第13話 『赤色』の海斗
「会いたかった」
私は目の前に立つ彼に、こう言った。
そこには、『赤色』の海斗がいた。
がらんとした、広い部屋。
黒いベッドに、グレーのシーツ。
小さな黒いテーブルに、小さな黒い椅子が1つずつ。
それだけ。
部屋の中は、たったそれだけ。
部屋の真ん中に立っている彼は、私を見つめて言葉を失っているようだった。
信じられない、といった表情。
その瞳だけは、赤く燃えている。
それは、静かな怒りの炎。
「『赤色』の海斗。あなたに、謝りたい」
私は、彼の目から、決して、自分の目を逸らさないと決めた。
「あなたを、助けたい」
『赤色』の海斗は、乾いた声で笑った。
「笑わせんな」
彼はこちらに歩み寄り、私の顎を持ち上げた。
「お前が俺を助ける?それは無理だ」
至近距離。
苦しくても私は、彼から絶対に目を逸らさない。
「私を、憎んでいるから?」
「どうしてそう思う?」
「私があなたの心を、バラバラにしたから」
涙が溢れ出てしまう。
「だから、謝りたくて。ずっと…」
ダメだ、目を逸らさないと決めたのだから。
「ずっと探していたんだ。あなたを」
『赤色』の海斗は、静かに笑った。
「ふざけんな」
彼は私の両腕を掴み、そのまま力を込め、
私の体を強引に、ベッドに押し倒した。
「お前が、俺を傷つけられるとでも、思ってるのか?」
首元に、キスが落ちる。
少し強引に、
何度も、何度も。
「思い上がるな」
白いワンピースの胸元のボタンが、1つずつ外されていく。
露わになった胸にもキスが、落ちてくる。
私は、怖くはなかった。
だけど、これだけは伝えたい。
「いいよ、抱いても」
私は、『赤色』の海斗の髪を、そっと撫でた。
「でも、何度私を抱いても、あなたの乾きは治らない」
また欲しくなるだけ。
ただ、それだけ。
悲しくなるだけ。
しばらく、『赤色』の海斗の動きが止まった。
「海斗…?」
彼は、涙を流していた。
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