第19話 第一回桃花台プヨプヨeスポーツ大会(1)

 十月下旬。その日健太はバイトを終えて帰路に着きました。彼は最近文化祭に向け頑張りすぎて疲れています。でも休むわけにいかないのです。

 そして帰宅して何時ものように一人で夕食を済ませました。そこに母のさくらが来ました。

「健太、最近帰りが遅いけど何かしているの」

「はい文化祭でプヨプヨeスポーツ大会をやるのです。その実行委員をしていますから帰りが遅いのです」

「プヨプヨ大会というのは、スマホでするプヨプヨのゲームなのですか」

「そうだよ。今年から国体の正式種目になりました」

「ええ、スマホのゲームが国体の正式種目ですか、世の中どうなっているのですかお母さんには分かりません」

「お母さんが世の中を知らないのです」

「そうなの、知らないのは私だけですか、後でお父さんに聞いてみよう」

「そうして下さい」

「それで健太はバイトしながらその実行委員をしているのですか」

「そうです。お母さん僕が好きでしているのです」

「そうなの、健太の顔を見ていると疲れていると思うの、無理しないでよ」

「ありがとう、お母さん」

 翌朝、季節は冬模様になり朝の冷え込みが厳しくなりました。その為に健太は風邪をひきました。でも健太は文化祭前の大事な時です。だから学校を休むわけには行きません。そこで無理して朝ごはんを食べて自転車で学校に向かいました。

 今日はいつもより寒いです。彼は自転車を走らせてみて、身体に熱があるのに気が付きました。無理して風邪をこじらせて治るまでの時間を長引かせるのがいいか、早く決断して帰って寝るのがいいか悩みました。

 彼はもう高校生です。この程度なら大丈夫という判断基準を持っています。しかし、今日の身体はその判断基準を超えています。

 すると鼻水が出てきました。それからのどの調子もおかしいのに気が付きました。健太は勇気を出して今日は休むことにしました。

 この状態で学校に行って風邪を皆にうつすことになりそうです。それは罪つくりです。そこで健太は自転車から降りて家に向かいました。

「健太さんではないですか、どうしました」

「美咲、僕は風邪を引いたようで熱があるのです。身体の具合も悪いのです。だからこのまま学校に行っても皆に風邪をうつすだけですから、今日は休みます」

「風邪を引いたのですか」

「どうもそうみたいです。今までの疲れが溜まっていましたから、今日の冷え込みで風邪を引いたようです」

「そうですか、文化祭の準備もあるけれど、でも身体が大事ですから家で休んで下さい」

「美咲ごめんね、放課後は電話に出られるようにしているから、何かあったら電話下さい」

「はい分かりました。健太さん家で寝て下さいね」

「はい、薬を飲んで寝ます」

「学校を休むことを自分で電話しますか」

「はい、家に帰ったら電話します」

「健太さん無理しないでくださいよ。文化祭の件は何とかしますから」美咲はそう言って健太を見送りました。そして彼女は学校に向かいました。

 その日の放課後、視聴覚室でプヨプヨ実行委員会のメンバーは、健太が風邪で休んだことを知りました。

 実行委員会は計画表に基づいて勧めていますが、さすがに健太がいないと寂しい感じがします。彼はバイトの日でも三十分程はここで皆に指示してからバイトに出かけていきました。

 でも彼が一日位休んでも計画表があるから大丈夫です。

「美咲、健太さんの風邪の具合はどうなのですか」

「天舞莉さん、彼と朝会ったのですが、熱があり、具合が悪いと言っていました」

「そうなの、休みが一日だけで済むかしら」

「そうね、長引いたら大変よ」

「天舞莉さんどうしましょうか」

「それを私に聞くのですか」

「美咲が一番知っているのでしょう」

「そう言われると困っちゃいます。後で彼に電話してみます」

「美咲、帰りに様子を見に行ったらどうなの」

「ええ、彼の家に行くのですか。ダメですよ、寝かせておかないといけません」

「そうなの」

「そうです、彼が変なこと考えるからいけません」

「ごちそうさま」

 でも美咲は気になりましたから、その日学校から帰って夕食後に健太に電話しました。

「健太さん大丈夫ですか」

「美咲ありがとう、まだ駄目です。熱が下がりません。だから明日医者に行ってきますから学校を休みます」

「健太さんはインフルエンザではないですよね」

「はい違うと思います。疲れから来たと思いますから。明日医者に診てもらえば分かりますよ」

「そうね」

「ところで文化祭の準備はどうなのですか」

「はい健太さんがいないからと言って準備は休んでいませんから安心して下さい。計画表を作ってあるから大丈夫です」

「そうですか、僕は明日休んで土日があるから何とか月曜日には学校に行きたいと思います」

「そうね、週末があるからそこでゆっくり休んで下さい」

「美咲ありがとう」

「おやすみなさい」

 その翌日の放課後、視聴覚室の文化祭のプヨプヨ実行委員会は今日も健太が休みと聞いてどよめきが起こっていました。

「美咲さん、健太の風邪の症状は重いのですか」高橋が美咲に聞きました。

「昨夜電話したら今日医者に行くと言っていました。それで疲れから来ていると思うからインフルエンザではないと思うと言っていました」

「そうだね、インフルエンザとなると一週間は休まなければいけないからね。大変になるよ」

「まあ医者に行った結果を今晩も電話して聞きます」

「彼がここで倒れられて困っているのは皆同じ思いをしていると思うからね」

「高橋さんがいますからそんなことを言わないでください」

「美咲さんも彼のフットワークの良さとフィールドワークの広さを知っているでしょう。僕はそれを認めていますから。彼がいないとこの組織は空回りするだけです」

「高橋さんはもっと自信を持って下さい。彼の良さは分かりますが、この組織の長は高橋さんです。もっと自信を持って下さい。彼はそれを弁えています」

「美咲さんはいい人ですね。だから健太君が夢中になっているのです」

「高橋さん、彼は私に夢中なのですか」

「そうです、君にぞっこんですよ」

「そんなことありません」

「まあいいや、ともかく彼が早く元気で戻ってくれないと皆が困ります」

「そうですね、計画表があって良かったですね。そのおかげで昨日も今日もバタバタせずに済んでいますから」

「そうだね、それも健太君のお陰です」

「ところで今日が募集期間の最後ですね。全クラスと先生の参加票は出ましたか」

「はい、すでに全クラスの参加票が出ています。次は計画表で対戦カードの組み合わせ抽選会を来週計画されています」

「対戦カードのフレームは出来ていますか」

「はい、出来ています。今日はくじ引きの抜け漏れの確認をしなければいけません」

「そうですね。分かりました。それは太田君に確認をお願いします」

「それから高橋さん、団体戦と個人戦の優勝者へのトロフィーと賞状、景品の手配はどうしましょうか」

「それがまだ決まっていません」

「そうです、予算がありませんから決まらないのです」

「渥美先生と相談しましょう」

「そのことで健太君は何か言っていましたか」

「すいません、私は聞いていません」

「美咲さん、彼に電話で聞いて下さい」

「分かりました。電話してみます」

 そこで美咲は健太に電話しました。

「健太さん、お医者さんに行きましたか」

「美咲、僕のことを心配してくれるのですか」

「そうです、それでどうでしたか」

「はい、風邪です。そして注射してもらいました。それで薬飲んでしばらく養生すれば治るそうです」

「ところで団体戦と個人戦の優勝トロフィーはどうするのですか」

「僕の考えでeスポーツクラブの準備メンバーから一人千円と渥美先生にもお願いするのと陽斗の親父に一万円寄付して貰うのです。

 そこで個人戦はトロフィーと賞状、団体戦は賞状だけ、商品券を三千円ずつ用意したらと考えています。

 そこでトロフィーと賞状六枚の見積もりをして下さい。足りなければもっと多くの人からカンパを要請します」

「そういうことですか、では高橋さんにそのことを言います」

「月曜日に対戦カードの抽選会がありましたね。どこでするのですか。

 それによってはノートパソコンが一台必要です。持っている人を探して月曜日の準備して下さい」

「ノートパソコンは日菜子が持っていましたから聞いてみます」

「対戦カードのフレームのデータは誰が持っているのですか」

「それは視聴覚室のパソコンに入っていますから大丈夫です」

「では高橋さんとお金の件を相談して下さい」

「はい分かりました」

 美咲は電話を切ってお金の件を高橋に話しました。

「一人千円出すのですね。陽斗の家だけ一万円とは何かあるのですか」

「分かりません。本人に聞きましょう」それから高橋は陽斗を呼びました。

「陽斗君、優勝者へのトロフィーや商品代に一人千円集めるのです。そして陽斗君にはお父さんから一万円の寄付をお願いするように健太君が言っていますがいいのですか」

「一万円を親父から寄付させるのですね。分かりました。恩ある健太君のことですからそうしますから安心して下さい」

「そうなのだ、二人の間に話が出来ているのですね」

「分かりました。では文化祭前にお願いします」

「ところで賞状の文章はパソコンで書くのですか、人にお願いするのですか」

「パソコンで印刷できるか美咲さん調べて下さい」

「はい、分かりました」

 それから高橋は、月曜日の件で太田を初め皆に指示をしだしました。

 美咲は健太にない二日間の高橋をみて“雨降って地固まる”ということわざを思い出しました。

 その日の夜、美咲は母の百合子に健太が風邪で学校を休んでいることを伝えました。そこで彼のいないプヨプヨeスポーツ大会実行委員のことを言いました。

 彼の存在の大きさを感じたままに母に話しました。そこで日曜日に彼の家にお見舞いに行こうと考えていることを伝えました。

「美咲、明日でなく何故日曜日なのですか」

「彼、今日医者に行ったから明日一日寝ていれば楽になると思うの。だから日曜日に行きたいの。そこで来週は学校に出られるか見てきたいの」

「そうなの、心配なのね。それでお土産を持って行くのですか」

「お母さん、何か見つくろって下さい」

「はい、では明日用意します」

 そして、日曜日になりました。美咲はケーキのお土産を持って健太の家に行きました。

「こんにちわ、健太さんにお見舞いにきました」

「美咲さん、よく来てくれました。どうしましょうか健太は部屋にいますが呼びましょうか、部屋に行きますか」

「はい、健太さんは寝ているのですか、起きているでしょうか」

「ちょっと待って下さい。部屋に行ってみましょう」母のさくらは、そう言って二人は二階へ上がっていきました。

「健太、起きていますか。美咲さんが見舞いに来ましたよ。入っていいですか」

「ええ、美咲が来たのですか。入って下さい」

「健太さん大丈夫ですか」

「健太起きられますか」

「お母さん、大丈夫だからもういいよ」

「そう、何か出しますか」

「何も要りません」

「そうですか、では美咲さんごゆっくりしてってください」さくらはそう言って部屋から出ていきました。

「健太さん、窓開けて空気入れ替えますね」そう言って美咲はカーテンを開けて部屋の空気を入れ替えました。

「美咲急にどうしたのですか」

「だって健太さんが早く元気になって欲しいから様子を見に来ました」

「そうなの、僕は薬飲んで一杯寝たから良くなってきたよ。では起きようか。

 美咲ここでちょっと待っていて、顔洗ってくるから」そう言って健太はパジャマ姿で一階に下りていきました。

 美咲は一人になり健太の部屋を見渡しました。

 この部屋には小学校五年生以来です。あの時も急に来て部屋の中が散らかっていました。美咲はゴミ箱見たいと言って健太に怒られたことを思い出しました。

 高校生になって彼はそれなりにキレイにしていました。あの時のようにシャツやズボンは散らかっていません。

 でもエッチな週刊誌が数冊置かれているのを見てしまいました。でもそのことは言わないつもりです。ここが彼の部屋なのです。部屋に入った時に男の臭いがムーンとしました。

 でも今は窓を開けて空気を入れ替えましたのでその臭いも無くなりました。でも彼女はちょっと不思議な気持ちになったのは初めての経験です。

 春に彼を美咲の部屋に入れた時に彼はこの感じを受けたのでしょうか。それは男と女の違いだけでしょうか。ふとそんな気持ちになりました。

 ベッドから彼の臭いなのか男の人の臭いがします。彼は風邪でもう何日も寝ています。だから彼の臭いがしみ込んでいるのです。

 美咲はこれが彼氏の臭いなのかと思いました。美咲の父の航平のオジンクサイ臭いと少し違います。父親の臭いよりも若さを感じました。

 健太はさっぱりした顔をして部屋に戻ってきました。

「健太さんお身体の具合はどうですか」

「だいぶ楽になりました。薬が効いているのかもしれません」

「それでは明日は学校に出てこられますか」

「そうだね、今日一日寝ていれば多分行けると思うよ」

「そうなるといいですね。これからは無理しないでください」

「ありがとう。プヨプヨeスポーツ大会の実行委員の仕事を軌道に乗せて動き出すまでです。動き出せば楽になります」

「そうなの、健太さんが一人で背負っているようで無理していたのです。バイトと両方するのは大変でしょう」

「分かっています。それを承知してやっているのです。やらずに後悔するより失敗しても頑張ってみたいのです」

「健太さんは相変わらず偉いですね」

「だって好きな人が出来たら好きですと言うのがいいですか、それとも黙って片思いのままがいいですか。美咲はどっちですか」

「ええ、そんな質問するのですか。

 私は好きですと言いたいですがその勇気があるかなあ

 でも健太さんの言う事は分かります」

「相手に好きですと言う事で一歩前に進みます。しかし、言わないと何時までもそこに留まることになります。それは分かりますね」

「はい」

「その結果を恐れて言わないのは自分が傷つくのが怖いからでしょうか。それは自分の人生の生き方そのままではないですか」

「健太さんのその思考には敵いません」

「美咲は僕のお見舞いに来たのですね。だったら立って下さい。美咲を抱きしめたいです。キスをすると風邪がうつるといけないからしません」

「ええ健太さんは何を考えているのですか」そう言って美咲は膝を上げました。

「美咲・・・・」健太は無性になって美咲を抱きしめました。

 そこで彼女の身体の柔らかさを感じました。それから美咲の胸を触りました。すると美咲の身体で嫌がりました。

 でもそこを健太は強くして美咲の胸を触り始めました。

「美咲好きだよ」

「健太さん、ダメです。健太さんは病気ですよ」そう言って美咲は身体をくねらせました。

「美咲の身体を抱きしめていると元気が戻ってくようです」

「そうなの」

「ほらここが元気になってきました」そう言って美咲の手を彼の股間に導きました。

「ええ健太さん・・」美咲は健太の股間を触っています。そして彼の股間が大きくなってきたのを感じました。

「やだ~私恥ずかしい」

「僕が美咲の胸を触ると気持ちよくって嬉しくなるのです。だから美咲が僕のオチンチンを触るのは抵抗ありません。お互いに五分五分です」

「私は恥ずかしいわ。だって初めて手で触りました」

「どうですか気持ちよかったですか」

「健太さん、風邪引いているのでしょう。何を考えているのですか」

「・・・

 美咲ありがとう」

「健太さん」美咲はそう言って股間から手を話して彼を抱きしめました。彼女は何故か嬉しくなりました。

 美咲はここに来た甲斐がありました。

 そして、彼が元気になって欲しいから来たのです。彼は彼女を抱きしめることで彼女の元気パワーを吸収したのです。

 健太は美咲を抱きしめて急に元気になりました。彼女の柔らかい身体を抱きしめて彼女の髪から柔らかい香を感じました。それで嬉しくなりました。

 それから嫌がる彼女の胸を触りました。その柔らかさに興奮しました。彼の股間が大きく興奮してきました。もうそこまで成るように身体が回復してきたのです。

男子の股間は元気のバロメーターです。健太はそれを知っていました。でも女性の美咲はそれがどういう事か分かりませんでした。

 ともかく健太が元気になってきたので美咲は嬉しくなりました。それから美咲は二日間の実行委員会の動きを説明しました。


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