第9話
side 春宮紫苑
遠征が始まり、四日がたった。予定では七日間なので、あと半分くらいである。そのため、目的地にはもう到着後であり、今は王都に戻っている最中である。ちなみに祐介達クラスメイト達は最初一日目二日目は絶好調だったが三日目ぐらいから全員バテてしまった。どうやら自分達の身体能力を過信していたため、どこか遠足気分だったらしい。現に祐介も隣で肩で息をしながら歩いている
「はぁ…はぁ……なぁ…紫苑、…はぁ…、なんでお前は…僕達よりも身体能力が…低いのに…、バテてないんだ?」
息を整えながら、心底不思議そうに祐介が聞いてきた。よく見ると後ろにいるクラスメイト達や騎士達からも不思議なものを見るような目で見てきている
「そりゃあ祐介、お前は整備されていない道での動き方を知らないだけだろう?動き方がわかればすぐに僕以上に動けるようになると思うぞ。あとは装備の問題じゃないか?」
一応、僕は普段の訓練で重い荷物を背負って行動したり、不整地をマラソンだってしたことがある。それに今の僕は荷物の入った大きな鞄を背負い、皮でできた胸当て、膝当て、肘当てに鉄製の盾と槍を持ち、腰に短剣と片手剣をつけている。一方祐介は、金属製の鎧と剣と盾、そして荷物の入った大きな鞄を背負っている。他の奴らも似たような装備をしている奴が多かった
……逆にここまで疲れ知らずで進んできたコイツらが怖いわ
しばらく進んでいると日が暮れてきたので、野営をすることになった。周りにいるクラスメイト達は皆倒れ伏している。元気なのは騎士だけだ
さて、さっさとテントを張ってしまおうと荷物を広げようとすると
「グギギャ!」
「グギギ、ギャギャ!!」
「ギキグギャ!」
耳障りなの声が聞こえてきたので、そちらの方を向いてみれば、小柄で緑色の体色をしたファンタジーを代表する魔物、ゴブリンがいた
ゴブリン、緑色の肌と120センチほどの小柄な身長を持ち、他の魔物に比べて知性の高い魔物。ただし、1匹の戦闘力は低い。基本的には巣を作り、群れで集団で生活をする。巣の外では少なくても3~5匹ぼどの集団で行動する。これだけでもなかなか厄介な性質を持つがゴブリンの恐ろしさはそこではない。ゴブリンの恐ろしさはゴキブリと同レベルもしくはそれ以上の繁殖力である。なにせ人型の生物なら何でも繁殖に使えるというのだから。1匹見つけたら周辺には30匹以上いると思えと言われるほどである。とはいえ――
「よ■、終ワったna」
「すごい……こんな一瞬で…」
「Maぁゴ■リンだか■な。アンタもそnoうちこれくらいの速度で殺レるようにniなるさ」
――弱っちい部類の魔物なので熟練の騎士がいれば瞬殺されてしまうんだけどね
「しかし不思議だな」
「何がだ紫苑」
「いやだって今まで魔物に一切遭遇していなかったじゃないか」
そう僕が呟くとジョンとティアナがはっとしたような顔をした。そう僕達はこれまで一回も魔物に遭遇していない。いくら比較的安全な王都周辺とはいえ、一回も遭遇しなかったのが何故今遭遇したのだろうか
「グギャギャ!!」
「ギャグギャギ」
「ギギャギグガ?」
「グギャガグギャ!」
「ゴギャグギャガ!!」
そんなことを考えているとさらにゴブリン達がやってきた。先程よりも多く、しかもまだやって来る気配がある
「マzuiな、サす■に数がoオいな」
「Si苑、■介、te伝ッてクれ」
「はい、分かりました!」
「分かった!」
目の前に2匹いるゴブリンを観察する。薄汚れた腰巻きをつけており、木でできた棍棒を持っている。相手を観察していると、向こうから襲いかかってきた。槍を構え、全速力で突き出す。片方のゴブリンの眉間に突き刺さり、そのまま頭蓋を貫いた。もう1匹のゴブリンは仲間が殺られたことを気にせずに突っ込んで来る。急いで槍を構え直そうとするが、間に合わないので盾を構え、防ぐ。120センチほどの小柄な体躯とはいえ、なかなかの衝撃を受けた。槍では無理だと判断したのでゴブリンを振り払い、剣を抜き、そのまま心臓を貫いた
「グギャャアアアッ!!」
そしてゴブリンは耳障りな断末魔をあげて絶命した
周りを見ると、どうやらほとんどの人達がゴブリンを倒し終わったらしく、終わった人が終わっていない人に加勢しているのですぐに終わるだろう
「紫苑、無事か?!」
「無事だよ。流石にこれくらいならなんとかなるさ」
「そうか、よかった。上位個体がいくつかいたから心配したよ」
どうやら、まだ何も終わっていないようだ
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