第10話

side 春宮紫苑

ゴブリンの襲撃を乗り越え、またゴブリンに襲われる可能性があるため、先程の場所から離れた場所でキャンプをしている。場所の移動や設営などで気がついたらもう夜になっていた


「紫苑、どうしたんだ?さっきからそんなに考え込んで」

「そらそーだろ祐介。ゴブリンは暗い場所を好む。なのにさっき襲われたときはまだ夕方で明るかったし、ゴブリンが住んでいそうな場所からは離れた開けた場所だった。そして、いくらゴブリンとはいえ進化した上位個体が結構な数がいた。それも、比較的安全な王都周辺でだ。なにかあるんじゃないかと疑うのが普通だろう?」

「まぁそうだけど…。対策はアルカさんやダニエルさん達騎士が練っているから僕達はこれからに備えて今は休んだ方がいいんじゃないか?」


まぁ祐介の言葉にも一理あるな。

確かに今は騎士達がなにか対策しているのだから素人である僕達がなにか言う隙はないか…


「しかし、本当にこの世界は不思議だな。この世界の生物全部はすごいスピードで進化するんだな。普通進化って長い時間をかけて行われるものなのにな」

「確かにそうだな。でも進化するスピードが早いのは魔物、それも特に下位の種族だからな。上位の魔物やその他猛獣や人間の進化するスピードはそこまでらしいぞ」

「へぇ~。よく知っているなそんなこと」

「前に図書館で調べ物したときにたまたま知ったんだよ」


本来なら交代で夜の見張りを行うのだが、今日は騎士達が全部やるらしい。そして方針を決めた騎士達から指示を受け、その後少し祐介と互いについての他愛のない話をして寝た





――この時僕達全員は高をくくっていたんだと思う。チート持ちが約20名に熟練の騎士が約200人ほど。それに相手はゴブリン

たが、その侮りは高い代償となって返ってくる







「起きロッお前たti!!ゴ■リnn共の襲撃daぞー!!」


夜、突然の騎士の声によって起こされて急いで武器を取り、テントの外を見ると、テントの周りを囲っている柵の向こうから緑色の一団が来ていた

夕方の襲撃時とは比較にならない数だ。なにせ一面が緑。素直に気持ち悪いといえるレベルである

だからといって手を抜くことはできない。騎士達の指示通りにテキパキと動いていく


「異世界人達で魔術が得意な奴らは詠唱を始めろ!俺が合図をしたら打ち込め!無理に当てようとするなよ、近づけさせないだけでいい!」

「その後に騎士達が魔術を打ち込め!お前たちは外すなよ!」


二人の騎士団長の指示を受け各々が魔術の詠唱を始める


「“炎よ、踊れ、踊れ〈フレイムバースト〉!”」

「“氷よ我が敵を穿て〈アイスジャベリン〉!”」

「“砕け〈ロックバレット〉!!”」

「“雷よ蛇となりて、縊り殺せ〈サンダーウィップ〉!!”」


様々な魔術がゴブリンに向かって飛んでゆく。詠唱が短いため本来なら威力が下がっているはずのそれらは通常以上の威力を持っている。しかしゴブリン達はそれを知ってか知らずかただ一心不乱に向かってくる

魔術がゴブリン達に当たり、ゴブリンの死体が量産される。そして一拍おいて騎士達の魔術が炸裂する

普通ならここで怯むなり、怯えるなりするはずなのだが、ゴブリン達は怯えも怯みもせずに、かつて仲間だったものに食らいついた


グチャグチャバキバキグチャグチャグチャグチャバキバキバキグチャグバキバキグチャグチャグチャ

グチャグチャバキバキグチャグチャバキバキバキグチャグチャグチャバキバキバキグチャバキバキグチャバキバキグチャバキグチャバキバキバキグチャグチャグチャバキグチャバキグチャグチャグチャバキバキグチャグチャグチャバキバキグチャバキバキグチャグチャバキグチャグチャバキグチャグチャバキグチャグチャグチャバキグチャバキバキバキグチャバキグチャグチャグチャバキグチャグチャグチャバキグチャグチャグチャバキグチャグチャバキグチャグチャ


ふと周りを見渡すと周りいる人間は皆、騎士も含め呆然としていた。理解ができない、というよりもしたくないという顔を祐介も秋崎もアルカ団長も皆していた。もちろん僕もしている。ただ一つ分かることがあるとすればこれがどうしようもないほどの異常事態であるということだけである


ゴブリン達が次はお前たちだという目をしていた

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