第12話

 やっぱり私の勘違いだったのかも……


 ベッドに寝転がりながらそう思う。

 月野くんは私を嫌いなわけではない気がしてきた。


 今日だって、食堂一緒に行ってくれたし、また、行ってくれるとも……

 しかも、頭なでなでしてくれたし……


 とか、考えてたら頭をなでられたときの感覚を思いだしてきた。


 顔が熱い。思わず顔を覆ってベッドを転げまわる。


「でも、あれは月野くんが寝ぼけてたからで……」


 壁に向かって思わず呟く。


 嫌われてないか不安だから、といっても月野くんのことばかり考えているような気がする。


 さすがに今日1日だけで好きになっちゃった……なんてことは……ない……


 頭をなでられたくらいで好きになったりは……しない……


 そばにあった、スヌ◯ピーのぬいぐるみを思いきり抱きしめる。





「もう! ひかりがかわいすぎる♡」


 そんなとき、急に下着姿のお姉ちゃんが飛び乗ってきた。


「ふぇ! ……やめてよ、お姉ちゃん!」


「可愛い過ぎるひかりが罪なんだよ♡」


 目が逝っている。


「もうっ!」


 そして、私は重要なことに気づく。


「……お姉ちゃん、いつからいたの?」


「へ? ひかりがなんか顔を赤くしてゴロゴロ転がってる時からだけど?」


「あんなの萌え死ぬっ♡」とか言ってるのはどうでもいい。


「……え、そこから⁉︎」


 恥ずかしくて顔がまた赤くなってくるのがわかる。


「……お姉ちゃんは、出てって!」


 私は、お姉ちゃんをなんとかベッドの上からどかし、扉のそとに押し出す。


 そして、えいっと鍵をかける。


「ひかり成分が足りないよ~……」とか「……お姉ちゃんを殺す気?」とか聞こえるが無視。


 あれを見られてたなんて、恥ずかしくて顔を会わせられない。


 そのとき、ピコンッとスマホが鳴る。

 私は、なんだろうと思いもう一度ベッドに座ってスマホを見る。


『月野 影から2件の新着メッセージがあります』と書いてある。


「そういえば、ライン返ってきてなかったんだ……」


 少し躊躇してからラインを開く。


 そして、


「やっぱり、私の勘違いだったみたい」


 とほっと呟いた。


『こちらこそよろしく』

『返信遅くなってごめん』

 

 メッセージは短い。

 でも、なんとなく落ち着く月野くんらしいメッセージだと思う。


『全然大丈夫!』

『私の方こそ、今日は食堂一緒に行ってくれてありがと!』


 返信をうっていると顔がにやけてきている気がする。


『また一緒にいこう』


 今回はすぐに返信が返ってきて、さらににやける。

 しかも、今日言ったことをちゃんと覚えてくれてるなんて……


 だから、そんなときに、十円玉を手にして「こんな鍵で私の愛は止めれない!」と言って入ってきた変人にあっけにとられる。


 しばらくして、この家の鍵が十円玉溝にさしてひねると開くくらいの性能しかないんだった、と思い出す。


 だが、鍵の性能がどうであれ、勝手に部屋に入ってくる姉は許せない。


 何せ、また私の緩みきった顔を見られたのだ。


「……今後一生私の部屋に入るの禁止!」


 そう言って、姉を扉のそとにつきとばす。

 流石に口調がきつくなってしまう。


 お姉ちゃんも、私が怒ったのが伝わったのか、今回は扉のそとで騒ぐこともなかった。


「でも、明日になったら普通に飛びついてくるんだろうな……」とため息をつく。

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