第31話

「……開けていいのか?」


 優がリーナに対してそう聞いた。

 昼休み、僕たちはもはや定位置となりつつある食堂の席に座っていた。優の前には大きなお弁当。リーナが作ってきたものだ。


「もちろんです。水野くんのために作ってきたんですから」


 リーナの言葉に優が赤くなる。いくら優でも恥ずかしいものは恥ずかしいらしい。優は何も言わずに、お弁当の蓋をあける。


「おぉ!」


 優がそう言って喜びを露わにする。お弁当の中身が気に入ったようだ。

 どれどれ……おぉ、確かに優が好きそうなお弁当だ。唐揚げ、ウインナーなどなど肉系がたくさん入っていた。


「あんな感じの方がいいかな……?」


 僕がじっと優のお弁当を見ていたからか、ひかりが不安そうにそう聞いてきた。

 ちなみに、今日もひかりはお弁当を作ってきてくれている。ハンバーグやらブロッコリーやらが綺麗に詰められたお弁当はプロも顔負けだ。


「いや、僕はこっちの方がいいよ」

「……本当? 男子はあんな感じの方が好きなんじゃ……」

「まぁ、部活をしてる人はそうかもしれないけどね……僕はやってないから」


 一応朝に走っているが、部活をしている人にとっては誤差のような範囲でしかないだろう。


「ひかりのお弁当は、美味しいからね」


 そう言うと、ひかりは照れたように下を向いた。


「……ありがと」


 ギリギリ聞き取れるくらいの声で光は言う。


「こっちこそありがとうね」


 僕は少し赤くなっているひかりをじっと見る。改めて見るとやはり可愛い。なんでこんな可愛い子が僕なんかにお弁当を作ってくれるのだろうかと疑問に思う。


 一瞬、僕のことをひかりは好きなんじゃという期待とも言えるものが頭に浮かんだが、ありえないだろう。隣の席になったことによる一時期の夢なのかもしれない、と思う。


「……本当に隣の席になれてよかったよ」


 思わずそう漏らす。


「……私も」


 あぁ。そんなことを言われたらまた勘違いしてしまいそうだ。僕は無駄な期待を頭から追い出すために、一生懸命お弁当を食べる優に話しかける。


「今週の日曜、この四人で遊びに行かないか?」


 僕がそう言うと、それまでじっと優を見ていたリーナがちらっとこちらを見た。僕がリーナとの約束を果たそうとしていることに気づいたんだろう。


「いいz……いや……」


 優は一度「いいぜ」と言おうとして何かを思い出し苦い顔をした。


「悪いな……ちょっと無理だわ……」

「……ん? 優、予定があるんだ? 部活は土曜だけなんだよね?」


 断られるとは予想していなかったので少し反応が遅れた。


「じゃあ、来週の日曜とかは? 私一緒に遊びたいな……」


 そこにすかさずひかりがフォローを入れてくれる。ひかりの言葉に優は何故か苦い顔をする。そして、「わかった」と頷いた。少し優の反応が気にかかったが、一応遊ぶ約束は取り付けられたのでいいだろう……

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