死の狭間にて
油絵オヤジ
不死鳥
『僕は死んだのかな』
辺りは真っ暗で、自分の指先すら見えない。音も聞こえない。上も下もわからない。きっとこれが死ぬということなんだろう。
『サーバルちゃんはきっと助かったよね。だったらいいかな、僕が死んでも』
「ほう。君は死にたかったのか?」
『そうじゃないけど、きっと誰かの役に立ちたかったんだと思います。その誰かが大好きなサーバルちゃんなら、もう思い残すことなんてないんです』
答えてから、誰かに問われたことに気づいた。その誰かが現れた瞬間から、真っ暗な世界はまばゆいばかりの光に溢れていた。
『あの、あなたは誰ですか?』
目を閉じても、いや、目を閉じることはできないようだ。そもそも、僕には形などなかった。とにかく眩しい光の中に、鳥のようなシルエットが見えた。
「火の鳥、と呼ばれることもあるわ」
『火の鳥さん?どうも、僕は…あれ?』
自分の名前が思い出せない。あの子にもらった、大切な名前なのに。 あの子?誰だっけ。いつでも元気で、優しくて… 優しいってなんだろう。
「君はこれから、全てを失う。死とは断絶だから」
怖い。自分が何者かがわからない。大切なものがわからない。
「君は、他者を救うために命を投げ出した。それは賞賛されることかもしれない。だけどね、救われた者は、本当に救われたのだろうか」
『え?どういう』
「君には、これから君のいなかった世界を見てもらう」
フッ。世界は再び真っ暗になった。
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