慣れてきた魔法学校生活と図書室
※長らくお待たせして申し訳ありませんでした。
またしばらくは更新速度を上げられると思います。
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「それじゃあライラさん、また放課後に」
今朝もいつものように学校の敷地内にある噴水の前でリリーと別れ、それぞれの授業に向かう。
これはもはやルーティーンと
暦が地球と同じなのは元からなのか、はたまたよく分からない翻訳機能によってそうなっているのかは知らないけれど、今日は日本で言う土曜日に当たる。
そして七日間の内、六日も授業があるこの学校。
そう、魔法学校に入学して最初の一週間が終わろうとしていた。
新入生は学校生活に慣れ始め、特定の人と一緒に行動し始めたり、学校に存在する派閥のようなものの存在に気づき始める時期。
既に一日の行動がある程度、習慣化し始めている人も多いだろう。
そして私とリリーもその例にもれず、一日の流れと言うものが決まってきていた。
それは朝起きるところ(夜寝るところ?)から始まっている。
―夜―
寮の部屋は隣同士でそれぞれの部屋に立派な
魔法学校への入学前には一緒に寝てもらえななかった時期には、毎晩寂しかったし、昔の実験施設にいた頃の悪夢ばかりを見ていたけれど、リリーと一緒に寝ると寂しくもないし、悪夢も見ない。
だからって訳じゃないけれど、今はリリーを離さないと言わんばかりに抱きしめて寝ている。
―朝―
穏やかな気分で目を覚まし、目の前に見えるリリーの寝顔を見て幸せに浸る。
でも時々、リリーの方が先に起きていてこっちの寝顔を眺めている時もあって、そういう時は凄く恥ずかしい気持ちになる。
ナチャーロの街に居た時に、身体を拭く際、裸をリリーに見られて恥ずかしい思いをしたけれど、そういった羞恥心はまだ私の中で健在のようだった。
……まぁリリーの寝顔は可愛いからじっくり見るんだけど。
毎朝毎朝、寝顔の件でやいのやいの言いながら二人で顔を洗ってパジャマから制服に着替えると、私たちは二人で食堂へ向かい皆と朝食をとる。
朝食前の月の女神さまへの祈りの姿勢も少しは様になってきたかな?
…案の定、頭は痛くなるけれど。
ここで気になるのはやっぱりウェンディの様子で、受ける印象は変わらず違和感とわずかな苛立ちだ。
そういえば結局隣の部屋はウェンディなのだろうか?
部屋の前で遭遇とかもまだしてないし、本当のところは分からない。
朝食の後は一度部屋に戻り身支度を済ませてから、授業へ向かう。
勿論リリーと一緒にだ。
六日が経っても事実は変わらず、リリーは闇属性の適性を持っていないし私は闇属性しか適性を持っていない。
そのため、授業初日にもそうしたように敷地内にある噴水の前まで一緒に歩いていくと一旦そこで別れ、放課後になると落ち合って一緒に冒険者ギルドへ依頼を受けに向かう。
冒険者ギルドに行った後はリリーの機嫌がなぜか悪くなることが気がかりではあるが、私とリリーの場合依頼はすぐにこなせてしまうので、リリーの機嫌が酷くならないうちに、速攻で終わらせることにしている。
依頼を達成し、三人の『可愛い系』『クール眼鏡系』『ほんわかお姉さん系』受付嬢に報告を済ませた後は、それでもどこか不貞腐れているようなリリーを
日本のものとよく似ている浴場を満喫したり、
最近ではもう仲良くなってきたスタッフや常連さんのお姉さんたちとお喋りしたり、
おいしい料理に
『癒しの湯』と言う名前のこの場所は、私とリリーにとって大好きな場所の一つとなってきていて、ポイントカード的なものも作ってしまった。
そうしてお風呂に入って晩御飯まで食べた私たちは、このまま私の部屋に帰ってお喋りして一緒に寝ることが習慣となった。
▼▼▼
こうして最近の生活を振り返ってみると、かなり健康的と言うか…健全と言うか……結構いい生活を送っていると思う。
もちろんエリスさんに見つけてもらえるように、名を上げるような行動は続けていくが…願わくばこの幸せがいつまでも続いてほしいとも思っている。
「はぁ~、今日の闇属性の授業はテストか~」
こうして最近の生活を振り返っていたのは、なにも気まぐれと言う訳ではない。
一対一で進められている闇属性の授業は、順調に進んでいて……なんとついに今日、座学の範囲が一段落してまとめのペーパーテストをすることになったのだ。
ついてはそのテストに対する現実逃避として振り返っていたのである。
「まぁでも、このテストが終われば実技授業に移れるって言うならいいのかな」
座学の次は実技。
学んだことをもとにそれを自分の力として使いこなせるようにするのだ。
もっとリリーを助けられる力を…って思っていた私には大歓迎の授業だ。
…マンツーマンの座学の授業は私の精神的にもよろしくないし。
勿論座学だって大事であることは分かっている。
魔法と言うのは己の中にある魔力を使って発動させるんだーとか、
闇属性に関係ない魔法全体の知識まで教えてもらえたのは有意義だったからだ。
「でも、属性の名前を『暗黒』と『闇』と『暗闇』の三つのどれにするのかで議論されてきた歴史とかはどうでもいいと思ったけど……」
いくら現実逃避をしていてもテストは避けられない。
いよいよ闇属性の教室の前に着いた私が教室の扉を開けると、もはやお馴染みになった壮年の先生の顔。
いつもよりニヤニヤしているのはテストを嫌がっている私が原因だろう。
…本当にいい性格をしている。
「ライラさん、今日はテストですが勉強はちゃんとしてきましたか?」
「まぁ…はい」
めっちゃ楽しそうじゃん!
ほんとに腹が立つ!
いいわよ!百点取って見返してやるわよ!
席に座って裏返しにされた問題用紙と回答用紙を受け取る。
手提げかばんから筆記用具だけを取り出したら準備は完了だ。
「それでは、はじめ!」
生徒が私一人だけのこの授業ではテストの採点もすぐ終わる。
制限時間よりだいぶ早めに解き終えたテストを目の前の先生に手渡し、待つこと二、三分。
さっきよりも彩りが追加されたテスト用紙が私の手元に戻ってきた。
「さて結果はっと……」
「…………」
「…………」
百点満点中九十三点。
…びみょー。
百点を取ると息巻いていた私からすれば素直には喜べないし、先生からすれば私の点数が予想以上に高かったせいで何とも言えない。
「…………」
「…………」
「…次回からは実技に移りますので、第七グラウンドに来てくださいね」
「…はい」
▼▼▼
結局今日の授業はテストのみで終わり、いつもよりも少し早い時間ではあったが、私は今日も今日とて図書館へ向かった。
闇属性や吸血姫についての本は決して多くはなかったが、読書に
といっても欲しい知識はまだ手に入れられてないから、このまま読み終わってしまっても困るのだけれど……。
図書館は授業教室のある建物からは離れたところに立っているため、人気はない。
そのため、建物自体はとても綺麗なのだが雰囲気は少し不気味な感じだ。
まぁ入るのに抵抗は全くないんですけどね。
「お邪魔しまーす…ってあれ?」
我が道を行くかのように図書館の扉を開けて中に入った私だったが、いつもに増してひっそりとした館内に違和感を覚えてその足を止める。
「……司書さんは、いないのかな?」
辺りを見渡せば、入り口に入ってすぐのところにある貸出カウンターには司書さんの姿はない。
いつもはここに座っていて、図書館に入ってきた私と挨拶を交わしていた彼女はどうやら席を外しているようだった。
……まぁそのうち戻ってくるでしょ。
自分の中に生じた違和感に蓋をして、吸血姫の本を取りに行く。
既に慣れ親しんだ館内を鼻歌と共に歩いていき本を取ると、これまた慣れ親しんだ長椅子に腰を下ろしてページをめくり始める。
随分と分厚い本だけど、いままでコツコツと読んできたため残すは四分の一と言ったところだ。
前回まで読んだところを探し当て、今日の内容に入ろうとしたその時…。
「こんにちはライラさん、何の本を読んでいるんだい?」
誰もいないと思っていた館内。
この時間帯の空きコマに図書館を利用する人なんていないと思っていた私は、突然横から声をかけられた。
特に警戒はしていなかったとはいえ、吸血姫の私に気づかれずに接近した人物は、まるで王子様といったような微笑で私の座る長椅子のすぐ横に立っていた。
「……ウェンディ・フロスト・リーネリッヒ」
「奇遇だね、こんなところで会うなんて…」
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