第3話
side タクト
(だが、どうする?身体能力だけではあいつは倒せない。何か他に手立てはないのか?想いだけでは救えない。魔物を倒す力が、皆を護る力が力が欲しい!!)
強く想った時だった。
ドクンっ!
【見ていられないな。しょうがない。力を貸してやる。ここでくだばられても困るからな】
なんだ?頭が、頭が痛い!それに頭の中から声が聞こえる。その声が聞こえてから、意識が朦朧としてきた……ダメだ……こんなところで寝ては、魔物に……
…………………これは……………………
頭に直接声が聞こえてからは、意識が朦朧としていた。
聞いたことがない、声が頭に響いている。
【おい】
(え?)
【おい。お前俺の声が聞こえているよな?】
謎の声が俺に語りかけてくる。
(なんだ?どこから聞こえてるんだ?)
【お前の頭に語りかけてんだよ。ちなみにお前にしか声は聞こえていない。後ろの姫様にも聞こえてないから安心しな】
(そんな心配はどうでもいいよ!)
【まぁ、いい。そのまま聞け。今状況はかなりヤバイからな。
カイザーベアなんざ、本来こんな所に出る魔物じゃねえ。黒幕がいそうだが……まぁ今はいい。
異世界に来て、魔法もまともに使えないお前じゃまず相手にならねぇ。このままだと、お前もそこの姫さんも殺されるだろう】
(そんなこと分かってるよ。身体能力強化してもらっても俺にはどうにもならなかったんだ。こんな魔物が相手では魔法でも使えないと。それもあの巨体をぶっ飛ばせるぐらい強力な)
【力が欲しいか?】
(え?)
【だから、力が欲しいかって聞いてんだよその強力な魔法の使い方を教えてやってもいい】
(そりゃ、この状況を何とかできるなら力が欲しい)
【そしたら契約だ。俺はある目的がある。
お前には邪神を倒す目的があるのは知っている。
俺も邪神の野郎には用があってな。その為にはお前に死んでもらっては困る】
(目的は一緒って事か……分かった契約しよう)
【まずは、魔法の感覚を掴んでもらう。体は一旦俺に預けろ。お前は見ていろ。魔法がどんな感じかまずは掴んでもらう】
承諾すると、目線は同じだが、意識は体の後ろかろ自分を見ている感じに変わる。
【お前は、かなりの魔力を持っているからコツを掴めばすぐ使えるようになるだろう。いいか、魔法てのはな想像力が大事だ。
例えば右手にオーラを集中するイメージだと右手に魔力が集まる。こうやるとな】
すると、自分の右手に魔力が集まるのを感じる。
【イメージは掴めたか?次はお前がやってみろ。次は左手に集めてみろ】
今度は自分で左手にオーラが集まるイメージをした。自分でも左手に魔力を集めることができた。
(なるほど右手にイメージしたら右手に、左手にイメージしたら左手に、身体全体にとイメージしたら身体全体に纏わせることができるんだな)
【そう言うこった。そのまま右手で殴り付けると今までよりいいのをお見舞出来るだろうな。魔法は想像力が強ければ強い程威力が増すんだ。まぁ……先ずはあのデカ物をぶっ飛ばしてみるか。
お前、前世ではゲームをやっていただろう。とりあえずあの世界の魔法をイメージしてぶっぱなしてみな】
ゲームは好きだったからイメージはしやすいな。
(そういえば何でゲームやっていたの知ってるんだ?)
【まぁ……追々話してやる。まずは後だ】
まぁ……いい。
右手の魔力をカイザーベアに向けて某RPGの魔法をイメージしながら放出した。
ガカァン!!
(うわぁぁっ!)
想像していたより、音と反動が強い!
黒い雷が収束して、魔物に向かっていく。
デイン系の魔法をイメージした魔法は、カイザーベアに直撃し吹き飛ばした。
HPを確認したら、3割程削れていた。今の一撃でだ。
凄い威力だ……。
(……初めて魔法使ったけど、魔法てこんなに凄いもんなのか……)
【今の魔法は中の上ぐらいだな。まぁ初めてにしては上出来だろう。もっと慣れれば、威力もランクが高い魔法が使えるようになる。よし、今度は体全体に魔力を纏わせろ】
(こんな感じかな?)
先程でコツを掴んだのか、すんなりと体全体に魔力を纏うことが出来た。
【覚えが早いな。お前はセンスがいい。教える側としては楽できていいな。
次は手に持っているロングソードに魔力を纏わせた状態で攻撃してみろ。イメージは同じだ】
ブウン
そのまま、魔力を纏わせた状態でカイザーベアに走り出す。
(うわっなんだ先程とはスピードが段違いだ)
「うおおおおーー」
カイザーベアに斬りつける!
ザシュッ
「グオオオオっ」
カイザーベアは反応が出来ずに、右腕を切り飛ばされた。
(同じ武器なのにこんなにも変わるものなのか……)
改めて魔法の凄さに気付く。
続いて左腕を切り落とす。
【どうだ?魔法の凄さが分かったか?
魔法使いにも色々種類がある。
お前がさっき使った雷系や炎、氷等様々な属性魔法を極めて主に後方からぶっぱなす砲台タイプ。
剣術や格闘技も鍛えて、接近戦も魔法もぶっぱなす魔法剣士タイプ。高い身体能力も要求されるから、難易度は難しいが、お前は身体能力も魔力もハイレベルだから魔法剣士タイプを極めろ】
魔法使いもタイプが様々あるんだな。
魔法剣士か、色々出来るのはこの世界では有利だよな。
【とりあえずはこんなところか。そろそろとどめをさしてやるか】
一応ステータス表示でカイザーベアの状態を確認する。
HPは残り僅かまで削られている。
あと一撃魔法を放てば勝てそうだ。
【最後は授業の仕上げに俺が魔法を見せてやる。体を借りるぞ】
また体を一時的に預けた。
体全体に魔力を纏うのを感じる。さっき自分でやった状態よりも濃密で強力な濃い魔力だと分かった。
そういえば、ステータス表示を解除していないのに気付く。
自分の、今は体を預けているから若干違うかもしれないが、現在の状態を見てみた。
……え?……
ユーリ・ライゼ・トランスヴァール
大魔王
レベル99
スキル 特大魔力操作、近接戦闘、ステータス表示、封印魔法、ほぼ全ての魔法行使
トランスヴァール?魔王??レベル99!?
一度にたくさんの情報が分かり、混乱しそうになる。
【よし派手なのをいくぜ!】
ユーリの声が聴こえ、意識を戻した。
強力な魔力が収束していく。
同時に大気がビリビリと揺れている。
周りの木々や草もバサバサと揺らいでいる。空を流れる雲も速くなった。
【ハアアアアアアア!ヘルエクスプロージョン!!】
ドガァァァァァァァァァァァァっっ
カイザーベアの周囲で大爆発が起きる。
爆発の余波で立っていられない程の突風が巻き起こり、吹き飛ばされそうになった。
「きゃああああ!」
後ろでアルフィン王女が悲鳴をあげる。
何とか吹き飛ばされないように、木にしがみついていた。
爆発は何秒だろうか次第に収まっていく。
そして、カイザーベアが立っていた所には肉片すら残っていなかった。
(なんて魔法だ……)
【ま、こんなもんだな。お前も魔法を極めればこれぐらい出来るようになる】
とりあえず、危機を脱っせて良かった。
魔法が使えなかったら危ない所だった。
俺一人ではけっして勝つことは出来なかった。
そして、状況が状況なだけに聞きたくても、聞けなかったことを聞いてみた。
(ありがとう。何とかなったよ。そういえば結局俺に魔法教えてくれたあんたは何者なんだ?何故俺の頭に直接語りかけてきたんだ?)
【俺か?……俺はトランスヴァール皇国初代国王。ユーリ・ライゼ・トランスヴァールの魂だ。
今お前の心臓に俺の魂がある状態だ。女神が俺とお前を繋げた。何故魂だけかは、邪神の野郎の仕業だ。だから奴に用がある】
この国の初代国王?
その魂?
女神が、ユーリと出会わせた?
(初代国王なのも驚きだけど、何で魂が存在してるんだ?何で俺にだけ声が聞こえるんだ?)
【この世界では、誰しも称号を持って生まれてくる。
そしてこの国、この世界では、最強の魔法使いには魔王の称号が与えられる。俺は初代国王だったが同時に最強の魔法使いでもあった。
だから魔王とも呼ばれていた。俺の後に魔王の称号が与えられることはなかったが。それとさっきの質問だが……】
ユーリが一旦言葉を止め、また語り出した。
【タクトお前は魔王の称号を持っている。まだ、駆け出し魔王というところだが、もちろん魔王だからと今すぐ最強になれる訳ではない。魔法の修行は必要だ。
だが、魔王の素質を持って生まれてくるのは今までいなかった。そんな素質を持っているから女神が俺とお前を繋げたんだろうな】
俺が魔王の素質を?
女神はそんなギフトをくれていたのか……。
そして、カイザーベアを倒した事でまたレベルが上がった。
タクト
駆け出し魔王
レベル26
スキル 魔力操作、近接戦闘、ステータス表示、経験値ブースト
魔王の称号が表示される様になったか。
色々な事が起きて、分からないことだらけだけど何とかなって良かった……。
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