊んで、青い小さな生き物から食べ物をもらって、争いもなく日々が過ぎる。

「聞いた?ハンターさんたちが、セルリアンにやられたって」

「ヒグマが?嘘でしょ、あんなに強いのに」

「サイキョーって言ってたよ?」

サバンナに住む女の子たちが、噂しているのが耳に入った。みんな不安そうだ。

「大丈夫だよ、わたしが自慢の爪で、やっつけちゃうから!」

「あんたは全然弱いくせに」

「えー?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る