第18話
「10分前か……まだ誰も来てないかもな……」
土曜日の10時前。僕は集合場所である駅の改札前にたどり着いた。
伊東さんもこの駅ならわかるということでここで集まることになったのだ。
誰もいないだろうと周りを見回すと目立つツンツン頭が見えた。
「かげ、遅いぞ。こういうときは一時間前行動だろ?」
「優が来るのが早すぎるんだろ」
一時間前行動というのも優が言うと冗談に聞こえない。もしかすると本当にそれくらい前に来ているかもしれない。
「それより、服装なんとかならないのか……?」
「今日は暑いからな」
「全く……僕もあまりおしゃれにくわしい訳じゃないが、さすがにそれはな……」
優はまだ五月が始まったばかりだというのにTシャツに短パンというスタイルだ。どこの野球少年だよ……高校生にはとてもみえない。
「いやー。俺もひかりちゃんとでかけるならと、おしゃれしようと思ったんだけどな……実用性をとってしまった。ていうか、Tシャツ短パン以外は洗濯に出しててなかった」
「……はぁ」
昔から優は根本的には変わっていない。優の適当さにさすがの僕もため息が出た。
ちなみに僕は、黒のスキニーに白いTシャツ、その上に青っぽいシャツを羽織っている。個人的には無難な格好だと思う。
僕が優に少しくらい苦言を言おうとすると、優が少し遠くを見る目になった。
「おっ、来たぞ」
優が見ている方向を向くと、そこにいた一人が手を振って走ってきた。
「お待たせ~!」
その後ろからゆったりと歩いて伊東さんが来る。
「お待たせしました」
二人で一緒に来たので、先に待ち合わせていたのかとも思ったが、どうやら偶然のようだ。
伊東さんは、薄いピンクのロングスカートにあわせて白いTシャツ。その上に、茶色のCPOジャケットを羽織っている。The・美人って感じだ。
それにたいして、日野さんは、黄色いワンピース。可愛らしさと共に日野さんの明るい性格にもマッチして見た目を華やかな感じにしている。
僕は、こんな二人と週末を過ごせるとか役得だな、と思う。
「……どうかな?」
僕がじっと見ていたからか、日野さんがこっちを見て訪ねてきた。
「二人とも可愛いよ」
間を開けずに返す。こういうのは、思ったことを素直に言っておいた方がいいとよく聞くのでちゃんと伝えておく。
すると、日野さんはみるみる赤くなり、伊東さんの後ろに隠れた。それに対し、伊東さんは「ありがとうございます」と言って軽く会釈する。反応が全く違うのが少し面白い。
僕は伊東さんに「思ったことを言っただけだから」と言いながら、日野さんが恥ずかしがる姿の可愛さに思わず頬を緩める。
っと、こんな風に日野さんに絡んでいたらまた優にジト目で見られる……と思って優の方を見ると、呆けた顔で立っていた。二人に見とれているのだろう。
今回ばかりはそうなるのも仕方ないか、と思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます