会いたかった。

第12話 時を刈る男

「申し訳ございませんでした。ヒジリ様」



 神社の本殿の一室。




 私は兄の目の前で、土下座をしていた。




 私が禁忌を犯したのは、一度や二度では無いからである。






 まずは7年前。



 神輿の炎を身に宿し、人間である海斗の心を燃やした事。





 その時、現れてはいけない時に、人間の前に姿を現した事。








 そして現在。


 

 霊獣『鳳凰』の立場でありながら、ヒジリ神の許しを得ないまま、何度も自分の都合で人間に変身をした事。











 最もやってはいけない事は。

  


 人間の男の子に恋をして、何度も彼の心の中に潜り込み、接触を試みた事。










 …数え切れない、自分の罪。














 兄のそうは、深いため息をついた。



「マナ、もう土下座はいい」



 私は顔を上げた。



「お前がしている事を知っていながら、やりたいようにさせていたのは、俺だ。少々手助けもしながらな」



 高校教師になってみたり、神社の宮司になってみたり。




「時を刈る話を、『紫』の海斗にしたのは、…どうして?」






「…どうしてかな。自分でも分からない。話しておきたくなっただけだ」





 兄は私を手招きして近づき、こちらの目を見つめながらこう言った。





「海斗を1つにしたらもう、不死鳥には二度と戻れないぞ」





「はい」







「後悔しないのか」







「はい」












「…………ならいい」

















 兄は目を閉じ、小さく呪文を呟いた。


















 光の渦に、飲み込まれる。















 導かれる。















 色が散らばって、1つになって、また散らばる。













 廻る。













 まるで一定の、法則があるかのように。












 すごいスピードで動くようにものもあるが、ほとんど動かないものもある。















 ここは無数に存在する、時の輪の中。













 兄が作り出した世界。


















 私は1つのドアの前に立った。















「ここは彼の部屋だ。俺は以前、この場所まで送った事がある」


 兄の爽は、ドアを見つめながら言った。















 私は息を飲んだ。















「しかしアイツ、相当な方向音痴だな」




 兄は、思い出し笑いをした。




















「会っておいで」









「はい」























 私は、そのドアを開けた。









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