入学手続きと冒険者ギルドin王都
「やってきました、王都ーーーーー!!」
「‥‥‥」
「ラ、ライラさん!絶対後に続くからって言ったじゃないですか!?」
「随分とはしゃいじゃって……まぁ、お可愛いこと」
「ラ~イ~ラ~さ~ん~」
両手を上げYの字を作りながらリリーが叫んだ通り、私たちはついに王都に着いたのだった。
ポヨン曰く王都に入るために存在する門は二つあり、一つは北門でもう一つが今私たちの前にある南門であるらしい。
北門は別名『貴族門』、南門は別名『凱旋門』だそうだ。
事情を知っていればなんともわかりやすい名前である。
『貴族門』と言う名前は、王都より北には(内地)身分の高いものが多く住んでいるため、『凱旋門』と言う名前は、王都より南にある魔王領へ戦いに向かい帰ってきたものを迎えることからついた名前だ。
なぜリリーがこんな真似をしているかと言えば簡単である、私が「一緒にやりましょ」と言って騙したからだ。
‥‥‥だって列長くて暇なんだもん。
王都に入るための列は非常に長かった。
ポヨンは大商人なんだからすっ飛ばして入れるんじゃないかと思ったが、なんでも最近魔王軍の動きが活発らしく、入門審査を厳しくしているそうだ。
たしかにここに来るまでも護衛としてかなり多くの魔物を屠ってきたけれど、通常
を知らない私たちはあれが普通だと思っていた。
▼▼▼
「ほっほっほ、お二人とも護衛の任務ご苦労様でしたぞぉ」
「いえいえ、仕事ですから」
「約束通り魔法学校の推薦状を書いておきますなぁ」
「ありがとうございます」
王都に到着出来て、魔法学校の推薦状も手に入れた、さぁ頑張るぞ!!
‥‥‥とは思ったけれど、正直ここまでしか考えてなかった。
滞在先とかどうしよう‥‥‥。
「どうかしましたかなぁ?」
「い、いえちょっと住む場所とかのことも考えてなかったなー、と思いまして…」
あはは…、と冷や汗を流しながら答えるリリー。
もしかしたらリリーに何か名案があるのでは?と思ったけれど、この様子じゃあリリーも何も考えてなかったらしい。
「おや、魔法学校について調べてたのではなかったのですかぁ?」
「えっ?」
「あそこは生活力のある令嬢を目指すとかで寮制となっておりましたぞぉ」
「そうなんですか!!」
ホッと一息である。
卒業までずっと宿生活じゃ、お金がかかりすぎるからね。
「入学金については大丈夫ですかなぁ?」
「「‥‥‥」」
「大丈夫ですかなぁ?」
「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥…」
私たちは王都の冒険者ギルドへ向かった。
▼▼▼
ポヨンに場所は聞いたからなんとか着けたけど‥‥‥王都広すぎ!!迷うかと思ったわよ!!
入学手続きの終了までは後一週間ある。
流石お嬢様たちが通う所と言うだけあって入学金は馬鹿にならなかったけれど、金級冒険者が必死に稼げば何とかなりそうだった。
おばちゃんに教えてもらったお金の単位、人間領では『○○リル』って数えるらしい。私の体感的には一リルが日本で言う百円ぐらい。とは言っても、この世界と地球では価値のある存在が違うから正確には計れないけど……。
そして入学金は十万リルだそうだ。
つまり日本で言うと一千万ぐらい。
一千万を一週間で調達(二人だけで)、かなりの難易度である。
ギルドは『ナチャーロ』のそれより大きくて綺麗だった、さすがは王都って感じ。
お昼過ぎと言う時間からかあまり中も騒がしくない、今はそんなに人がいないのだろう。
変に絡まれて時間を無駄にしたくなかったのでギルドの前でロザリオを外し、二人して金級冒険者の証であるプレートを見えるように首から下げて中に入った。
中にいたのは十人ほどの男たちだった。
奥にいる受付さんは‥‥よし可愛い女の人だ。
ギルドが大きいからか受付のお姉さんも三人いて、それぞれ一言で表すなら可愛い系、クール眼鏡、ほんわかお姉さんだった。
どうせなら仲良くなりたかったけれど、今話急ぎなのだ。
早足で受付に向かう。
依頼ボードを見てもよかったけど受付さんに割のいい依頼を見繕ってもらうことにした。
「よぉねえちゃん、ちょっ―――
「邪魔よ」
「すみません急いでますので」
「はっ?ちょっと待てよ!」
話しかけてきた男を無視して空いている可愛い系の受付嬢さんの前に立つ。
「報酬のいい依頼を見繕ってちょうだい、難易度は問わないわ」
「な、難易度は無視してもいいんですか!?」
「大丈夫です。ただし討伐限定でお願いします」
護衛とか最終だと時間がかかっちゃうからね。
流石リリー頼りになる~。
「おい!待てって言ってんだろ!」
可愛い系受付嬢が依頼を取りに行くとさっきの男がまた話しかけてきた。
男が手を出して来た時のためにリリーを後ろにまわす。
「何の用かしら?」
「お前らを俺らのパーティに入れてやるよ」
「結構よ。失せて」
やばい、鳥肌が立った。
発言がアレすぎてやばいです。
こいつの
初対面で上から目線なのがやばい。
目線が卑しすぎてやばい。
こんな奴が銀級ではこいつより下の奴らはめちゃくちゃ苦労しそうでやばい。
もうやばいしか出てこないわよ!
キャラが崩壊しちゃう!
「あの…依頼持ってきましたー」
「ありがとうございます。これですね‥‥‥」
「どれどれ、
「「‥‥‥
「これが一番報酬のいい依頼なんですか?」
「はい、難易度も一番高いのですがその分報酬も一番高くなってるやつです!」
「‥‥‥どういうこと?」
おかしい、なぜ?
後ろで変な奴が「ビビっちまったのか?」とか言ってるけれど無視だ。あいつと話していると鳥肌がすごいし、受付嬢の言葉が聞き逃せない。
「
「ここに来るまでの間でもライラさんが
その通りである。
確かに弱くはなかったけれどこのギルドで一番難易度の高い依頼としては不相応だ。なにか事情があるのだろうか‥‥‥?
「…あっ、もしかして前の方から来た方ですか?」
「そうですけど‥‥‥」
「どおりで‥‥‥じゃあちょっと説明させていただきますね!」
「あ、はい…」
「魔物が入ってくるのは人間領と魔王領の境界からなのは知っていると思うんですけど、前線の方で戦ってる冒険者さんたちが優秀でして‥‥‥王都の方にはあまり魔物もやってこなくてですね、討伐依頼もなかなかないんですよ」
なるほど……言われてみればそのとおりである。
なんかカッコつけて一番難しいヤツをとか言った手前、超恥ずかしい!
「最近は魔物の数が増えてきているので
「そんな‥‥‥」
まずい、このままではせっかく王都に来たのに魔法学校に入れない。
どうしよう…。
「討伐以外の依頼でよければ結構いい依頼が入ってますよー?」
「本当ですか!?」
「例えばどういうのかしら?」
「王都周辺には前線のほうに比べて身分の高い方がたくさんいるんです。だから護衛依頼がおすすめですね」
「護衛ですか‥‥‥」
「私たちは早急に十万リル稼ぎたいのよ。今持っているのがだいたい三万リルだからあと七万リルを一週間で調達したいの、何かない?」
この受付嬢の斡旋能力に賭けるしかない。
「もしかして魔法学校ですか?」
「‥‥‥よくわかりましたね」
「一週間と十万リルって単語があったのでもしかして、と思いまして」
入学金は一人で五万リルだから十万リルと言う単語から私たち二人が入学すると考えて答えを導きだしたのだろう。流石王都の受付嬢…。
「それでどちらが入学されるんですか?」
「はい?」
「えっ、私何かおかしなこと言いました?」
「あの、私とライラさんの二人で入学するんですけど‥‥‥」
もしかして入学金って実は一人十万だったの!?
「……あっ!そうだった、入学金って一人五万リルでしたね。間違えちゃいました、あはは‥‥‥」
こ、こいつ~~~!!
私の感心を返してほしい、あと間違えたかと思ってびっくりさせたことに対する謝罪を!
「で?魔法学校に入学することが何なのかしら?」
ちょっと冷ややかな口調になっちゃったかもしれない。
「あそこ、奨学金制ありますよ?」
「「えっ!」」
「つまり前借りです」
なんてことだ。
それじゃあ私たちは、今のところ前借りしておいて在学中に冒険者として稼いだ金をその返済に充てればよかったのに、慌てて金集めしようとしてたってこと!?
結局めっちゃ恥ずかしいじゃない!
「あっ、そうですか~」
「お騒がせしました~」
穴があったら入りたい‥‥‥。
受付嬢に対する言葉もついつい敬語になるというもの。
ロボットのようにたどたどしい動きで、そのまま右に回って出口へと向かう。
「だからちょっと待てって!」
こっちの腕を取ろうとしてきた相手に八つ当たり気味のデコピンを喰らわせ後ろに綺麗な一回転半をさせてから、冒険者ギルドを出た。
「入学受付行こっか」
「そうですね」
▼▼▼
「ほっほっほ、これで情報収集の重要さをその身に刻み込んでおくのですぞぉ」
▼▼▼
とある貴族令嬢たちの会話
「今期は第三王女様がご入学されるらしいですわ~」
「まぁ、わたくし今年入学でよかったですわ~」
「ほんとうですわ~」
「とても凛々しいお方だと聞いていますわ~」
「ティータイムにしますの~」
「久しぶりに平民の方も推薦を貰ったと聞きましたわ~」
「平民の方と会うのは初めてですの~」
「私はあったことありますのよ~」
「今年の魔法学校は荒れそうね‥‥‥」
▲▲▲
こんにちは、アオイユウヒです。
次のお話から魔法学校に入っていきますがその前に…。
高校の授業が再開されることになりましたので、この先更新速度が遅れるであろうことを報告させていただきます。
これでも私、受験生でして‥‥‥。
誠に申し訳ありません。
可能な限りの速さで更新を続けていきますので、これからも吸血姫と少女をどうぞよろしくお願いします。
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