第21話 eスポクラブ設立の要望書

 十一月中旬。文化祭が終わって一週間が過ぎました。

健太は放課後に渥美先生を尋ねました。そこでeスポーツクラブを設立する為にこれからどのようにしたらよいのか指導をお願いしました。

「先生、先月クラブ設立の要望書を出しましたが、あの時の資料では中身が不足しているからダメだと思いました」

「そうですね」

「そこで一度仕切り直ししたいのです。そこで新たにどうしたらよいでしょうか」

「桃山君、私なりに考えてみますから二、三日時間を下さい」

「分かりました。先生のアドバイスを待っています。

 他の仲間が、高橋さんが二年生の内にクラブ設立をしたいというのです」

「またどうしてですか」

「はい文化祭で受験生へガンバロウ三唱をしました。あの時の高橋さんのイメージがあるうちに動きたいのです」

「そうですか、分かりました。その考えに先生も賛成です」

「それでは先生、水曜日か木曜日に声を掛けて下さい」

「分かりました」

 そして、水曜日に渥美先生から健太に声が掛りました。

「このメモを見て下さい。新たにeスポーツクラブ設立の要望書として書きなおす為のメモ書きです。クラブ設立の目的は三つ書きました。

 一つ、国体の競技種目に二〇一九年から採用されました。二〇二六年愛知県で行われるアジア大会のきゅう偽種目に採用されました。

 そのために本校にeスポーツクラブを設立してその普及に努める

 一つ、テレビゲームの延長戦として考えないこと。スポーツとして取組むこととする。

 一つ、不登校生、引きこもろ生の救済の手段としてeスポーツクラブを通して手助けをする

 それから設立の動機は高橋と太田に書かせて下さい。それから規則をパソコンクラブか何処でもいいでいいですから似たようなものを真似て作って下さい。」

「はい分かります」

「それから体制についてです。部長、副部長、企画、渉外、書記、会計位の役員表を作ります、部室は仮として視聴覚室でどうでしょうか」

「はい、仮ですからよいでしょう。それと設立時に部に成る為には部員が十名以上必要です。今の六名では不足しますから、早急に新規メンバーを集めて下さい」

「それから先生、クラブ活動の当面の目標として、全国高校eスポーツ大会への出場としたらいいでしょうか」

「いいですよ。それから新聞社に聞いたのですが、春日井北高にはすでにeスポーツクラブがありますから一度見学に行きましょう。」

「そうですか、早く行きたいです。それで北高の部室を一度見せて欲しいです」

「そうですね、私から一度北高に電話してみます」

「先生の車は五人乗れますね。後四人乗れますね、高橋、太田、私に菊地で四人です。出来たら四名を連れてって下さい」

「分かりました。電話したら連絡します。

 そしたら要望書の下書きを書いて出来たら見て下さい」

「機材の欄は空白で後から追記します」

「分かりました」

「少し灯りが見えてきました」

「健太君にはこれからも頑張ってほしいのです」

「はい、頑張ります」

 健太は職員室を出て視聴覚室に戻りました。そこで全員を集めて渥美先生と相談してきた内容を伝えました。

「まず新しいクラブの設立の目的はこれを見て下さい。それから設立の動機は、高橋さんと太田さんにお願いします。どうしてクラブを作りたくなったのかをメモして渡して下さい。

 それからパソコンクラブでいいのですが、新しいクラブの規則を作る為にまず他所の部のコピーをして、使えるところを真似てみたらいいともいますのでコピーを取って下さい。これも二年生にお願いします。

 私は要望書を家で書きなおしますのでお願いします。それから組織を作らねばいけません。私の案は部長に高橋さん、副部長と渉外を太田さん、企画を私がします。会計を日菜子にお願いします。

 日菜子、初めてですから私と一緒にやりましょう。そして設備機材担当に菊地君、書記兼新入部員採用担当を柏木君にお願いします。六名しかいませんから全員が担当を持つことになりますから理解して下さい。まずは原案としてそれでいいでしょうか」

「もうそこまで考えてくれたのですか。ありがとう」

「はい、高橋さんが二年生の内にクラブを設立したいという希望を渥美先生に話しましたら了解して貰いました。後四ヶ月しかありませんので協力しあっていきましょう」

「はい了解です」

「それからクラブの活動目標は全国高校eスポーツ大会への出場を目標とします。いいですか全国大会への参加を目標にします」

「はい、嬉しいです」

「それから春日井北高にすでにeスポーツクラブがあります。そこで高橋、太田、私と菊地君の四人は北高がいいと言えば見学に渥美先生と一緒に行きます。

 これはまだ北高に連絡前です。だから後日先生から連絡がきますので耳に入れておいてください。

 それで今回貴志君と日菜子は、乗車定員の関係で我慢して下さい」

「健太君ありがとう、これで少し灯りが見えてきましたね」

「私が会計をするのですか」

「日菜子はパソコンを持っていますね、これからはエクセルを勉強して下さい。分からない時には藤井さんに相談して下さい。」

「はい分かりました」

「北高の話しは何時頃になるかは分かりませんか」

「はい、まだ先生が北高に電話をしていませんから分かりません。この件は分かりしだい連絡します。

 後は設立する為にメンバーの確保をしなければいけません。今六名ですから最低でも十名以上にしたいです」

「そうですね、急いで四~五名を募集しましょう」

「それでは文化祭の大会の上位者に声をかけましょう」

「そうですね、明日にでもそのメンバーのリスト表を作って交渉の担当者を決めましょう。日菜子さん、文化祭の個人戦の成績表を明日印刷して持ってきて下さい」

「私のパソコンにデータが入っていますから家で印刷して持ってきます」日菜子が皆に向かって言いました。

「よろしいでしょうか。先輩にお願いしたことはなるべく早くお願いします。要望書を作りますのでお願いします」

「はい分かりました」

 健太はその日はそれで帰りました。高橋と太田はまずパソコンクラブに行きました。そこで同じクラスの小鮒清次に声を掛けました。

「小鮒君、僕たちいよいよeスポーツクラブの設立に向けて動き始めました。そこでパソコンクラブの規則を見せて欲しいのです。」

「うちの規則を参考にするのですか」

「そうです。だからお願いします」

「分かりました。コピーしたら返して下さい」

「ありがとう、明日にも返します」高橋はそういって生徒会室に行ってコピーを取りました。これで健太から言われた一つの目途はたちました。 

次にクラブを何故作るのですか、その動機をメモするように言われました。

「太田君、僕たちはなぜクラブを作ろうとしたのですか」

「高橋君、単純に一人でゲームするよりは皆でした方が楽しいと分かったからではないですか」

「そうだね、ネトゲの世界は自室に籠もり一人で楽しんでいました。それを皆で集まってやった方が楽しいのです。それに勝敗をつけるスポーツ心でやるのがいいです。でもそれを言葉でeスポーツと知っても実際にしたことはありませんでした」

「そうです、渥美先生との出会いも影響しました」

「では団体競技としてeスポーツを楽しもうという事が重要ですね」

「そうですね、個人戦のeスポーツの種目はしないとは言いませんが主目的にしません」

「そうだね、その辺を上手く言葉にすればいいのかなあ」

「そうですね、原点というか出発点の気持ちを大事にしましょう」

「分かりました。それを参考にして考えてみましょう」

 それから二人は紆余曲折しながら設立の動機を考えました。

 その日、貴志が日菜子に一緒に帰ろうと声を掛けました。

「日菜子の家は小松寺でしたね。僕が遠回りになりますが一緒に帰りたいです」

「陽斗君、急にどうしたのですか」

「前にクラブ設立の話をしていたことが、どんどん現実の世界になっていくから楽しいのです。それが健太君の行動力から来ているのですね」

「そうよ、陽斗君は今頃分かったのですか」

「いや今日改めて健太君のすごさを感じたのです」

「そうなの、私は不登校から抜け出すい時に健太君に任そう、彼に着いて行こうと決めていました。

 あの頃は一人ぽっちで寂しかったのです。その時に美咲が声を掛けてくれたのです。でもその彼女は健太さんの指示で動いていたのです」

「日菜子はそうなのだ、僕たちは健太と美咲には頭が上がらないね」

「そうね、私は、二人は偉ぶることが無いから好きです」

「そうだよ、僕たちは不登校がずるずる続いていたら中退の道を進むことになっていただろうね」

「そうね、一人でどうすることもできずに泣いてばかりで悪い方にばかり考えていたわ」

「僕も一緒だよ。もうどうにでもなれと人生を投げ遣りになっていたからね」

「それが彼に出会ってからはガラッと人生が変わりました。だって今陽斗君と二人で一緒に帰ろうと歩いているのですね。

 私は陽斗君のことが好きです。同じ苦しみを味わってきた人だから着飾らないで話しが出来ます。だから、こうして話しているのが嬉しいのです」

「日菜子、僕も日菜子が好きです。同じ傷を持つ者同士というか、日菜子とは心の痛みが分かりあえるのが嬉しいのです」

「陽斗さん・・・」

「日菜子・・・」

 それから二人は長い沈黙が続きました。

 十一月中旬の日暮れは早いです。二人は街路灯に照らし出された長い影をみて、嬉しい青春を感じました。

 それから健太は家で渥美先生のメモを見て要望書の下書きを書き始めました。彼も文化祭のプヨプヨeスポーツ大会の成功を一人で喜んでいました。

 それでいよいよeスポーツクラブの設立に向かって進む時が来たのです。それを肌で感じて健太は静かに闘志を燃やすのでした。

 そして、木曜日の放課後に健太は渥美先生と職員室にいました。

「健太君、これが要望書のフレームです。見て下さい」

「はい、ありがとうございます」健太はそう言って資料に目を通しました。

「それから北高に電話しました。そしたら何時でも見に来て下さいと言ってくれましたので日時を決めましょう。」

「先生ありがとうございます」

「先生の都合は何時がいいですか」

「私は来週の月曜日は職員会議があるから火曜日以降ならいいですよ」

「では火曜日の放課後で仮設定しましょう」

「いいですよ。それで見学だけではもったいないですから、それぞれに担当を決めて視察するのはどうですか」

「それはいいです。クラブの体裁を作る為に必要なことを聞いてくるのが目的ですね」

「そうです。それでは何を聞くかを相談しましょう」

「まず、パソコンや周辺機材の状況です。予算など分かれば聞きたいです」

「それと部室の広さ、部員数、男女に数、規則関係、活動時間、対外試合など知りたいです」

「それと出来たら写真を撮りたいですね」

「それはお願いしましょう」

「ではそれらを誰が担当するのか相談します。先生ありがとうございます。視察に行く日時が決まったら連絡下さい」

「分かりました」それから健太は視聴覚室に戻りました。

そして全員集めて説明を始めました。

「まず要望書の先生からのアドバイス資料がきました。これです。

 そして北高に視察に行く日を来週の火曜日の放課後で調整してもらいます」

「来週の火曜日ですね」

「そうです、そこで視察する内容を四人で分担しますので案を述べます。

 まずパソコン機材関係を菊地君、初期投資などの予算関係を高橋さん、太田さんには部室の広さ、部員数、男女、対外試合など、私は規則や活動計画などをメモや写真をとってくるのでどうでしょうか」

「さすが健太君、もうそこまで決めてきてくれたのですか」

「視察の役割担当については、これでどうですか」

「いいです」

「それで高橋さん前にお願いした設立の動機と新しい規則についてはどうですか」

「はいこれが動機です。団体でするeスポーツの楽しさを皆に広めたいからです。

そして、パソコンクラブの規則を参考にeスポーツクラブの規則の原案を作成しました」高橋は動機の書かれた紙と規則の原案を書いた紙を健太に渡しました。

「ありがとうございます。これで要望書の改定版を急いで作成します」

「貴志君、どこか悪いのですか。顔色が良くないですよ」健太は静かに下を向いている貴志が気になりました。

「大丈夫です、何もありませんから」貴志は皆に心配させないように言いました。

「そうですか、何かあれば言って下さいね」

 それからワイガヤをして今日は散会になりました。

 その日の夜に健太は美咲に要望書のことで電話しました。

「美咲、明日までにクラブ設立の要望書を下書きしますから、パソコン入力して下さい」

「健太さん、それを何時私に渡してくれるのですか」

「明日学校で渡すから週末迄にパソコン入力して欲しいのです」

「はい、資料を見てから返事します」

「資料の枚数はそんなに沢山ではないですから、一枚の中身も文字数は多くありませんから安心して下さい」

「分かりました」

 健太は電話を切ってから要望書の下書きを夜遅くまでに書きました。

 そして、翌日のお昼時間に健太は美咲の教室に入っていきました。

「美咲、昨夜電話した要望書です。これをお願いします」

「はい分かりました」

「それで出来たら、日曜日に印刷したのを見たいのだけれど出来そうか明日にでも電話下さい。それによって日曜日に美咲の家に行きますから」

「分かりました。明日電話します」

「お願いします」

 そして、健太は天舞莉の処に行きました。

「天舞莉さん、文化祭以来ですね。元気ですか」

「健太さんから声を掛けてくるとは何かありましたか」

「いえ、顔を見たから挨拶しただけです」

「そうなの、たまにはデートでも誘ってくれるのかと思いました」

「天舞莉さん、美咲に聞こえます」

「健太さん、遠慮しなくっていいのよ」

「それでは今度デートでもしましょうか」

「はい美咲と相談して決めます」

「ええ、そうなのですか。参ったなあ」

「ウフフ・・・」

 そして、土曜日なりました。美咲は昨夜からパソコン入力をして土曜日の午後にそれを終えました。その要望書を印刷して自分でチェックしました。

 それで健太に電話をしました。

「健太さん、要望書が出来ました」

「美咲ありがとう。それでは明日の十時に美咲の家に行きますけれどいいですか」

「はい分かりました」

 美咲は健太の電話を切ってから居間に下りていきました。

「お母さん、明日の十時に健太さんがこれを取りに来ます」

「それは何ですか。またプヨプヨですか」

「お母さんたら何を言うのですか。今度はeスポーツクラブ設立の要望書です」

「ええクラブをいよいよ作るのですか」

「そうよ、文化祭のプヨプヨeスポーツ大会が、成功に終わったから今度はクラブを作るのだと言っていました」

「そうなの。分かりました」

 そして、日曜日になりました。今日は美咲の父の航平が家にいます。健太が来ることを百合子から聞いていますので彼が会いたくなったのです。

 それで十時に健太がやってきました。美咲は、彼が玄関に入ってから居間に通しました。

「小父さんと小母さん、お久しぶりです」

「まあ座って下さい。今日は健太君のeスポーツクラブの設立の要望書が出来たと聞きました」

「お父さん、これです」

「先に見ていいのですか」

「どうぞ、見てアドバイスをして下さい」

「では見せて頂きます」そう言って航平は要望書を読み始めました。

「・・・」

 健太と美咲は黙って航平の仕草を見守っています。

「お父さん、黙っていたら健太さんが困っていますよ」

「小父さん、何か足りないように思うのですがそれが分かりません」

「そうですか、これでいいのではないですか」

「進学校にテレビゲームのクラブを作る。すると三年生の先生から必要ないという意見が出ると思います。僕にそれを負かす考えが見つかりません」

「健太君は進学校にテレビゲームクラブは必要ないという、先生がいると言うのですね」

「そうです。新しことを始める前にダメダメと言うのが学校です」

「そうですか、会社でいうと費用対効果といってこれだけの投資金額に対して見込まれる効果金額がこれだけですから効果がります。その効果学を見て賛成、反対の判断をするのです。でもこの要望書にはそれは必要ないでしょうね」

「効果ですか」

「健太さん不登校生を三人学校に戻したでしょう。それが効果ではないですか」

「そうだね、三人の不登校生を学校に戻しました。それは効果ではないですか」

「健太君それはクラブ設立の目的の一つにありますね。

 一つ、不登校生、引きこもろ生の救済の手段としてeスポーツクラブを通して手助けをする。

 これが三人を戻した効果ですが、要望書にそれを書く場所がありません」

「そうですね」

「健太君、これでいいと思いますよ」

「そうですか、ありがとうございます」

「それで美咲にお願いだけれど、これをUSBに落として後一部印刷してもらえますか」

「いいですよ」

「それでお願いがあるのですが、明日の放課後に渥美先生に見せますからその席に美咲も出て欲しいのです。そこで修正が掛るかもしれません。その時の対応です」

「はい分かりました。それでは印刷しますから健太さんも一緒に来て」

「はい」そう言って二人は今から美咲の部屋に上がっていきました

「お母さん久しぶりに健太君と会いましたが、すがすがしい青年になりましたね」

「そうですね、彼は相変わらず打算が無いのがいいですね」

「だから話していて気持ちよいのでしょうね」

「そうですね、でも打算が無いとは今時にしては珍しい青年ですね」

「美咲にはもったいない彼ですよ」

「そうですね、うふふふ・・・

 でも美咲も彼の影響を受けてだいぶ変わってきましたよ」

「それを何処で感じたのですか」

「美咲の感性が鋭くなったように思います」

「感性ですか、高校一年生ですからそろそろ大人の感性に代わる頃ですね」

「そうですね、大人になろうとしているのでしょうか」

 その頃、美咲と健太は部屋の中で抱き合ってキスをしていました。健太が手伝ってくれたお礼に熱いキスで返しているのです。


 そして、月曜日の放課後の視聴覚室に六名の他に、今日は藤田美咲が加わっていました。そこで要望書を皆で確認していました。しばらくして、そこに渥美先生が入ってきました。

「渥美先生、要望書をパソコン入力してもらった藤田美咲です。今日は先生が手直しの指示が出たらこの場で修正してもらいますので宜しくお願いします」

「そうですか、では早速内容を確認しましょう」

「表紙はこれでいいですか」

「作成者は桃山君ですね」

「はいそうです」

「表題のフォントを大きくしたらどうですか」

「何フォントがいいでしょうか」美咲が渥美先生に問いかけました。

「文字数が多いですから十六フォントでどうでしょうか」

「はい分かりました」美咲はそう言ってメモ祇付き付箋に書いて貼りました。

「次のページはどうでしょうか」

「桃山君表紙の次は目次を入れるのです。新規で書いて下さい」

「はい分かりました」

「クラブ設立の目的の三つはいいですね。」

 それから渥美は全てのページをチェックしてくれました。そこで直ぐに美咲が修正していきました。

 ここは視聴覚室です。先生も同席していますからこの部屋のパソコンを立ち上げて持ってきたUSBを差し込んで美咲が手際よく直していきました。

 渥美は美咲の作業を見ていて誉めました。しかし、健太は、渥美が美咲のことで疑問を持っているように見えました。そこで彼はそれを察して説明をしました。

「藤井さんは僕の幼馴染で歴史研究会のメンバーですが、僕が頼んで手伝ってもらっているのです」それを聞いて渥美は疑問が解けました。

 それからしばらくして美咲が印刷しました。それを渥美が確認しました。

 そして、もう一部印刷しました。

「藤井さんそのUSBを貸して下さい」渥美はと美咲に言いました。それを受け取ると部屋から出ていきました。

「これで要望書を作成しました。そして、それを先生に渡しました。次は生徒会に説明する番です。それではどうするかを皆で考えましょう」

「はいこれから高橋さんが生徒会に行って会長に説明して、この要望書を渡したらどうですか」

「その要望書が一部しかないので生徒会室でコピーしてから渡して下さい」

「はい分かりました」

「生徒会長にeスポクラブを設立したいからどうしたらよいか相談して下さい」

「そうですね、まだ生徒会には何も言ってないですからね。でも文化祭のプヨプヨeスポーツ大会の主催者ですから分かっていると思います」

「もう先生にそれを渡しましたから怖いモノはありません」

「皆はどう思いますか」

「部長がまずは生徒会に挨拶に行き、これからどうしたらよいかアドバイスをもらってきて下さい」太田が言いました。

「そうしますか」

「ではそうしましょう」

 それから高橋は皆の後押しを受けて一人で生徒会室に出かけました。そして生徒会長に相談がるからと部屋にいた女性徒に伝えました。

 それからしばらくして生徒会長が部屋に入ってきました。

「私が生徒会長の舟橋ですが何でしょうか」

「僕は二年生の高橋と言います」

「あなたは文化祭で受験戦争ガンバロウ三唱をしたeスポーツクラブ準備委員会の方ですね。それと以前バレー部のイジメをしている写真を持ち込んだ方ですね」

「はい、そうです。今日はその新しいクラブを作りたいので相談に来ました」

「そうですかeスポーツクラブの設立の件ですか。私は生徒会長として当校は進学校ですから設立には反対です。でも結論は執行部会で協議して決めます」

「それで今日はその資料を持ってきたのですが一部しかないのでコピーしてもらえませんか。これです」

「分かりました。すいません、これを一部コピーして下さい」舟橋生徒会長は近くにいた人に指示しました。

そして、しばらくしてコピーが渡されました。

「これがeスポーツクラブの設立の要望書です。まず見て下さい。同じものを渥美先生に出してあります」

「そうですか。実は僕はそのeスポーツと言うモノをよく知りません。そこでそれを勉強しなければ何とも言えません」

「そうですね、簡単に言うとテレビゲームの進化版です。団体で対戦するゲームです。でも全国高校大会があります。

今年から国体の正式種目にもなりました。すでに全国で多くの高校でクラブ活動をしています」

「そうなのですか。では受け取りますのでしばらく時間を下さい。執行部で協議しますので後日連絡します」

「はい、後日でいいからクラブを作る為にどうしたら良いのかアドバイスをお願いします」それだけ言って高橋は生徒会室を出ました。

そして高橋は三十分ほどで視聴覚室に戻ってきました。そこには美咲を始め他のメンバーも待っていました。

「生徒会室に行って会長に会って要望書をコピーして渡しました。会長はeスポーツクラブの設立には反対と言っていました。

 でもこの件は執行部で協議するそうです。

そのために簡単に説明をしました。そこで後日改めて連絡が来ます」

「そうですか、これでクラブ設立に向けて大きく前進できましたね」

「そうだね、桃山君には感謝します。ありがとう。そして藤田さんまで手伝わせてありがとうございました。

これで要望書を先生と生徒会に出しましたから、後は相手から何か言ってくるのを待つのが仕事になりました」

「よかったですね」

 生徒会に要望書を出して数日後、高橋は舟橋生徒会長から声が掛りました。そこで高橋は生徒会室に出かけました。そこに舟橋は一人で待っていました。

「高橋君から出されたeスポーツクラブ設立の要望書を読みました。それで執行部でまずワイガヤをしました。そこでは賛成と反対の両方の意見がありました」

「そうですか、やはり進学校の壁は高いのですね」

「そうです。でも先日の文化祭のプヨプヨ大会は好評でした」

「ありがとうございます。当校は進学校ですが、全員が大学進学するわけではありません。落ちこぼれや不登校が各学年に何人もいます。その彼等にも光を当てたいのです。

 当初は単純にeスポーツをやりたいから創部を考えていました。しかし、一年生の桃山君が加わってから、学校を休んでいる不登校生が家でゲームをしていることに気が付きました。

 彼等の為にもeスポーツクラブを作り学校に戻す手段として創部を考えるようになりました。そこでプヨプヨ大会を企画したのです」

「そうですか、確かに当校には大学に進まない生徒がいます。そして、不登校生もいます。彼等は落ちこぼれとして無視されてきました。それは進学校だから仕方ないのです」

「それを仕方ないと決めつけるのか、そこに手を差し伸べるかの違いではないでしょうか」

「そうですね。上を見て進むのか、下を見て進のかの違いでしょうか」

「そうだと思います」

「私個人は反対ですが、生徒会としてはこの件は学校の判断に委ねるつもりです」

「ありがとうございます。宜しくお願いします」

 それを機に高橋は生徒会室を出ました。

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