この可愛い留学生が僕を好きな訳がない
第13話
「ん? なんだこれ?」
朝、僕は教室に入ってすぐに感じた違和感に思わず首を傾げた。
すぐに違和感の正体はわかった。
何故か僕の席の後ろにもう一つ机が増えているのだ。
「……なんで、席が増えてるんだ?」
「留学生が来るんだろ」
僕の疑問に、当たり前だろという感じで一緒に教室に入ってきた優が答える。
「転校生じゃなくて?」
「……まぁ、こんな時期に来る転校生もいないだろ」
たしかに。
5月に転校してくるなら、4月から転校してきていそうなものだ。
「てか、こういう時は優ってはしゃいだりしないんだな?」
優ならはどんな人が来るか予想し始めたりしそうなものだが。
「……俺も少しは大人になったんだよ」
「……そうか」
今日の優はいつもと違ってなんだか元気がない。
何か嫌なことがあったのか?
そして、あることを思い出す。
「どう森配信中止になって残念だったな」
そう、昨日優に勧められたためどんなものかと『集まれ童貞の森』について調べたら、速報で「集まれ童貞の森、クレーム殺到につき配信中止」と載っていたのだ。
多分それが原因で優は元気がないんだろう。
「大丈夫。他にも面白いゲームはたくさんあるはずだ」
僕はそう言って自分の席に座った。
◆
「おはよ」
「おはよう」
僕は本から顔をあげて日野さんに挨拶を返す。
自分に声をかけてくれているということは流石にわかるようになった。
「席……一つ増えてるね」
日野さんがじっと見ている。
もちろん僕のことをじゃなくて僕の後ろの席を。
「うん。優の予想では留学生らしいよ」
「留学生? 転校生じゃなくって?」
僕と同じ疑問を持った日野さんに優の予想について伝える。
「ふーん。そっか……女の子かな……?」
日野さんが不安そうな顔をして言う。
日野さんでも仲良くできるか心配になったりするんだろうか?
「大丈夫。日野さんならすぐ友達になれるよ」
僕は思ったことをそのまま言う。
日野さんを嫌いになる人なんていないだろう。
「……そういうことじゃなくって……月野くんが仲良くなったら嫌だなって……」
日野さんが何かを呟いているが聞き取れない。
そのとき、前の扉から木野先生が入ってきた。
木野先生は頼れる僕らの担任で、国語教師だ。
面倒見がよく、生徒のこともよく見てくれている。
「一時間目の前に一人紹介したい子がいる」
木野先生は「入ってくれ」と廊下に向かって言う。
そして、木野先生に呼ばれて扉から入ってきたのは金髪ロングの女の子だった……
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