第4話


歯車は動き、回り続ける

そのことに誰も気づけない

動かした張本人でさえも







side 春宮紫苑

僕は今、地下牢らしきところにいる。地下牢は予想している以上に暗く、汚く、そして狭い

……これからどうなるのだろうか。正直ロクな目に遭わない気しかしないと、物思いにふけっていると足音が聞こえてきた

まぁ、大方他にいる収監者だろうなと、どこか他人事のように構えていると、

気がつけば鉄格子の前に凄くガタイのいいおっさんがこちらを値踏みするかのような目でこちらを見ていた。


「■■、■■■■■■■■■■■

■■■■?」

「■■、■■■■■■■■■■?」


何を話しているのだろうか。僕は彼等の言葉を理解できないため、彼等を眺めることしかできない


「■■■■■■■」


だからわっかんねーつーの


「おい、俺の言葉が判るか?」


…?!


「……あぁ、判るぞ」

「よし、それじゃあ単刀直入に聞くぞ。このまま死ぬのと、ここから出て死ぬ。どちらがいい?」


どっちも死ぬのかよ。というか質問くらいさせてくれてもいいんじゃないか?まあそれでも僕の答えは変わらないが


「モチロン外で死ぬ方が何倍もマシだ」


こんな場所で何もわからずに死ぬのは真っ平らごめんである。出れるに越したことはないのだ














side アルカ

俺はアルカ。この国の騎士団の一つ、王立第三騎士団というものを率いている騎士団長だ。



今日は教団の連中がなにやら忙しそうにしている。不思議に思いながら部下に尋ねると、


「ああ、団長、今日はあれですよ

勇者召喚ですよ。ほら少し前に神託がくだったじゃないですか。

『異界より救世主を召喚せよ』って」


あぁそんなこともあったなと思いながら部下の話に相槌を打つ


「団長は相変わらず神様に興味がありませんね。少しは興味を持っていた方が良いですよ。団長は加護を頂いているのでしょう?

せめてお参りくらいいっといたらいいと思いますがねぇ」

「ふん、下らん。俺は自分で見たものしか信じない。そんなに信奉して欲しいなら神そのものが出てこいという話だな」

「はぁ、変わりませんねぇ。団長は」


……何故俺は溜息をつかれたのだろうか

まぁいい、いつものことだ




……ふう

やっと仕事が一段落した

というか何で仕事の3、4割が部下のやらかした反省文の確認なんだよ。おかしいだろ、全く。

そう思いながら廊下をあるいると

話声が聞こえてきた。よく聞こえないがどうやら教団長とその取り巻きらしい。あいつらがどんな話をしているのか気になったので話をこっそりと聞いてみることにした。何か面白い話だといいなと思いながら耳をあいつらの会話に傾ける



どうやら今回の召喚で天界の神々に呪われた奴がいたらしい。おまけに召喚された異世界人なら必ず有している〈言語理解〉を有していない。これまでの神託によって行われた勇者召喚で召喚された異世界人は加護や祝福があれど呪われている、そして必ずあるはずのものがないなど前代未聞、何か罪を犯したものではないかと地下牢に収監しているらしい。……呪われている奴とは一体、どんな奴だろうか。俺は怖いもの見たさにその呪われた異世界人を見に行った。話も少し聞いてみたいと思い、言語理解の魔術を使える部下を連れていくことにした




地下牢は狭く、汚い。当たり前だここは基本使われることのない施設だからだ。主に収監されているのは高位貴族や暗殺者など通常の方法では逃げられてしまう可能性の持つものを密かに処分するための場所なのだから


地下牢の奥にある一室にそいつはいた。正直、こいつが?というのが本音だった。どう見ても悪人には見えない。どこかのボンボンにしか見えない

……ほんの少し俺はそいつに同情していた。気がつけば俺は部下に言語理解の魔術を使うように指示した


「おい、俺の言葉が判るか?」


そいつは驚いた顔をしていた。

どうやら本当にこちらの言葉を理解していなかったらしい


「あぁ、判るぞ」

「よし、それじゃあ単刀直入に聞くぞ。このまま死ぬのと、ここからでて死ぬ。どちらがいい?」

「モチロン外で死ぬ方が何倍もマシだ」


そいつは即答した。まぁ当然の結果である。

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