第10話
「じゃあ、私一緒に行って良い? 今日、お弁当作れなくって……」
ぼんやりと月野くんと水野くんの会話を聞いていた私は、気づいたらそう言っていた。
確かに昨日の夜、月野くんからラインが返ってこなかったから、不安でなかなか眠れず、今朝は寝坊してしまい、お弁当をつくれなかった。
そのため、食堂か購買で何か買おうと思っていたが……
何故か月野くんを見ているとふわふわしていつもの私と違う感じだ。
やっぱり、なでなでされたからだろうか……
とにかく、私は月野くんと食堂に行くことになった。
◆
「うーん……どれにしよう……」
かれこれ2、3分私は食券販売機の前で真剣に迷っていた。
食堂は思っていたよりもたくさんのメニューがあった。
そのため、なかなか決めきれない。
「カレー、ラーメン、丼系もたくさん……日替わり定食も気になる……」
「先に買っていい?」
月野くんがこっちを見て言う。
「あ、うん」
月野くんは、迷いのない手つきで天丼の食券を買う。
私が迷いまくっているせいで、月野くんを待たせてしまっているということに改めて気づく。
「ここの天丼って美味しい?」
「僕はよく食べるかな? 美味しいと思うよ」
「じゃあ、私もそうしよ……」
これ以上待たせては悪いと私も食券を買う。
するとすぐに「はい」と月野くんがお盆にお箸をのせてわたしてくれた。
ふたりでならんで食券をわたすと、ほとんど待たずに天丼が出てきた。
思ったより量が多い。
「こんなに食べれるかな……」
ちょっと不安だ。
月野くんの前の席に座る。
月野くんは、急に真剣な顔つきになり、手を合わせ、さつまいもの天ぷらをかじる。
私もなんとなく真似をして真剣な顔でさつまいもの天ぷらを食べてみる。
美味しい。
天ぷらはサクッとはしていないが、タレが染みていてこれはこれでいい。
月野くんがご飯を食べる。
私も真似をする。
月野くんが海老天を食べる。
私も。
という風に食べていくと、いつの間にかお皿はからになっていた。
大満足だ。
「どうだった?」
月野くんが聞いてくる。
「うん、美味しかった」
私は、素直にそう答える。
でも、一人できて食べるんじゃなく、月野くんと食べたから美味しいんじゃと何故か思う。
だから私は、
「これからも、時々来てもいいかな……なんて……」
と期待をこめて月野くんを見る。
「じゃあ、一緒に来る?」
「え、いいの!」
私は、目を見開いた。
期待はしていたが、本当に良いなんて……
「あ、でも、次からは優もいるけど……」
その言葉を聞いて、少しがっかりしたのはなんでなんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます