彼女の友人たちと放課後



 学校に着いてハル兄と別れた後、私は自分の教室へ向かう。


 中学からの仲のいい友達もいるし楽しみ!

 早く友達いっぱい作りたいなー。


 私は教室の扉を開ける。

 教室を見渡すと、既にグループらしきものができていた。おそらく同じ中学の人と固まっているのだろう。

 私も友達を探す。

 教室の真ん中で談笑している二人を見つける。


「おはよー!」


 私はそこへ行き、声をかける。


「あ、来た来た。おはよー、桜ちゃん」


 私の言葉に、キレイな黒髪を腰まで伸ばした、優しげな表情の女の子が答える。


「風夏ちゃん久しぶりー!」


 その女の子は鈴原風夏すずはらふうか。私の昔からの大の親友だ。


 ラッキーなことに私は風夏ちゃんの後ろの席。

 私は席につく。


 私が座るともう一人──高坂光希こうさかみつきちゃんも話しかけてくる。

 光希ちゃんは背が高くて大人っぽい美人さんだ。


「おはよ、桜。同じクラスで良かったね」


「おはよー、ホントに良かったよー! 頑張って勉強したもんね!」


 この学校はなかなかの進学校。みんなで同じ学校に入るために頑張って勉強したのだ。


 思い出されるあの受験期……。大変だった……。

 結果受けたメンバーは全員合格! 残念ながら別のクラスになっちゃった子もいるけど、無事受かって良かった良かった。


「んへへー! 風夏ちゃんの後ろの席なんて嬉しいよ!」


 私が風夏ちゃんの方へ身を乗り出すと、風夏ちゃんは私の頭を撫でる。


「よしよし。私も嬉しいよー。光希ちゃんとは離れちゃったけど……」


 そう言われ、私が光希ちゃんの方を見ると、光希ちゃんは教室の端の席を指さして言った。


「私はあそこ。ちょっと遠いね。これ何順なんだろう? 見たところあいうえお順とかでもなさそうだし」


 むむむ。確かに遠い。授業中に手紙とか回したかったのに……。

 ていうか確かに何順なんだろう? 風夏ちゃんは「鈴原」で、私は「深山みやま」だし、あいうえお順ではないっぽい……。

 ……んー、分かんないや。


 私が悩んでると光希ちゃんが言った。


「早く席替えしたいねー。どうやって決めるんだろうね? くじとか?」


 あー、そっか。席替えあるよね。それだと風夏ちゃんと離れちゃうかもじゃん! やだなぁ。でも光希ちゃんと近くなれるかもだし。

 光希ちゃんが近くなって、このままの席でいいのに。


「んにゃー! 風夏ちゃんと離れたくないけど光希ちゃんとは近くなりたい! どうすれば!」


 私が叫んでいると、先生が来た。

 HR《ホームルーム》が始まるらしい。

 早いなー。


「もう時間かー。光希ちゃんまた後で」


「うん、また後で」


 私が光希ちゃんに言うと、光希ちゃんは名残惜しそうに自分の席へ戻ってしまった。


 私は風夏ちゃんに話しかける。一年の初めには言うべき言葉。一月だけじゃなくて四月も言うべきだよね。


「風夏ちゃん、今年もよろしくね!」


 私の言葉に風夏ちゃんは応える。


「こちらこそ、よろしくね~」


 そう言うと風夏ちゃんは前を向いて背筋を伸ばした。



  ***



 授業が全部終わって放課後。

 私は情報収集をしていた。

 何の情報かと言うと、まあハル兄の好きな人の、だ。

 ハル兄の好きな人が誰だか分からないけど、二年の先輩で評判の良い人と美人な人だけでも把握しておこうと思った。


 それに、風夏ちゃんはバスケ部の練習見学行っちゃったし、光希ちゃんは用があるって先に帰っちゃうし。やることがなかったから。


 ホントは二人ともう少し話すつもりでハル兄にメッセージ送ったのに、二人ともいないなんて……。


 なので、せっかくだから情報収集でもしてみようという訳です!



 ……と、いうことで、私は今二年の廊下にいる。残ってる先輩に聞いてみるのが手っ取り早いと思ったから。


 確かハル兄は八組。一組から聞いて八組まで行ったらそのまま帰ろう。


 そう決めて、私はまず一組のドアからノックする。





 ──結果、情報はそれなりに集まったと思う。


 ハル兄はたしか、一生懸命、って言ってたと思うし、結構絞れそう。

 でも、さっき気づいたことがある。これ、二年の先輩だけが候補じゃないじゃん! 三年生かもしれないし、他校かもしれないじゃん! ってこと。


 私は自分の頭の悪さが恐ろしいよ……。


 まあ今日は二年の分聞けただけでも良しとしましょう。

 とりあえず家帰ったらノートかなんかにまとめよーっと。


 そんなことを考えながら歩いていると、八組の前についた。


 ハル兄待たせちゃったなー。


 ドアが既に開いていたので、教室を覗いた。

 と、そこにはハル兄と、知らない女の人が楽しそうに話している姿があった。


 もしかしてあの人がハル兄の好きな人……? あんなに仲良さげで……。

 羨ましい。私もハル兄と……。

 あの人とハル兄が話してるのは、なんだろ………………嫌だ。


「ハル兄!」


 気づいたら声をかけていた。少し怒ったような言い方になってしまったかもしれない。

 でも、ハル兄が女の人と仲良さげに話しているのは……なんか、こう……嫌だ。


 ハル兄は私に気づくとカバンを持って立ち上がる。

 そしてその女の人と、気づかなかった……男の人もいた。

 その二人に声をかけてこちらに来る。


「お待たせー。帰るか」


 ハル兄は私に言う。


 ハル兄はもっとあの人と話していたかったんじゃないかな? 私、邪魔だったんじゃないかな? あんなに楽しそうで、やっぱりハル兄には好きになってもらえないかな?


 私の頭にネガティブな思考が広がっていく。


「……うん、帰ろっか」


 少し声が暗くなっていたのか、私の言葉にハル兄が優しく返す。


「元気ないけどどうかしたか?」


 ……! ああ、ダメだダメだ。ネガティブになんかなっちゃダメ。ポジティブに! 笑顔で!


「んーん! 何でもないよ! ほら、行こ!」


 私はできるだけの笑顔を作った。

 でも、すぐ壊れてしまいそうで、顔を見られたくなくて、私はハル兄の先を行った。

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彼と彼女は好きあっている。 とうか @IAk

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