第3話 ご立腹な勇者様 改変中

 お知らせ

内容を一部改変させていただきます。改変部分は勇者召喚からの掛け合いです。特に本編には関係ありません。後半には変更前のを残しています


只今変更中




 現れた勇者たち。彼らに向けて王は救済を懇願する・・・が、事態はそんなに甘くはなかった。


「・・・? 5人目はいないのか?」


 賢者の一人が思わず呟く。勇者の複数召喚は今回が初めてだ。それまでは一人しか選定されてこなかったし、それで召喚されない勇者など出るはずもなかった。故に5人目の欠番というのは勇者召喚の儀を取り仕切りそれについて研究してきた彼ら賢者にとっては非常に重要な問題であり、声を漏らした彼はきちんとした準備を執り行なえば造物主に限界はなく勇者はその分選定されるだろうという造物主万能主義の信徒だったのだ。故に少々の驚嘆と落胆を浮かべる。


「え……」


王はどうするんだ、どういうことだと言わんばかりに周りを見るが臣下は眼前の自体に驚き、さも王の声など聞こえないふりをする。


そこにいるあらゆるものが沈黙した。自分は悪くない、自分のせいではない。これは私がなにかミスをしたわけではなく勇者自身に問題があるのだ。そう誰もが信じたかった。しかし、同時に造物主がわざわざ直々に問題のある人物を選定するだろうかという疑念も拭えなかった。なにせ召喚したのは彼ら自身だ。いくら見に覚えがなくとも自身の過ちを疑うに違いない。歴代の勇者の中でミルジゲアナの救済を拒んだものはいるという話は聞いたこともなかった。ここに4人もいるにも関わらずそのどれもが拒否するとなれば否が応でも召喚した方は冷や汗をかく事になる。


しかし、実際は杞憂であった。出来損ないは神官や賢者ではなくむしろ勇者である。


そう、性格なのだ。


「やだやだやだ、ありえんだろ。どういう詐欺だよ、びっくりだわ。」


「え?あの……」


「マジかお前ら……誘拐、強制連行、拉致監禁した挙げ句一方的に事情を話してわかりましたやりましょうなんて本気で言うと思ったのか?魔王の前にお前らの頭の中をどうにかしろ」


「しかし、勇者様。歴代の方々は皆喜んで引き受けてくれたのですぞ……」


「おいおい、マジかよ。冗談きつい。」


……


王は思った。


どうすんだこの状況!!やべえ、国が滅ぶ!!やべえ!!


あ、そうじゃ!まだ他にも勇者が!


「スティーブン……中佐?」


男は聞き覚えのある声を耳にしてすぐに振り返る。


「サンドラ少佐!?なぜここにいる!?」

「こちらのセリフです!もしかして、貴方があの方の言っていた仲間の一人!?」

「Oh… f*ucking my god(意訳:クソみてえな神だな)」


男は頭を抱える。


「最悪だ、よりにもよってお前とは……」


その言葉にサンドラは青筋を立てた。


「勇者に一番ふさわしくないあなたが言いますか。」


一時の静寂が訪れる。そして――


「お前だってLADYのくせに上品さのかけらもない言葉遣いだろ!いい加減上官に対する口の聞き方を覚えたらどうだ!?」

「形式上だけでしょう!?私はあなたを上官として迎えた覚えはありません!そもそも、言葉遣いどころか公の場で節操もままならないあなたが言えたことですか!?歩く煙突の癖に!」

「お前にこのタバコの芳しい香りは到底理解できないだろうな。」

「ヤニだらけの鼻で一体何を嗅ぐというのですか!」


「xa-xa!一体誰かと思ったが、賑やかそうです何よりだ。」


突然入る横やりに、二人は鬼の形相で振り向く。


「「げっ」」


二人は心のなかで呟いた。


鍛えられた筋肉、たぐいまれな巨体。顔は明らかに赤く、ひげを生やし、ビール(?)のひどいにおいを口から吐き出すその様、とくに独特の軍服に二人は心当たりがある。


ソ連軍人……


「Oh my god…」


スティーブンは思わず呟いた。


「おいおい、ひどいだろ、あってそうそう。」

「まず鏡を見てから言うんだな。」

「不本意ですが少なくとも中佐の反応に見合うだけの出で立ちはしていますわ。」


「まあしょうがないか……でも、いいのか?後ろに俺よりもっと上玉がいるぜ?」


そう言って酒乱の男は後ろを指差す。








「そうかっかするなよ、アメリカ人。酒を交わせば互いの理解も深まる、そうだろ?」

「燃料用のガソリン飲むようなやつを理解できるか!?」

「イギリスかぶれではありません。生粋のイギリス人です。我々のような品格あふれる紳士になりたいのなら、まずマーマイトを食しなさい。」

「品格以前にてめえは味覚を養え!マーマイトなんて産廃だれが食うか!?」

「燃料用でもアルコールはアルコールだろう?」

「うるせえ!!てめえら舌も肝臓もぶっ壊れてんのか!?おい、だれか医者呼んで来い!医者!」


※マーマイトとは、酒樽の下に沈殿した酵母、つまり発酵させた麦のカスである。イギリスでは人気商品であり、家庭ではよくジャムとして使われることが多いが、イギリス人以外にはその味は到底理解できない。そのため、しばしばイギリス人の舌はバグっているといわれる(これは個人の意見であり、また、味を保証するものではありません)


「ん?というか、お前らはいきなり連れてこられたのか?」

「え、ええ。」

「酒はなかったがな。」

「お茶菓子あります?」


 ほかの三人(実質まともな二人)の話を聞いて一つの疑問が浮かぶ。


「ん?おかしいぞ・・・俺だけか?あいつとチェスしたの。」

「チェス?」

「酒?」

「紅茶?」

「・・・」


 あの野郎、俺を試しやがった。


 見る見るうちにスティーブンから殺気が出る。


「殺す、殺す。絶対に殺す。ひき肉にする。鍋で茹でてやる。」



「・・・・・・」


「・・・いったん別室にご案内したほうがよろしいですか、王よ。」


 エルメロイは助け舟を出したものの、彼自身も顔が引きつっていた。世界が危機に瀕した中、目の前で醜態をさらす唯一の希望を見たら、誰だってそうなるに違いない。


「・・・うん。」


 王は無気力に返事した。



※変更前


 現れた勇者たち。彼らに向けて王は救済を懇願する・・・が、事態はそんなに甘くはなかった。


「・・・?どういうことだ?五人目はどうした。」

「だれがそんな一方的な頼みを聞くんだ?」

「え?だって、勇者ってそういう・・・」

「勇者には拒否権はないのか?」

「いや・・・でも・・・」

「ていうか返してくんない?ねえ、早くおうちに帰らせろ。帰して、かーえーしーて!!」

「いや、そういわれても・・・」

「人にものを頼むのに誘拐拉致監禁するとか魔王も真っ青だよ。むしろ魔王はあんただよ。」


 先程、異世界に強制連行されご立腹なのであろう。男は先陣切って文句を言う。


「というかこれ、もはや王族じゃなくて悪徳集団の手口ですよね?大丈夫です?国民息してます?」


 勇者として召喚された女性も男に続いて王に詰め寄る。


「いや、でも・・・これが伝統じゃし・・・」

「これが伝統って・・・酔ってますか?吸ってますよね?キマってますね?」




「……ん???」


 妙に聞き覚えのあるヤジ。男はとっさにその女の方を振り向いた。


「は?おいサンドラ。サンドラ少佐、何でお前がここにいる!?」

「!? スティーブン中佐!?何でこんなところに!」

「それはこっちのセリフだ!」

「こっちだって知らないですよ!いきなり連れてこられて、変な人に「今から世界救ってほしい」なんて言われたんですから!」

「っ!あのくそ野郎!よりにもよってサンドラまで連れてきやがった!」


 二人が言い合っていると、もう一人の男が口を挟む。


「まったくだ、いきなり連れてこられて助けてくださいだ?それより俺の酒はどうした!俺飲んでたんだぞ!せっかく休日だったのに!せっかく燃料タンクからくすねたのに!」

「ん?燃料タンク?」


 男が戸惑う。




 鍛えられた筋肉、たぐいまれな巨体。顔は明らかに赤く、ひげを生やし、ビール(?)のひどいにおいを口から吐き出し男は狂乱する。


 すると、四人目の男が口を出してきた。


「ほんとうにデリカシーのない人たちですね。あ、それより紅茶あります?紅茶。アフターヌーンティーを楽しもうと思っていたのですが。」





「勇者の選定失敗しただろ・・・」


 賢者の一人が思わず口走った。




「ていうか、何でこんな奴らと一緒なんだ!」

「それはこっちのセリフです!どうして寄りにもよってスティーブン中佐何ですか!もっとましな人いたでしょ!」

「そうじゃなくて!っていうか、お前、よりにもよってだと?」


 スティーブンとサンドラはにらみ合う。


「そうじゃなくて!何でイギリスかぶれと酔いつぶれたソ連脳が一緒なんだよ!世界救いてえならもうちょっと考えて来いよ!」


「こっちのセリフじゃ。」


 王は少し涙目になる。


「そうかっかするなよ、アメリカ人。酒を交わせば互いの理解も深まる、そうだろ?」

「燃料用のガソリン飲むようなやつを理解できるか!?」

「イギリスかぶれではありません。生粋のイギリス人です。我々のような品格あふれる紳士になりたいのなら、まずマーマイトを食しなさい。」

「品格以前にてめえは味覚を養え!マーマイトなんて産廃だれが食うか!?」

「燃料用でもアルコールはアルコールだろう?」

「うるせえ!!てめえら舌も肝臓もぶっ壊れてんのか!?おい、だれか医者呼んで来い!医者!」


※マーマイトとは、酒樽の下に沈殿した酵母、つまり発酵させた麦のカスである。イギリスでは人気商品であり、家庭ではよくジャムとして使われることが多いが、イギリス人以外にはその味は到底理解できない。そのため、しばしばイギリス人の舌はバグっているといわれる(これは個人の意見であり、また、味を保証するものではありません)


「ん?というか、お前らはいきなり連れてこられたのか?」

「え、ええ。」

「酒はなかったがな。」

「お茶菓子あります?」


 ほかの三人(実質まともな二人)の話を聞いて一つの疑問が浮かぶ。


「ん?おかしいぞ・・・俺だけか?あいつとチェスしたの。」

「チェス?」

「酒?」

「紅茶?」

「・・・」


 あの野郎、俺を試しやがった。


 見る見るうちにスティーブンから殺気が出る。


「殺す、殺す。絶対に殺す。ひき肉にする。鍋で茹でてやる。」



「・・・・・・」


「・・・いったん別室にご案内したほうがよろしいですか、王よ。」


 エルメロイは助け舟を出したものの、彼自身も顔が引きつっていた。世界が危機に瀕した中、目の前で醜態をさらす唯一の希望を見たら、誰だってそうなるに違いない。


「・・・うん。」


 王は無気力に返事した。

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