その娘、液体にて

「……はっ」


目が覚めると、俺は折れた木の枝やらなんやらにまみれていた。


「う、おお。生き、てるな。身体も全然痛くねぇ」


正直普通に死んだと思った。

手をグーパーさせてみてもなんら問題なく動く。

あの高さから落ちて何ともないとかチートにも程があるな。


「で……、ここはどこ、だ…………ぁ」


俺は現在位置を知るために周りを見渡してみた、らだ。


そこにはいたのだ。

筆舌に尽くしがたい存在が。


全体的に青みがかったその芸術は、まるで人が溶け続けているかのようだった。

膝から下はドロドロとした液体のようになっており、髪もよく見れば毛ではなく液体だ。両手でサッカーボール程度の球体を抱えており、その宝石のような瞳は驚いたような、それでいて何の感情も抱いていないような無垢を俺に向けていた。


「モン……娘……!!」


そう、彼女は間違いなくモン娘だ。それもスライム娘。

感動で自然と涙が零れてきた。


「う、うおぉ、うおおおお」


衝動を抑えられず、スライム娘の方に近寄ってみる。

彼女はゆっくりとした動きではあるものの全身を反転させ、俺から離れようとしていた。


やべぇ、怖がられたか?


「ちょ、ちょっと待って!」


咄嗟に腕を掴む。

が、それは叶わず彼女の腕はまるで豆腐でも握ったかのように千切れ、手に持っていた球体が地面に落ちた。


「おわっ!?」


千切れた腕はべちゃり、と音を立てて地面を濡らした。

彼女は特に気にするようでもなく落ちた球体を再び生えてきた、というよりは形取った腕で拾った。


……不覚だ。

つい掴んでしまったが相手はスライム娘だ。そりゃあ水は掴めない。

ダメージはないようだけど、今後は気を付けねば。

……ていうかあの球体。見覚えがある。すげー見覚えがある。具体的に言うなら毎日見てたくらい見覚えがある。かなり崩れてるけど。


彼女が抱えていた球体は見間違うはずもない。俺の顔、つまりは俺の頭だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

全てのモン娘を嫁にしたかったので悪魔と契約したら転生を繰り返して魔王になることになった 角寿司鎖門 @tunozusi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ