第8話

 気づいたら僕は学校にいた。


 朝ごはんにパンを焼いて食べたことをぼんやりとは覚えているものの、そのあと、どうやって学校に来たのかはよく覚えていない。

 夢を見ていた気はするが……


 昨日、あの後、再びなでなでし続けたあと、美夜が「おにいちゃんと一緒に寝る」とか言ってベッドに潜り込んできた。


 流石に追い出そうとはしたが、美夜は頑として出て行かなかった。


 もう日付も変わっていたので、仕方なく一緒に寝ることにしたが、その後もひどかった。


 俺がやっと眠れそうだと思ったタイミングで、美夜が寝ぼけて「おにいちゃ〜ん」とか言って抱きついてきたり、急に俺を叩いてきたりして寝るどころではなかった。


 それが原因で俺は寝不足だ。

 めちゃくちゃ眠い。


 おそらく、いつも通り家まで俺を迎えにきた優が教室まで連れてきてくれたのだろう。


 ちなみに、優とは家が隣どうしで、小さい頃からよく遊んでいた。

 そのため、今でも仲良くしてくれている。


 優は変なことをよく言ったりするし、無駄にテンションは高いが、面倒見のいい良いやつだ。

 野球部に入っているため、帰宅部の僕とは帰りは一緒に帰ることはないが、朝は毎日一緒に来る。


 とにかく、お礼を言わなくてはと優を探して周りを見回す。


 そこで、横に日野さんがいることに気づく。

 そういえば、昨日ライン来てたような?

 返信するの忘れてたな……とか思いながら声をかける。


「おはよう」


「……おはよ」


 日野さんはちょっとびっくりした顔をして応えてくれた。

 そして、小さな声でこう付け加える。


「実はさっきも挨拶したんだけど……」


「あっ、そうなんだ。ごめん。実は起きてからの記憶がほとんどないんだ……寝ぼけて変なことをしてないと良いけど……」


 僕がそういうと、「べ、別に変なことなんか……」と言って、日野さんがぷいっと違う方向を向く。


 僕が何かしたみたいな雰囲気だ……


「え、本当に僕が何かした?」


「……なんでもない」


 そっけない。

 機嫌を損なうようなことをしたのか……?


「何したの? 嫌なことしたなら謝るけど……」


「嫌なんかじゃ……私は頭なでなでだけで落ちるような軽い女じゃ……でも、月野くんは私のことが嫌いなんじゃ……ごにょごにょ」


 よく聞き取れない。

 ちょっと日野さんの耳が赤いのが気になる。

 多分僕が何かしたんだろう。


「……えっと、なんかごめん」


「……いや、別に謝らなくても……」


 日野さんはそう言って太もものところで手をグーパーグーパーしている。


 なんか昨日とか、今まで優に聞かされてきた日野さんと雰囲気が違う気がする。


 何をしたのかは気になるが、許してもらえたんならいいだろう。

 何をしたかは後で優に聞けば多分教えてくれるだろうしね。

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