第22話 他校視察
週が変わり春日井北高のeスポーツクラブの視察の時がやってきました。この視察の件は向井先生に事前に要望書を渡す時に打ち上げて許可を貰いました。
それから渥美の車に四名の生徒を乗せて春日井北高校に出かけました。そして、eスポーツクラブの顧問の西尾先生と応接室に入りました。
そこでここに来た経緯を説明しました。それを聞いて西尾はeスポーツ発足支援プログラムに参加してPC五台を二年間無償レンタルされることを伝え、北高もそれを活用してクラブを立ちあげたことを言いました。
そして、北高の部活動について質問をしていきました。クラブ員は十六名で女性徒は三名、部活は毎日二時間です。
パソコンは五台、モニターは十台です。クラブが出来たのは二年前です。また部費として月に千円集めていることも知りました。
それから部活動の教室を見せて欲しいと頼みました。それと出来たら写真を取らせて下さいと頼みました。
それを受けて皆は部活動の教室に向かいました。そこでは多くの生徒がユニホーム姿でゲームを楽しんでいました。
「すごいですね」太田が驚きの声を出しました。
「いいですね、羨ましいです」陽斗が目を輝かせて言いました。
西尾は渥美達に一通り説明して部長の高木を紹介しました。そこで桃花台高の事を簡単に説明しました。
高木は沢山の高校でクラブできれば練習試合など交流する機会が増えて楽しくなると言ってくれました。
「皆さんは全国高校eスポーツ大会を知っていますか」高木が高橋に聞きました。
「名前だけは聞いたことがあります」
「そうですか、昨年から全国高校大会が開催されるようになりました。その大会で行われるのがロケットリーグというラジコンカーでサッカーするゲームです。知っていますか」
「すいません、知りませんでした」
「そうですか、ちょっとやってみましょう」高木はそこでロケットリーグの対戦モードを一年生と二年生で行うように指示しました。
「今からロケットリーグを始めますから少し見ていて下さい」
ここの設備が立派でした。モニターと同じものがプロジェクターでスクリーンに投影されています。そのスクリーンが上下六分割され六人の画面が見られます。
「素晴らしいですね」
「陽斗君もしたくなりましたか」
「はい、したいです」健太はそこで高木に声を掛けました。
そして、高木はロケットリーグをしている選手に中止の指示を出しました。
「二年生は席を開けて桃花台高と変わって下さい。そして、彼らに操作を指導して下さい」
「桃花台高の中で三名ですが、パソコンの前の椅子に座って下さい」
「それでは北高の皆さんがロケットリーグを指導してくれますから用意して下さい」健太が指示しました。
「すげー、ありがとうございます」陽斗は真っ先にパソコンの椅子に座りました。
「それでは太田君、僕たちも用意しましょうか」高橋が太田を連れていきました。
健太は渥美と並んでその様子を見ていました。
「二年生は桃花台高の選手に操作方法を教えて下さい」高木が声を出しました。そして、十分したら一年生チームと対戦します。一年生はメンバーを決めて下さい。
「君はしないのですか」高木が健太に声を掛けました。
「はい、僕はゲームをしませんので構わないでください」健太が答えました。
「ゲームをしないのですか」
「はい、僕はクラブ設立の裏方の人間ですので構わないでください」
「そうですか、eスポーツクラブにゲームをしない人がいるのですか。おもしろいですね」
「すいません」
それから桃花台高と春日井北高の一年生チームが対戦しました。桃花台高の三人は初めての体験です。緊張と嬉しさが表情に出ています。
「それ、ゴール」
「やったー」歓声が上がりました
「悔しいです。点を撮られた―」陽斗が叫びました
健太は三人の姿を見て嬉しくなりました。三人が輝いて見えます。これが団体競技の魅力です。彼らは家で一人でしていたらこのような歓声や喜怒哀楽な表情にはなりません。
渥美も三人の選手を見ていました。それぞれが嬉しそうです。その表情はいいのに驚いています。彼らはゲーマーなのです。それを改めて知りました。
この春日井北高の視察は成功でした。それぞれに視察したことで収穫がありました。渥美は翌日春日井北高校に生徒を連れて視察に出かけたことを向井先生に報告しました。そこで視察してきたことを簡単に説明しました。
「北高の三年生の部長からは、早くクラブが増えて練習試合等が、出来る環境を作って下さいと励まされました。
そして、今回参加しなかった生徒には写真でイメージを伝えますが、その現場を見たのでこれから準備する彼らも励みになると思います」
「それではeスポーツ発足支援プログラムの活用がまだ出来るかを至急調べて下さい。それによって対応に大きな違いが出ますからね。
でもそれはクラブとして認可すると言う事が前提になりますが、向井先生宜しいでしょうか」
「渥美先生、分かります。認可はまだと言う事です。そう説明して下さい。本校の流れは設立に向かっています。それは渥美先生も肌で感じているでしょう」
「はいそうです」
「文化祭のプヨプヨeスポーツ大会が成功したことで次はクラブの設立というイメージを既に全校生徒が持っています。
何よりも高橋君の受験生へのガンバロウ三唱が良かったです。あれで校長先生の印象が設立に向けてGOのイメージに代わってきました」
「そうですね、生徒達も高橋が二年生の内にクラブを設立したいと行ってきました。それが再度の要望書になりました」
「渥美先生、分かっています。彼らには三人の不登校生徒を学校に戻した結果を持っています。それも大きな力になっていますよ」
「ともかく、焦らずに生徒には上手く言って下さい」
「ありがとうございます」渥美はそこで職員会議で要望書の話を正式に出すことを向井に提案しました。
渥美は向井先生に報告してから、早速eスポーツ発足支援プログラムの活用について調査しました。それは高橋にも既に指示しました。
今年も支援プログラムはメーカーによって行われていました。そこは五台のパソコンを一年分の費用で三年間借りられる発足支援の為のプログラムです。
渥美はこの支援プログラムは使えると思いました。そして会場は教室でよいとして有線ケーブルの準備がいります。これはパソコンクラブに出入りしている業者に問い合わせれば何とかなりそうです。
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