第14話
教室がざわつく。
「……可愛い」
思わず私もそう言った。
それくらい、今教室に入ってきた彼女は可愛かったのだ。
さらりとした長い金髪。
青色の瞳。
そして、なんと言っても足が長い。
スカートから出ているすらっとした足はモデルのようだった。
なんとなく、私はチラッと横に座っている月野くんを見る。
こんな可愛い子が近くにいたら月野くんが私のことをかまってくれないようになるのではと不安になったのだ。
……て、なんでそんなこと心配してるんだろう。
自分に疑問を投げかけるが、本当はなんとなくわかってる。
でも認めたくない。
まだ、初めて話して3日しかたってないのに……
「ずるいなぁ」
私はもう一度月野くんをチラリと見て呟いた。
月野くんもこっちを見て「どうしたの?」って感じで小さく首を傾げてくる。
……こういう仕草もズルいんだ。
男の子のくせに、時々私もドキッとしてしまう可愛い一面を見せてくる。
私は目を合わせるのに耐えれず、目をそらす。
私が一人でやりきれない思いを抱えている間に木野先生が留学生の子に自己紹介を促していた。
「伊東・ヴィタリーイェヴナ・エヴァンジェリーナです。ロシアから留学生として来ました。リーナと呼んでください」
彼女……伊東さんは、流ちょうな日本語でそう言ってぺこりとお辞儀をした。
「伊東さんは、本当なら今日1日は校内見学という形で学校を見てもらって、来週から参加してもらう予定だったんだけど、学校の都合で今日から授業にも加わってもらうことになった。みんなも、仲良くな」
木野先生が私たちを見回して言う。
そして、そのまま伊東さんの方を見たあと、月野くんの後ろの席を指差した。
「伊東さんは、あそこの席に座ってもらえるかな?」
「わかりました」
伊東さんが頷く。
「月野。席が近いから、伊東さんにいろいろと案内してやってくれよ」
木野先生が月野くんを見て言う。
月野くんも「へ?」と驚いた顔をしたが、頷いていた。
「じゃ、授業も頑張れよ」
そう言って木野先生は急いで教室から出ていった。
先生も一時間目に授業があるから焦っていたのかもしれない。
それと同時に伊東さんにたくさん人が集まる。
「ねぇ! リーナはなんで日本に留学しようと思ったの?」
「リーナ、日本語上手いね! 勉強したの?」
と質問タイムが始まった。
それに対して伊東さんは、
「祖父が日本人だから、日本で一度勉強したいと思って」
「祖父に教えてもらったの」
とか言って答えている。
伊東さん自身はは少し困った顔をしている。
でも、人気者だ。
「そういえば、月野くんは伊東さんのこと気にならないのかな?」と思って横を見ると、月野くんはいつも通り本を読んでいて少し安心した。
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