第1話


 転生を承諾した俺は、ギフトを貰らい女神に異世界に転送してもらうと広い草原の道端に立っていた。



  ここが異世界かな?

 ぐるりと周りを見渡してここが何処か確認してみる。

 空も青く、風も心地良いし木や草も生えてる。遠くを見ると森も確認出来た。見た感じ地球と変わんないな。


 転生したけど空気もなく、マグマの中や、極寒でしたなんて事にならなくてホッとする。まぁもしそんな世界なら女神が事前に教えてくれるとは思うが。



  これからの行動として、まずアルフィン王女と合流してこの世界の事、状況を聞きたいな。邪神とやらも何処にいるのか分からないし。

 俺自身もギフト貰ったけど、使い方とゆうか戦い方を学ばないといけないだろう。



 とりあえず、情報収集がてら周辺を探索してみるか。

 方角も分からないけど、道が続いてるからそちらに歩いてみることにする。女神いわく、アルフィン王女の近くに送ってくれたはずだけど目視では確認できない。



 暫く歩いてみると、何かが走ってくる音が聞こえた。


 人の足音って感じではない。それも1つだけではなかった。



 目の前に三匹の魔物?が現れた


 あれは……トカゲか? 二本足で立ってるし……右手に剣を持っている。体躯も2mぐらいあるな。

 もしかして、あれが女神が言ってた魔物ってやつか?


 ステータス表示を使ったら分かるのかな。


 でも使い方分からない……大体こういう時って漫画とかだと念じてみると出来たりするよな。試しに頭の中で念じてみると魔物のステータスが表示された。



 バトルリザード


 下級魔物


 レベル3



 レベルは数字が高ければ高い程、強さが上がりステータスも高くなるみたいだな。



「そういえば俺のはどうなんだ?」



 今度は自分のステータスを確認してみた。



 タクト


 ???


 レベル1



「???の部分は見れないな後で分かるのか?」



 まぁ、とにかく。

 ゲームとかアニメでは魔物は普通に出てきたけど、こうして

 目の前にすると本当に異世界に来たんだなぁと呑気に考えていると、魔物の一匹が襲ってくる。

 右手に持っていたサーベルを振り下ろしてきた。



「おっと!」



 魔物の攻撃を避ける。それほど魔物の動きは速くはない。

 違うな……俺の動きが速くなったんだ。身体能力強化してもらっていたんだった。早速ギフトが役にたって良かった。



 武器はないから素手で戦うしかないか。

 争いは好きではないのだが、前世ではカツアゲされてる人を助けたり、リンチされてる人助けたり、報復で集団突撃かましてくる奴等ボコってたらケンカ強くなってしまった。

 人助けも力無いとできないよね。うん。



 スッと近づき、右ジャブで殴り、続いて左のハイキックを顔面に叩きつけた。


 魔物は吹き飛んでいった。


 ステータスを確認すると、HPが0になり魔物が光の粒子になって消えていく。

 思いのほかそこまで強くない。

 これなら何とかなるか。



「よしっ先ずは一匹」



 今度は、二匹同時に突っ込んできた。後ろにバックステップして一旦距離を取る。

 助走を取り、今度は本気で走って魔物に近付きすれ違い様に攻撃を繰り出した。

 身体能力が上がったことでただの打撃も有効みたいだ。

 魔物にそれぞれ3発攻撃を当て、魔物がまた光の粒子に変わる。



「ふぅ」



 何とかなったな。たまたま弱い魔物だったのかは分からないが、この異世界魔物相手でも戦える事がわかった。



 ん?


 何か某ゲームで聞いたことがある効果音がなったな……。


 体も戦った後なのに、疲れとか全然感じない軽くなった気がする。


 もしかして、レベルが上がったのか?


 ステータスを見てみると。お、レベルが3になった。



 なるほど。ゲームとかと同じ設定なら魔物を倒して経験値稼いでレベルを上げていくのを繰り返せば強くなれる。



 どのみち邪神を倒さないといけないなら、強くなるに越した事はない。

 レベル上げがてら王女を探してみるか。

 そう考えをまとめながら、更に道を歩いていく。



 道中何度か魔物に襲われながら、返り討ちにしてレベルが8まで上がった頃。




 看板が見えてきた。



 トランスヴァール?この先って書いてあるな。


 そういえば、普通に文字を読めている。

 異世界だけど、言語は同じなのかな?

 まぁ……それならその方がいい。一から違う言語覚えたくないし。

 街か何かなら、そちらに行けば人もいるだろう。

 この世界のことや、アルフィン王女のこと何か聞けるかもしれない。



 看板に従い、歩いていくと、道の先の空に赤色の煙が立ち上るのが見えた。

 何の煙だろうと走り出すと戦闘中らしき音が聞こえてきた。

 音の方に向かうと。



 大きい熊のような生き物が、今まさに女の人を襲おうとしていた。

 女性の周りでは、鎧を着た人が何人も倒れていた。おそらく、女性の護衛の人たちかもしれない。

 このままでは、女性が危ない。



 ステータスオープン


 熊の様な魔物のステータスを確認した。



 カイザーベア


 上級魔物


 魔物レベル36



 え?



「カイザーベア……レベル36!?」



 何だこのレベルは……今まで相手にしてたの、レベル3とか6ぐらいのやつだぞ……。



「やばい……。いくらレベル上がったところで、こんなの倒せない。こちらが返り討ちにされて終わりだ。どうする……」



「ウウッ」



 倒れていた騎士の人が。まだ息があるみたいだ。


「大丈夫ですか!」


 その騎士の元へ向かう。


「グッ……あなたは……旅人の方ですか…お願いがございます。どうか……どうかアルフィン王女を助けてください……我々の力ではアルフィン様を護ることができず……」



 騎士の人から助けを求められる。そうかあの女の子がアルフィン王女か。



  今にも熊が王女の方へ歩きだそうとしていた。

 事態は一刻を争う。早く何とかしなくてはアルフィン王女が。



「分かりました。出来るだけの事はします」



「……ありがとうございます……どうか姫様を……ウグッ……」



 騎士の人が動かなくなった。亡くなったのだろう。



「託されたからな。やってみせる!」



 注意を引き付けて熊をアルフィン王女から引き剥がせればと道端の大きめな石を魔物に投げつけた。



「グルっ」


 上手く、熊の顔面に当たり注意をこちらに引き付けられた様だ。熊がこちらに歩きだす。


「さて、これからどうするか。さっきまで相手にしていた魔物とは別格だろう……勝てる気がしない……だけど、何とかしないと……」



 何か武器になるものはと、騎士の人が使用していたと思われる


 ロングソードを借りる。



「すいませんちょっと借ります。剣なんか使ったことないけど、丸腰よりマシだろう。どのみちピンチなのは変わらない。いよいよヤバかったら王女と逃げるしかない」



 勝てないかもしれないが、逃げ出すことは出来るかもしれない。



 剣を構えて、熊に駆け出す。



「ハアアアアアアアッ!」



 勢いをつけ熊に上段から切り下ろす。

 ほぼ避けられたが、かすり傷を追わせられた。

 叩きつけた感触は硬い。さっきまで戦ってたのはやっぱり雑魚だったんだな。だけど、少しダメージを与えられた様だ。


 HPバーが少し削れている。

 レベル差はあるけど、俺自身のステータスは意外と高いのか全く効かない訳ではないみたいだ。そして、二度三度と熊に切りつける。


 熊の腕と胴体にダメージが入る。



「よし!このまま続ければ!」



 そう思い、次の攻撃に移ろうした時。



 熊に異変が。

 熊が光だしたのだ。



「なんだ?熊が光だしたぞ。」



「気をつけてください! その魔物は、カイザーベアは進化することが出来ます! 進化すると、傷も治りレベルも上がります。」



 進化?傷も治っちゃうの?



「マジ?」


「マジです‼️」



 そのようなやり取りをしていると、熊を包んでいた光が消えた。



「……何か三倍ぐらいでかくなってんだけど。しかもめっちゃ激おこみたいだし……」



 ステータスを見て後悔した……。



「カイザーベア。魔物レベル40……HPも上がってる……」



 5もレベル上がったよ……今のでギリギリだったのに。



「グルル、ガオオオオオオオ!」



 熊が叫びだすと同時に、こちらに駆け出した。


 巨体の割りにかなりの速度で迫ってくる。

 慌てて剣を構える。

 魔物が右手を振り下ろした。



  ザシュ!


 俺の左腕を掠めた。



「クッ……さっきより動きが早い!」



 魔物が連続で攻撃してきた



「クッ……パワーもけた違いだ」



 ガンっキンっガカンっ。



 何とか剣で魔物の攻撃を弾くが、一撃一撃が重い。

 長くは耐えられないかもしれない。

 防ぎ切れなかったダメージも徐々に蓄積されていく。



「腕が痺れてきた!ヤバい!」



 ガンガンっ



「しまった!剣を弾き飛ばされた!」



 手に持っていたロングソードを弾き飛ばされる。

 このままだとやられると、バックステップで逃げようとするが間に合わなかった。



 ブオンっ


 魔物の攻撃をもろに喰らう。


 ザシュ!


「ぐあぁぁぁっ!」


  右胸を抉られそのまま吹き飛ばされる。

 胸からは血が吹き出し、痛みの為起き上がることができない。HPもかなり削られていた。バー表示の色も赤色に変わっている。



「大丈夫ですか!!」


 アルフィン王女が駆けてくる。


「傷は! 酷い!! ………けどまだ間に合う!」



 アルフィン王女は両手を俺に向けた。

 ポワァっと淡い光が俺を包みこんだ。

 同時に、体中の傷が治っていきHPも回復していく。



「……傷が治っていく……これは……」



「これは癒しの魔法です。傷を治しています。ごめんなさい。巻き込んでしまい。貴方だけでも逃げてください私がカイザーベアを引き付けます」



 アルフィン王女が謝る。俺にだけ逃げてくれと言う。


「自分だけ逃げるなんてそんな事は出来ない」


「ですが! このままでは二人ともやられてしまいます! 元々は私を狙っていた魔物です。貴方まで一緒に死ぬ必要はありません。助けてくださりありがとうございます」



 確かに、普通に逃げてもカイザーベアからは逃げられそうにない。今の俺の強さでは、どうにもならない魔物だ。


 だけど。

 せっかく転生したのに、このままここで終わるのか?

 人1人も助けられないまま。俺は何の為に転生した?

 こんな所でくたばる為か?

 いや、違う! 冗談じゃない! こんな所で終わってたまるか!

 ここで、くたばったら前の世界の家族や友人が!


 だけど、どうする?……今の俺ではあいつは倒せない。

 何か他に手立てはないのか?想いだけでは救えない。

 魔物を倒す力が、皆を護る力が力が欲しい!!


 強く想った時だった


 ドクンっ!!!


【見ていられないな。しょうがない。力を貸してやる。ここでくだばられても、困るからな】



 なんだ?頭が、頭が痛い。それに頭の中から声が聞こえる。

 その声が聞こえてから、意識が朦朧としてきた…ダメだ…こんなところで寝ては、魔物に……。


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