第30話
「まさかひかりと一緒に家に帰る日がくるなんてね……」
月野くんは感慨深げにそう言った。私は月野くんと二人で学校からの帰り道を歩いていた。
リーナちゃんに二人で謝って、帰ろうとすると、リーナちゃんは留学関係の書類を提出しなければならないと職員室に行ってしまった。そのため、二人で帰っているのだ。
「本当に家、こっちでいいの?」
私はかげくんにそう聞く。
「うん。そこのコンビニを左に曲がったところが家だから」
「えっ! 私はコンビニを右に曲がってすぐ」
「え?」
二人で顔を見合わせる。
「こんなに家近かったんだ……」
私はそう呟く。
「でも、今まで一度も家の近くで会ったことないし……」
「もしかしたら、私、いつもはスーパーに寄ってから家に帰ってるからかも……」
スーパーは少し違う方向にあるのでそこに寄って帰ると確かにかげくんの家の前は通らない。
「確かに僕は週末にまとめてスーパーに行ってるけど……いや、でも朝とか……」
「確かに……」
謎だ。本当にどうして今まで会わなかったのか。神様のイタズラなんだろうか?
「……本当に左に曲がってすぐがかげくんの家?」
「……信じられないかもしれないけど……本当」
お互いにまた目を合わせる。
「……なんなら、家くる?」
「ふぇ⁉︎」
変な声が出た。急に家に来るかとか聞かれるとは流石に思ってなかった。何を隠そう、私は今まで親戚以外で男の人の家には行ったことがないのだ。
「あ、やっぱなしで……美夜がびっくりするかもしれないから」
私がびっくりしている間にかげくんの家に行くと言う話は白紙に戻ったようだ。少し残念なのはないしょだ。
「美夜って妹さん?」
「うん。結構可愛いよ」
「……ふーん。美夜ちゃんね……何歳?」
可愛いというところに私は反応してじっとかげくんを見る。デレデレしてるような雰囲気はなさそうだ。シスコンではないっぽい。まぁ、一瞬だけの判断なのでなんとも微妙だが……
「中学3年生」
「へぇ〜……思ったより歳近いんだね」
「そうかな?」
首をかげくんは傾げるが、私はまだ見ぬ敵の可能性に備えて布石を打っておくことにする。
「また、妹さんにも会って話してみたいな」
「そうしてくれるとありがたいんだけど……人見知りだからな……」
かげくんは少し考えこむ。
「わかった。また、会えるようにしてみる」
よし。これで美夜ちゃんに探りを入れられる。
「じゃあ、また明日」
「また明日」
そんな話をしてる間にコンビニの前に来たので私たちはそれぞれの家へと帰るために、別れた。
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