第9話

 昼休み。


 僕は時々購買でパンを買って食べる時もあるが、基本的に優と一緒に食堂でご飯を食べる。


「はいよ! これはサービスね!」


 毎日来ているおかげで、食堂のおばちゃんにも顔を覚えられてきた。

 今日は、天丼に海老天を一個追加してくれた。


「はい! お嬢ちゃんも!」


 いつも来る食堂。

 でも、いつもとは少し違う。


「こんなに食べれるかな……」


 日野さんがじっとお盆にのった天丼を見ている。


 そう、なぜか日野さんも一緒に来ているのだ。



 ◆



 あれは4時間目が終わり、昼休みが始まってすぐ。


「わりぃ。今日は野球部のミーティングがあるから食堂に行けねぇわ」


「そうか……」


 優が僕に言ってきた。

 じゃあ、購買で買うかな。と僕が考えていると、日野さんが、


「じゃあ、私一緒に行って良い? 今日、お弁当作れなくって……」


 とおずおずという感じで言ってきた。


「行ったことないからわからないことがあると思うし、月野くんが教えてくれたらな……なんて……」


「いいけど……」


 日野さんのファンに何か言われないか心配だ。


「……羨ましい……なんでかげだけ……」


 優がブツブツ言っている。

 だけど、すぐに首をブンブン振って、


「うし! そういうことなら、よかった! 二人で楽しんでこいよ!」


 と僕の背中をバシンと叩いて小走りで去っていった。


「じゃあ、行こうか」


 こうして、僕は日野さんと食堂に行くことになったのだ。



 ◆



「ここに座ろう」


「う、うん」


 空いている席を見つけた僕が席に座るとその前に日野さんもおずおずと座る。


 さっきから、周りの視線が集まってきている気がする。

 後で、ファンクラブからの制裁とかないよな?

 僕は楽に暮らしていきたいんだ。

 そういうめんどくさいことは勘弁してほしい。


「じゃあ、いただきます」


「いただきます」


 日野さんがこっちをちらっと見て僕と同じように手を合わせる。


 まず、僕はさつまいもの天ぷらにはしをのばす。

 日野さんもちらっとこっちを見て、同じようにさつまいもの天ぷらにかじりつく。


 次は、ご飯。

 タレがたっぷりかかったご飯は美味しいのだが、これが、〆になるのはよろしくない。

 しっかりと計算して口にかきこむ。


 日野さんも真似をして、ぱくりとご飯を食べる。


 その後も完全に僕と同じように日野さんも天丼を食べた。


「「ごちそうさまでした」」


 二人で手を合わせる。


「どうだった?」


「うん、美味しかった」


 僕が聞くと日野さんは満足そうに頷いた。

 そして、ちらっとこっちを見て、


「これからも、時々来ても良いかな……なんて」


 と言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る