第15話 紹介します

 数え切れないキスの途中、



 『赤色』の海斗は潤んだ目で、

 私にこう聞いてきた。







「他の『俺』にも、こんな事したの?」







 目を伏せて、



 前髪を搔きあげながら、



 拗ねたように。










 嫉妬してくれているのだろうか。









 …ちょっと可愛い。











「自分からしたのは、『緑色』の海斗」






「したのか…」







 私は、思い出しながら話した。








「いつも彼は眠ってばかり。『眠った後は、極上の優しさが、心と体に訪れる』と言っては、怠けてばかり。サボってばかり。でも、憎めない。キスをねだられた時に、どうしようもなく彼に触れたくなったのは」













「優しさを分けあえる気がしたから」












 すると。












 がらんとした部屋の真ん中に、緑色のフカフカした、ソファーくらいの大きさのクッションが、急に現れた。











「!!」

  





「何だ?」






『赤色』の海斗と私がびっくりしていると、そのクッションの上に、ある人物が現れた。










「呼んだ?」















『緑色』の海斗だった。















「マナ、ずるいよ。俺には一度しかキスしてくれなかったのに」














 びっくりした。






「どうして、この部屋に?」






 思わず私がこう聞くと、『緑色』の彼は、ふかふかのクッションを抱きしめながら、ため息をついた。






「ひどいな。呼んだじゃない」







 『赤色』の海斗はしばらく呆然としていたが、急に思いついたように聞いてきた。






「他の『俺』の事も、思い出して、教えてくれないか?マナ」





 私は頷いた。












「『黄色』の海斗は、フワフワしてて風に吹かれてるような人」














「楽しい事が大好きで、衝動的。人の心の動きをいつも気にして、自分はバランス崩しそうになりながら相手を気遣って」


















「寄り添ってくれる。彼は元気と勇気をたくさんくれる」

















 ぽん。









 可愛らしい音と共に、何も無かった壁には大きな窓が現れた。




 そこには綺麗な、黄色のカーテンが、そよ風にゆらゆらと揺れていた。












「わあ…っ」








 部屋が、一気に明るくなった。









 窓枠に片肘をついて、『黄色』の海斗は赤くなりながら、こう言った。










「マナ、何その紹介の仕方。超恥ずかしい…」









 嬉しい。















 3人の海斗が、この部屋に集まった。













 私は、『赤色』の海斗と目を見合わせ、微笑んだ。









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