第2話

side 春宮紫苑

不味い

すごく不味い

何故って?

今日がコボルト退治の最終日だからだ

あれからゴブリンは見つかるが、コボルトがぜんぜん見つからない

そして、見つけたとしても逃げられる

…八方塞がりだ

どうしたものか…


「なぁ、そこの兄ちゃん。俺とパーティー組まねぇか?」


呼ばれたので振り返るとそこには

長い耳と美しい容姿をした一人の男エルフがいた


 △▼△


「エルフか。ここら辺では珍しいな」

「そうカイ?…ああ、でもソウかもな、ここら辺は人間族ばっカだからな」


この世界の大陸は二つある

天大陸と魔大陸の二つだ

形はユーラシア大陸とアフリカ大陸に似ている

僕が今いるラックルス都市国家はだいたいヨーロッパのバルカン半島らへんとするとエルフ達はここからさらに西のフランス、スペインあたりにある国に多く住んでいる

そして、エルフ達は確か、自分達の故郷からあまり離れないと本に書いてあった

だから珍しいと思ったのだ


「まあ、確かに老人達は偏屈共ばっかりダけどな。でも俺みたイナ奴は結構いると思うぜ?」

「そうなのか。ところで、なんで僕なんだ?エルフならここではより取り見取りだろうに」


エルフ族は人間族に比べ、魔素に対する親和性が高く、優秀な魔術師や魔術使いが多い

魔術関連で大成したは者は皆、エルフの血を引いているというデマが流れているくらいだ


「アンタ、コボルト討伐の依頼受けてんだろ?実はな、俺もコボルト討伐の依頼ヲ受けたんだけどな、なかなか見つからなインだよ。ギルドに相談したらパーティー組めって言われてアンタを紹介されたから声をカケたんだ」


…パーティーか、盲点だったな


「分かった。コチラとしても願ってもない話だ。喜んでパーティー組ませてもらうよ」

「よっしゃ!俺はベル。弓士だ。魔術もある程度使えるぜ。よロシくな」

「僕はシオン。一応、戦士かな?よろしく」


僕はベルとがっちりと握手した


 △▼△


「ところでベルの冒険者ランクはどれくらいなんだ?」

「冒険者ランク?確か…E+ダッたぞ」


なんと、僕と同じだったのか


「よくそんなランクでここまで来れたな……。もしかしてここら辺が故郷なのか?」

「いや、ここから西にあるエルフの国―シャーロット森林王国の出身だ。マア確かに俺もこコマで来れたのは奇跡だと思うよ。低ランクの依頼は安いかラな」


低ランク冒険者の仕事は主にバイトや町の手伝い、ゴブリンなどの下級の魔物や害獣退治、薬草採取などだ

これらの依頼は誰にでも出来るため安い。労力と報酬が釣り合っていないなんて結構ある話だ。特に町の手伝いなどは


「ホントによくここまで来れたな。一体どれ位かかったんだ?」

「半年くらいかナ。一応、俺の実家は結構裕福でさ、兄が家継ぐときに冒険者になるッて家出るとき結構金貰ってたんだよ。……まあここに来るまでにほとンド使っちまったがな」


なんと、裕福な家庭出身だったのか…

彼の話している感じからすると家族仲も良さそうだ

羨ましい


「そういうお前はどウナんだ?シオン?」

「どうもこうもないさ。とりあえずやることもなかったから冒険者になったって感じかな」


まあ、嘘なんだけどね

流石に馬鹿正直に全部言ったら不味いからな


 △▼△


門を出て、草原についた

互いに武器をいつでも使えるように注意しながら進む


「グギャギギ!」

「グゴガガ!」

「ガキュギギ!」


ゴブリンだ

棍棒を持っているくらいで特に他の装備はない

ただ、仲間を呼んだらしい

後ろの方からさらにやってくるだろう


「それジャア、数が増えると面倒だからさっさとやるか」

「そうだな。援護は任せるぞ」

「ああ!任せトきな!」


 △▼△


ゴブリンに向かい、全速力で駆ける

目の前にいるのは3匹

剣を抜き、両手で振り下ろす。この動作だけでゴブリンの頭は簡単に砕かれる

しかし、彼らもまたコチラの隙を逃さない

残った二匹がコチラを殺そうと手に持つ棍棒を振りかざす

二匹同時なため、両方の攻撃を防ぐことは無理だ

だが、コチラにも仲間がいる

ヒュゥゥゥ!と風を切る音が伝わり、矢がゴブリンの首に刺さり、落ちる

矢の当たっていないゴブリンの攻撃を盾で防ぎ、剣を振り下ろす

断末魔をあげる間もなくゴブリンは絶命した


 △▼△


「しかし、お前、慎重なノか、死にたがリナのか分からない奴だな」


ゴブリンの襲ってきた場所から離れた場所でゴブリンの解体をしているとベルが不思議そうな声色で言ってきた


「どういうことだ?」

「そのままだよ。俺の聞いていた話でハかなり慎重な奴だって聞いた。まあ、ゴブリンに遭遇するまでは俺もそう思ってイタよ。でもな、ゴブリンと戦っているときに考えが変わったよ。ダッてよ、盾を持っている、後衛がいるからといって剣を大上段で振りかざして突撃する奴なんてイねぇよ」

「あー、多分それ槍使ってたからだと思う。あの状態なら槍振り回したらどうにかなるからな。多分、癖が抜けてないんだろうな」


槍はここに来るまでに壊れてしまったのだ。買う金もないし、買わずともやっていけるので買っていない


「……まあ、そう言うなラソウなんだろう。ソレでも気を付けてくれよ。パーティー組んだ奴が死んだなんて目覚めが悪いカらな」


まあ、言われたので気をつけよう

確かにパーティーメンバーが死んだら僕だって嫌だからな


 △▼△


「なかなか見つからないな」

「そうだなぁ。……なあ、いっそのこと森に行かネぇか?あそこなら絶対いると思ウンだが」

「カナートの森のことか?確かにあそこならいるだろな。……流石に危ないんじゃないか?」

「大丈夫!大丈夫!あそこの危険度はDランクって言っても出現するのはほトンどゴブリンやコボルトで稀に熊やオークが出るってだけだろ。逃げるくらいはどうにかなるって!」


カナートの森はこの近くにある魔境だ

低ランクの魔物や狼や熊といった猛獣が多く生息している

ランクはDランクといって魔境の中では低い方に位置しているらしいがそれでもE+ランクの僕達にはきついだろう

しかしこのままではらちがあかないのは事実

…腹をくくるしかないか


「……危なくなったならすぐに逃げるからな?」

「分かってるよ。……しかし、本当に訳が分からない奴だな」


やれやれ、失礼なやつだな

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