第29話

「……ごめん」


 放課後、僕はリーナに謝った。内容はもちろん勝手にリーナが優を好きだということをひかりに話したということについてだ。


「……日野さんもワタシを応援してくださるということなら今回は許します」


 リーナは言葉を続けた。


「……でも、タダで許すわけではありません」

「僕にできることならなんでも言って」

「私も協力するよ」

「では……水野くんと遊ぶ機会をセッティングしてください」


 リーナはそう言ってじっとこちらを見た。目がすわっている。あまり顔に出さないだけで怒っているのかもしれない。


「もちろんそれくらいなら……」

「リーナちゃんと水野くんが二人で遊びに行けるようにすればいいんだよね?」

「いいえ……あなたたち二人もきてください。その……まだ二人というのは……」


 リーナが少し顔を赤くしている。


「わかった。四人で遊べるようにセッティングしておくよ」


 心なしかひかりも興奮して顔が赤い。


「うんうん! 楽しみ!」


 ひかりが言う。なんでリーナじゃなくてひかりの方が楽しみにしてるんだって話なんだけれどな……


「それで、場所はどこがいいとかある?」

「いえ、特に。普通どんな場所に遊びに行くのかもわからないので」


 まぁ、確かに遊ぶ場所とかもわからないだろうな。一応一昨日、この街を少しは案内したが、まだまだ案内していない場所の方が多いからな……


「わかった。それもこっちで考えておくよ」

「よろしくお願いします」

「そんなかしこまらなくてもな……秘密を1日で漏らしてしまった罪滅ぼしなんだし……」

「うんうん。リーナちゃんはドンと構えといてくれればいいんだよ! 後は私とかげくんに任せて!」


 ノリノリのひかりが言う。


「……はい。それで……月野くん……少しお耳を貸していただけますか?」

「ん? 何?」


 僕は少し腰を落としてリーナの口のあたりに耳がくるようにする。


「あの……日野さんには……私が水野くんを好きな理由は……」


 少し顔を赤らめてそう耳に囁いてくる。リーナが優のことを好きだと知っていても耳が幸せだ。


「あぁ、それは言ってないよ」


 僕もそう小さく返す。


 すると、リーナはホッと息をはいた。

 耳がくすぐったい。


 少し前を見るとひかりが不安そうな顔をしていた。


「……リーナちゃんって本当に水野くんが好きなんだよね? ……かげくんじゃなくて?」


 なんて言ってくる。


「もちろんです。月野くんは私にとっての魅力はありませんので」


 リーナはそう断定する。


 いや、流石にそこまではっきり言われると、僕もショックなんだけど……いや、リーナの魅力ってことは匂いか? なら、いいのか? 複雑だ。

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