第16話 全員揃った!

「『紫色』の海斗は、本の虫。学校では図書館にばかりいて、神社にいる時は、木の側にばかりいる。樹木医になって、植物の気持ちを知りたいと言っていた。彼は」








 私は、『赤色』の海斗にこう言った。








「あなたと同じ。私が7年前の事を謝ると、すごく怒った。自分を傷つけられるのは、自分だけだと、言い放った」














「高潔で思慮深く、落ち着いていてカッコいい。彼は真実を探し出すまで、自分を決して諦めたりしない」








  私は続けた。














「心の奥から、尊敬すべき人」
















 ゴゴゴゴゴゴ…










 ゴゴゴゴゴゴ…









 壁が唸り声を上げ、












 一面に広がる、本棚が現れた。















 そこには樹木の本だけではなく、色んなジャンルの、誰もが読み返したくなって、いつまでも楽しめるような本が、たくさん詰まっていた。















「惚れ直した?」













 『紫色』の海斗が本棚の横で、苦笑いしながらこう言った。


















 『赤色』の海斗は、目を見張った。















「すごい」

















 私が出会った海斗は、あと2人。

















「『青色』の海斗は、真っ直ぐな人。励ましてくれて、問いかけてくれて、この白いワンピースを私に、買ってくれた」











 彼には、ありがとうの気持ちが、いくつもいくつも、込み上げてくる。

















「痛いくらいに眩しく輝いていて、その想いには全力で応えないと許してくれない、自分にも人にも厳しい人」


















「感謝しかない。私の背中を、大きな力で、押してくれた」





















 部屋が、いきなり上下に揺れた。







 皆が飛び上がり、ついつい笑い声を上げてしまう。











 突然、




 大きな青い衣装箪笥が、本棚の横に現れた。












 そこには全員の海斗に似合いそうな、色とりどりの衣類が、ぎっしりと詰まっていた。















「ひどいな。感謝だけ?」










 『青色』の海斗は、窮屈な衣装箪笥の中から突然、姿を現した。












 その滑稽な姿に皆が、楽しそうに笑い出す。
























「マスター」









 私は、ベッドをじっと見つめた。














「いるんでしょう?最初から。『灰色』の海斗。みんなのマスター」














 私は、気づいていた。








 『赤色』の海斗は、びっくりして、私に聞き返した。













「最初から、って…ええっ?」
















 どこから?










 皆が、息を飲む。












 ベッドの上に『灰色』の海斗がゆっくりと、姿を現した。









 彼だけは、白い装束を身に纏っていた。











「俺だけ、紹介無し?」








 彼は明らかに、がっかりし、言い訳を始めた。








「まさか、マナと『赤色』の濃厚なラブシーンが展開されるとは思わないし、自分では出られないから、仕方無いよね?」









 私は笑った。










「これで、私が出会った海斗は全員揃った」




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