第12話 字の読めないウチは青春を懸ける 後編

全国大会前夜、遠征先の旅館の一部屋に部員が集まり、決意表明をする事に。


1人1人コメントを終えていく。そしていよいよウチの番。


ある程度言うことは考えてきた。頭の中でシミュレーションもした。後は普通に言うだけ。


だが、その練習してきた言葉は、思うように出てこなかった。周りも見えなくなってきた。


ウチは泣いていた。無惨な負け方をしたらどうしようという不安、皆ともっと団体をしたいという気持ち、他にも様々な気持ちが溢れ出し、考えてきたコメントは、何も言えなかった。


唯一言えたのは、「皆のことが大好きだ」というセリフだけだった。それに続けて色々言いたかったのに、涙を抑えようと堪えるのに必死で、そっから先は何も続かなかった。


その日はあっという間に寝落ちした。完全な泣き疲れである。












いよいよ全国大会本番。


負ければ終わりのトーナメント戦。

3回勝てばベスト8に進出出来る。




ウチらはまず不戦勝を引いた。これはデカい。


続く2回戦はランク的には格下の高校。危なげなく、5ー0で勝利した。


いよいよベスト8を懸けた対戦。相手は全国的にもかるたが有名な県だ。ランクはウチらより上だった。


だが、怖気づいている場合では無い。ウチらは円陣を組み、気合いを入れた。





試合は中々にキツかった。


だが、早い段階で互いに1人ずつ抜け、1勝1敗に。


ウチの対戦相手はランク的には1つ下だが、めちゃくちゃ強かった。それでもどうにかウチは根性を見せ、2勝目をもぎ取った。


残りは2人。後1勝。場にはもう数枚。


すると、残っていた後輩がリーチを決めた。

後1枚…祈るように見つめる。そしてーーー





「3勝!!!!!」



後輩が勝った。ウチらは創部初のベスト8入りが決まった。



喜びたい所だが、まだ主将が残っている。チームの勝敗が決まっても、全試合終わるまで静かにしないといけないのが、競技かるたの鉄の掟である。


なのでウチらは主将の勇姿を静かに見守った。


そして主将は運命戦までもつれ込むものの、見事勝利した。


そして叫んだ。










「3勝!!!!!!!」















……主将はあまりにも試合に集中しすぎて、先ほど後輩が、隣で3勝目を上げたことに全く気付いていなかった。


空気が止まるのが正解なのか、突っ込むのが正解なのか、



とりあえずウチらはその主将の声を聞き、











全員見事にズッコケた。








ウチらのそんな様子を見て未だにキョトンしていた主将の顔は今後とも忘れないだろう。













その後のベスト8では超強豪と当たり、1ー4で敗北したが、ウチらは皆笑顔だった。


ここまでやってきた成果に皆満足していた。





文字が読めないながらもその世界に魅了され、いつしか極めたいと思い、悔しさから高みを求め、全てを懸けると誓ったウチの青春は、こうして幕を閉じた。










次からは、高校卒業から就職までの、障害による弊害、それに寄る苦労話に重きを置いたストーリーとなっていきます。


読みづらくならないよう頑張ります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る